【獣医師監修】どんなクレートがおすすめ?選び方とクレートトレーニングのメリット
2021.11.29 作成

【獣医師監修】どんなクレートがおすすめ?選び方とクレートトレーニングのメリット

獣医師/ペット栄養管理士

岩切裕布

岩切裕布

遊びに行くとき、動物病院へ行くとき、さまざまな場面で必要となるクレート(ペット用キャリー)。どのように選び・使えばよいのか、獣医師の視点からお話します。

もくじ

    クレート、キャリー、ケージ、サークルの違いは?

    【獣医師監修】どんなクレートがおすすめ?選び方とクレートトレーニングのメリット
    (Parilov/shutterstock)

    ※これからお話する内容は、定義が明確に決まっているわけではなく、製品を製造・販売している人の意図や、使用用途により名称が変わったりすることがあります。

    クレート(ペット用キャリー)

    クレートは英語で、木やプラスチック、金属で作られた箱を意味し、一般的には全面が囲われている持ち運び可能なタイプのものを指します。

    移動用途として使用されるものに関しては、キャリーと呼ばれることも多いです。しかし、キャリーと言う呼び方は日本独自の言い方で、海外ではキャリーとは言わず、carrier(キャリアー)と呼びます。

    ケージ

    ケージ(cage)は英語で、かご、箱を意味し、クレートと重なる部分もありますが、一般的には、床、天井、側面のある据え置き型のものを指すことが多いです。

    サークル

    サークルは日本では柵を意味し、天井がないものを指します。海外では、サークルとは言わずにpen(ペン)と呼びます。

    海外でキャリー、サークル、という単語を使っても意味が通じないため、気を付けましょう。

     

    どんなクレート(キャリー)を選べばよいの?

    どんなクレート(キャリー)を選べばよいの?
    (AlexHliv/shutterstock)

    一般的に、以下のようなクレートを選ぶと良いでしょう。

    水洗いが出来る

    思いがけないクレート内での排便、排尿や、外出時に地面に置くなど、クレートが汚れてしまう場面は様々あります。クレートの各パーツを簡単に取り外すことができ、全体を水洗いできるものを選びましょう。

    耐久性や持ち運びやすさを考えると、プラスチック製で一部が金属で出来たものなどが良いでしょう。

    折りたためるもの

    日常的にクレートを寝床代わりに使用するケースもありますが、使用しない場合に省スペースで保管することができるよう、折りたたむことができる、もしくは簡単に解体、組み立てできるものを選びましょう。

    内部の構造がシンプルなもの

    人間側はクレートの外見を気にしがちですが、その中に入る動物にとっては、クレートの内側のほうが重要です。体に当たるような余計な突起物がないか、爪をひっかけてしまうような部分がないか、通気性は問題ないか、など中に入る動物の気持ちになって選んであげましょう。

    犬・猫が自分で出入りしやすい構造やサイズ

    入口が狭い、勝手に扉が閉まってしまう、など動物自身が出入りしにくいクレートは、動物にとって居心地のいい場所になりません。愛犬・愛猫の大きさに対し、クレートの入り口の大きさが充分あるか確認しましょう。

    飼い主さんが犬・猫を出し入れしやすいもの

    飼い主さんにとって犬・猫を出し入れしやすいかも重要です。特に猫は動物病院へ行くと、緊張や興奮からキャリーの中から出せないというケースがあります。

    上や横など、クレートの入り口が複数あり、どちらからも動物を取り出せるような扉があるもののほうが良いでしょう。クレートの天井部分が取り外せるタイプは、動物を出すことができないという状況を回避できますので、なお良しです。

    自立する素材のもの

    柔らかい布製の素材でできているものは、たたむことができ、収納が省スペースで済むというメリットもありますが、中で動物が動くと本来の形を維持できず、倒れることがあります。

    クレートの中で、犬猫の体勢が崩れた状態で意図しない方向に体が曲がると、体を痛めてしまう可能性があります。ちょっとしたお出かけ用に布製のクレートを用意するのは良いですが、1つは必ず自立し、ペット自身がある程度自由に体勢を整えることができるものを用意しておきましょう。

