はじめまして、DC one dish獣医師の成田有輝です。動物病院での6年間の診療業務の後、今はDC one dishの獣医師として栄養学を専門にしています。今回は犬猫たちのダイエットの必要性や、ダイエットをするうえでも重要な摂取カロリーについて解説します。
前回の記事:【獣医師監修】ペットフードの総合栄養食ってなに?ドッグフード・キャットフードの選び方|vol.1
もくじ
「最近少し重くなって来たかしら?」抱っこをしていて、そう思ったことはありませんか。人間の体重が100g増えるのと、動物たちの体重が100gでは体の大きさが異なる為、この「少し」という感覚が実は、動物たちにとっては「かなり」に該当することがよくあります。
肥満は、病気を引き起こしたり、併発する病気を悪化させる要因となります。犬猫の肥満は、ぽっちゃりしていて「カワイイ」ではなく「可哀想」という認識を持っていただければと思います。ぜひダイエットを真剣に考えてください。
犬や猫が一日に必要なカロリーは、DER(Daily Energy Requirement:一日当たりのエネルギー要求量)を計算することで推定することが出来ます。一日の摂取カロリーと、このDERの計算から得られたカロリーとで、大きな差がみられた場合、今一度給与量を見直す必要があります。
一日の摂取カロリーは「現在食べているフードの与えている量」と「パッケージ記載の単位当たりのカロリー」からを算出しましょう。
DER=活動係数×70×体重^(3/4)
「活動係数×70×体重×体重×体重√√」と電卓で押すことで計算することができます。
活動係数は、以下の表を参考にしてください。
例)体重8kgの去勢済みの犬の場合
1.6×70×8×8×8√√=532.8kcal
活動係数
活動係数(維持期) | 犬 | 猫 |
不避妊・去勢済み | 1.6 | 1.2 |
未避妊・未去勢 | 1.8 | 1.4 |
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【獣医師監修シリーズ】肥満と病気#1 肥満度チェックをしよう
ペットフードのパッケージに記載のあるフードの給与量は、あくまでも目安であり、かつ、そのフードのみを与えていた時に必要なカロリーです。追加でおやつを与える場合は、そのカロリーの分フードの量を減らす必要があります。
そして、注意して頂きたいのは、一般的にパッケージに記載されている給与量は、理想的な体重を維持するための目安カロリーであるため、現在、肥満の状態である子に、今の体重の項目を見て給与量を決定していると、体重は当然減りません。
与えすぎていたからと言って、急に食事量を極端に減らすと、犬や猫の体に負担をかけ体調を崩す恐れがあります。
そのため、まずはいつも食べているカロリーより10%ほど減らして、体重がそれに伴って減少するか見てみましょう。減少傾向が落ち着いた段階でさらに10%減らすという形で時間をかけてゆっくりと減量を行いましょう。
いつも与えているフードの量を減らすと、愛犬や愛猫が足らないと感じ、要求が増えてしまうことがあります。また、与える側の満足度が減り、双方が不満になり、ダイエットに失敗するパターンがよくあります。そういった時には減量用のフードを使用するのも一つの方法です。
減量用のフードはグラム当たりのカロリーが低く設計されており、同じグラム数(カサ)でもカロリーが全く異なります。一般的なドックフードは100gあたり350kcal~400kcal程度で作られていることが多いですが、減量用のフードはそれ以下の300kcal前後で設計されています。
減量用のフードを選ぶ時は、今食べているフードのカロリーよりも低いものを選んでみましょう。
なかなか満足の行く成果が得られない場合は、動物病院を受診することをおすすめします。動物病院には療法食に分類される減量用フードの取り扱いがあることが多く、獣医師が市販フードよりもさらにカロリーが制限されたフードの処方や量を指示してくれます。
犬猫の肥満の原因の多くは、カロリーの過剰摂取にあるわけですから、最も効果的な方法は食事制限です。
ダイエットのために、運動や散歩の時間を増やし、カロリーを消費しようと励む飼い主さんがいますが、肥満の状態の子は、長時間の運動や散歩をしたがらないことが多く、季節的に散歩が難しい時期があるため、運動を中心としたダイエットは失敗に終わることが多いです。
犬や猫は自分で冷蔵庫をあけて、勝手に食べるわけではないので、飼い主さんのマインドを変える必要があります。
ご家族で犬や猫を飼育されている方の場合は、実は、おばあちゃんが隠れておやつやごはんを与えていたとか、散歩の途中でおやつを必ずもらってしまうなどという話は、非常によく耳にしますので、ご家族全員の協力が必要となります。
与えているカロリーが、目安となるカロリーよりも明らかに少ないのに、「体重が一向に減らない」「体型が変わらない」などのダイエットがうまくいかないケースの中には、甲状腺機能低下症やクッシング症候群などの病気による影響を受けていることがあります。
こういった場合は、ダイエットではなく、その病気の治療がまずは優先されます。特に犬では高齢になると甲状腺機能低下症に陥っているケースがよくあります。
甲状腺機能低下症の犬でよくみられる症状として、肥満以外に以下の症状がみられます。
治療を受けることにより、自然と体重が減っていくこともあるため、ただ、食事の与える量を減らせばよいというわけではなく、しっかりとカロリー計算を行い、標準的な給与カロリーから、現在与えているカロリーが大きくかけ離れていないか確認してみましょう。
ダイエットで動物病院へかかることは何も恥ずかしくありません。うまくいかない場合は、飼い主さんだけで悩まずにぜひ病院へ足を運んでみてください。正しいダイエットで、愛犬・愛猫と元気に暮らしましょう。
次回はペットフードを選ぶ際に知っておきたい!パッケージの見るときのポイントを深掘りしていきます。どうぞお楽しみに。