DC one dish獣医師/ペット栄養管理士の岩切裕布です。犬の食事を選ぶ際、気になるのが「犬は肉食動物なのか?」という点だと思います。オオカミを祖先とする犬は、人と生活一緒に考えてみましょう。を共にすることで食性を変化させました。しかし、犬と人では体の構造や必要な栄養素が異なります。さらに、犬はオオカミでもありません。犬にとってバランスのよい食事とはどんなものなのでしょうか。 前回の記事:【獣医師監修】ペットフードを選ぶ際に知っておきたい!パッケージの見るときのポイント|vol.3
もくじ
犬の祖先はタイリクオオカミといわれていますが、犬とオオカミは全く同じではありません。長年、人と共生することで、現在の犬へと進化していきました。
体の構造や特徴的には、犬は肉を切り裂くための列肉歯(れつにくし)と呼ばれる歯を持つなど、オオカミから受け継いでいる部分もあります。一方で、アミラーゼというデンプンを消化するための酵素は犬のほうがオオカミよりも多いことが分かっています。
「犬の祖先はオオカミだから、犬にとってはオオカミに近い食事がよい」という話を目にしたことがあるかもしれませんが、この理論で話を進めると「人の祖先は猿だから、人は猿に近い食事がよい」ということになります。
人に置き換えてみると違和感を覚えるように、犬とオオカミは同じではないのです。
犬は人との暮らしの中で肉食から雑食へ変化しました。そのため、人と同様にタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取する必要があります。
しかし、雑食へと変化した犬にもオオカミと似た部分が残っています。
オオカミはもともと群れで狩りをし、獲物を捕らえ食料を確保してきました。狩りで得た食料が群れ全体の食事量を満たすほどの大物であればいいのですが、そうとは限りません。
狩りが成功し、1回食事にありつけても、次の食事がいつになるのかは分からないということもあります。このような理由からオオカミには、ありつけた食事はできる限り食べる習性があります。
犬にもこの習性が残り、目の前に用意された食事を際限なく食べてしまう子もいます。
食べるだけ食べさせてしまうと肥満になる可能性が高いため、1日に必要な食事量を飼い主さんが把握し、体重が適切に維持できる食事量を心がけましょう。
近年、グレイン(穀物)フリーをうたう製品が多く流通し、中には肉類のみで構成されるフードもあります。しかし、雑食へと進化した犬にとっては、炭水化物や必要なミネラル、ビタミンが程よく配合されているもののほうが適しているといえます。
ドックフードの食事量の調整目安になるのが「フード100g当たりのカロリー」です。「○○kcal/100g」という表記がされているものが多く、当然のことながらカロリーが低ければ低いほど、量を多くあげることができます。
また、「この食材が含まれているから、このフードはヘルシーだ」「この食材は高カロリーだから、このフードは高カロリーだ」というわけではなく、重要なのはフード全体のカロリーです。
例えばヘルシーだとよく言われる鹿肉を使ったフードであっても、フード全体で見ると高カロリーな製品も販売されています。フードの種類によってカロリーに大きな差があり、中には100g当たりのカロリーが非常に高いフードもあるので注意が必要です。
フードを切り替える場合は、必ず以前と同じカロリーになるように調整しましょう。
以前あげていたフードの量が1日50gだったから、新しいフードに切り替えた後も同じく50gでいい、というわけではないことを覚えておきましょう。
犬の肥満を防ぐ上でカロリーの確認は非常に重要です。カロリー以外にも、そのフードの用途、内容量、与え方、成分などの記載もチェックしましょう。そのフードがどのような用途で作られているか、うちの子に合っているかの確認も是非してあげてください。
先ほど案内したように、フードには用途があります。日々の主食として与えることを推奨されているのは、総合栄養食やAAFCO(アフコ)という基準に則ったフードです。
総合栄養食は、成長期や成犬期など成長段階に合わせたフードと新鮮な水を与えることで、健康が維持できるよう栄養設計されています。
総合栄養食やAAFCOの基準に沿ったフードを主食とし、それに対する食材やトッピング、おやつは1日の摂取カロリーの10%程度が推奨されます。乾燥ジャーキーなどの肉類は、加熱調理した肉類よりも水分量が少なく、グラム当たりのカロリーも高くなるため、あげすぎないように気を付けてあげてください。
総合栄養食やAAFCOに沿っていない食事を長期的に主食としてあげてしまうと、犬が栄養不足となる可能性があります。
「栄養設計されていない手作り食」「“総合栄養食・AAFCO”などの記載が無いフード」を与える際は、量やカロリーに注意しましょう。
犬はオオカミではなく、人と暮らす家族です。一日でも長く健康に過ごしてもらうために、家族に合った食事を選択したいものです。
犬の食性がはっきりしたところで!次回はペットフードの種類について解説していきたいと思います。お楽しみに!