猫や犬は、パンを食べても大丈夫なのでしょうか。愛猫や愛犬にパンを与えるときに注意すべき点、飼い主さんの知らない間に犬猫がパンを食べてしまったとき慌てないために必要な知識、動物病院へ連れて行く必要があるケースについて紹介します。
もくじ
パンの原材料の基本は、小麦粉、パン酵母、塩、水であり、これらのみで構成されているパンであれば、少量与えて問題を起こすことはまずありません。パンが好きな犬や猫に対しては、原材料のはっきりしているパンの中に薬を埋め込んで、投薬ツールとして利用することもあります。
また、主食として積極的にパンを与えようと考える場合は、そのパンの原材料と分量を把握し、食事全体の栄養バランスを考えなければいけません。非常に複雑な計算が必要になるため、パンはあくまでもおやつとして少量にとどめておきましょう。
消化器の機能が未熟な子猫・子犬、衰えてきている老猫・老犬の場合は、一度にパンを大量に与えると消化器症状を示す場合があるので、まずは少量から与えるようにしましょう。
万が一、パンを大量に食べてしまった場合は、動物病院を受診しましょう。
パンの中には、さまざまな原材料が含まれていることがあります。次のような原材料が含まれていると、猫や犬に悪影響を及ぼすため避けるようにしましょう。
チョコレートに含まれるテオブロミンという成分が、下痢などの消化器症状や興奮、痙攣などの神経症状、不整脈を引き起こすことがあります。
タマネギに含まれる有機チオ硫酸化合物が、赤血球の膜を酸化させ、血色素尿・溶血性貧血を引き起こします。
中毒物質はわかっていませんが、急性腎不全を引き起こすことが知られています。
マカダミアナッツを食べると、嘔吐、痙攣、発熱、四肢の麻痺がおこることが知られています。また、ナッツ類は消化が難しいため、そのまま丸のみしてしまうと、消化管内で閉塞を起こしてしまうこともあります。
牛乳に含まれる乳糖を分解することが苦手なため、大量に食べると下痢を引き起こすことがあります。
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パンを与えても問題ないからといって大量に食べてしまうと、消化不良による嘔吐・下痢や胃拡張を引き起こすこともあります。食塩が大量に使われているパンの場合は、高ナトリウム血症、バターなどが多いパンの場合は、犬では膵炎(すいえん)を引き起こすことがあります。
ご自宅でパンを作られている方は、生のパン生地についても注意が必要です。加熱前の生地を盗み食いすると、体温で発酵が始まってアルコールが作られ、エタノール中毒になったり、胃の中でパンが膨張して胃拡張を起こしたりするケースがあります。
また、加熱されていない生地は消化も悪いため、でき上がったパンを与えるのとは全く別であるという認識が必要です。
中毒を引き起こす成分が入っていたり、消化が困難な食べ物でなかったりする限り、猫や犬におやつとして与えることができます。
しかし、カロリーをよく考えて与えなければ、肥満を引き起こしたり、パンでお腹がいっぱいになってしまい、主食である総合栄養食のフードが食べられなくなることによって全体のバランスを乱したりしてしまいます。
では、犬や猫にはどれくらいの量を与えれば良いのでしょうか。目安をご紹介しましょう。
一般的に1日にあたえるおやつやトッピングの量(間食)は、1日に必要なカロリーの10%程度にとどめるべきと言われています。体重1kgの犬が1日に必要なカロリーは約100kcal程度ですので、その10%だと10kcalとなります。
体重1kgの犬に食パンをおやつとして与える場合は、8枚切りの食パン1枚の1/10程度。猫の場合は、1日に必要なカロリーは約84kcalのため、1枚の1/16程度です。
(8枚切りの食パン1枚を約50g。124kcalとして算出。参考:文部科学省の食品成分データベース)
ここで、注意していただきたいのは、1日に必要なカロリーと体重は比例していないということです。下記の計算は目安のため、実際には現在摂取している食事のカロリーに基づいて、おやつの量を決定しましょう。
体重3kgの猫・犬の標準的な1日の摂取カロリー
・猫 約190kcal
・犬 約220kcal
おやつとして与える食パンの量は、猫なら8枚切りパン1枚の1/6程度、犬なら1/5程度。
体重5kgの猫・犬準的な1日の摂取カロリー
・猫 約280kcal
・犬 約330kcal
おやつとして与える食パンの量は、猫は8枚切りパン1枚の1/5程度、犬は1/4程度。
体重8kgの猫・犬の標準的な1日の摂取カロリー
・猫 約400kcal
・犬 約460kcal
おやつとして与える食パンの量は、猫なら8枚切りパン1枚の1/3程度、犬なら2/5程度。
上記の目安量は、おやつとしてパンのみを与えた場合の話です。他にもトッピングやおやつを与えているようであれば、カロリーを算出して、その分のカロリーを引いた上でパンの最大摂取量を決定しなければなりません。
人が食卓でパンを食べているときに、そのパンを欲しがる子も多いのではないでしょうか。その場合は上記のようにカロリーに気を付けながらあげるか、食卓にあえて総合栄養食のドライフードを用意しておき、パンの代わりにあげる方法をとるといいでしょう。
猫や犬へのお裾分けがパンばかりになってしまえば、カロリー過多や主食の栄養バランスを崩す恐れがあります。しかし、お裾分けに見せかけて総合栄養食のフードをあげることができれば栄養バランスが崩れることを恐れる必要がありません。
パンそのものを欲しがる子ももちろんいますが、「人が食べている美味しそうなもの」をお裾分けしてほしい、という気持ちでおねだりをしている子もいます。お裾分けの中にうまく総合栄養食を取り入れて、犬猫の満足度を上げてあげましょう。
人の感覚だけでカロリーを正確に測るのは難しく、実際のカロリーとは大きくかけ離れていることが少なくありません。感覚で与えていると、消化器症状を起こしたり、長期的には栄養素の過剰や欠乏になったりする可能性があります。ぜひ、愛猫・愛犬の1日の摂取カロリーを計算し、安心しておやつを与えられるようにしましょう。