    クレートトレーニングとそのメリット

    クレートトレーニングとそのメリット
    (Budimir Jevtic/shutterstock)

    何よりも重要なのは「普段からクレートに慣れさせる」ということです。クレートに入るといいことがある、安心できる、という印象を幼い時から動物に持ってもらうことが大切です。

    成犬・成猫になってからでもクレートトレーニングを行うことは可能ですが、年齢を追えば追うほど覚えが悪くなる傾向にあります。

    「クレートに入るとおやつがもらえる」などクレートに入ることが愛犬や愛猫にとってメリットとなる条件付けを繰り返し行い、愛犬・愛猫がクレートと仲良くなってくれるよう心がけましょう。

    日常的に寝床などとして利用し、「安心できる空間」という認識を持たせることにより、車移動や災害時などでも、落ち着いて動物が過ごすことが出来ます。

    最も避けたいのは、クレートに入る=動物病院に連れていかれる(嫌なことがある)、という悪い印象を動物に持たれてしまうことです。これが、トレーニング失敗の原因になります。嫌なことが起きるとき(動物病院に行く時だけ)クレートを使う、ということは避けましょう。動物病院が大好きな子は、ぜひクレートを活用してあげてください。

     

    クレートの運び方

    クレートの運び方
    (Rhoeo/shutterstock)

    クレートを運ぶ際に大切なことは、クレート内の「温度」と「揺れ」です。

    小さな空間だからこそ「温度」に気を付けて

    夏の暑い時期にクレートを使って移動する際は、保冷剤等を利用してクレート内を涼しく保ってください。動物病院へ連れて行く少しの間でも熱中症になるリスクがあります。

    逆に冬の寒い時には、直接風が吹き込まないようにクレートをタオルで覆ったり、外部からカイロを当てたりして、温かさを保ってあげてください。

    保冷剤・カイロは誤飲に注意

    ただし、保冷剤やカイロを使用した温度管理の際に注意していただきたいのが、クレート内での動物の誤飲です。

    普段は興味を示さないものでも、クレートという限られた空間の中では目新しいものに興味を示し、謝って口にしてしまうことがあります。

    動物病院に向かっている途中でさらに誤飲まで起こす、という事態は避けたいものです。保冷剤・カイロは直接当てずに、クレートの外側から温度管理を行うようにしましょう。

    愛犬・愛猫が酔わないように「揺れ」に注意

    想像してみてください。自分が小さな箱の中に入って、大きく揺さぶられたら、気持ち悪くなると思います。犬・猫にとっても同じことで、クレートが大きく揺れることで、乗り物酔いをする子もいます。ヨダレをだらだらとたらす、嘔吐をする、食欲が低下する、などの変化は乗り物酔いのサインです。

    あまりにも、乗り物酔いがひどいときは、動物病院へ相談しましょう。

    愛犬・愛猫と行動するときは、なるべく振動を与えないように時間に余裕をもって、お家を出ましょう。

    正しいクレート選びで快適なお出かけを

    クレートは犬猫と人が快適に、安全に暮らすうえでとても重要なアイテムです。愛犬・愛猫に合ったクレートを選び、クレートトレーニングを行うことで、日常のお出かけや災害時の避難がスムーズに行えます。いざというときに急いでクレートを用意するのではなく、クレートが日常生活の中に当たり前にある暮らしを心がけましょう。

    著者・監修者

    岩切裕布

    獣医師/ペット栄養管理士

    岩切裕布

    プロフィール詳細

    所属 yourmother合同会社 代表
    (獣医師によるオーダーメイドの手作り総合栄養食や療法食レシピをお届けする「DC one dish」の運営)


    日本ペット栄養学会
    日本小動物歯科研究会
    日本獣医腎泌尿器学会

    略歴 1987年 東京都に生まれる
    2005年 麻布大学 獣医学部獣医学科に入学
    2011年 獣医師国家資格取得
    2011年~2016年 都内動物病院に勤務
    2017年~2018年 フードメーカー勤務
    2018年~ DC one dish 設立
    2020年~ yourmother合同会社 設立

    資格 獣医師免許
    ペット栄養管理士

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