瞬時に前あしを使えない姿勢をとるほど警戒を解いた状態の座り方、香箱座り。座り方ひとつを高貴な香箱と表現されるとは猫の魅力は奥深いものです。猫の姿勢による気持ちの読み取り方と、おうちでリラックスしてもらうためのポイントをご紹介します。
もくじ
猫とは警戒心の強い生き物です。そんな猫が「前あしを使えなくてもいいや」と思えるほど「外敵がいない」「危険が感じられない」と判断している証拠です。
飼い主さんの前でも香箱座りをしてくれるようであれば、信頼してくれていると考えて良いでしょう。お引っ越し後など、環境が大きく変化した際には姿勢に注目してあげると愛猫の新しい環境への適応具合が判断しやすくなるでしょう。
香箱座りしている猫を目撃したいと思っても、なかなか遭遇できないこともありますよね。
比較的細い所で香箱座りしてくれることが多いです。室内だとソファーの背や窓の縁、梁(はり)の上など。
いつでも危機回避が出来るように、周囲の様子を上から見降ろして危険が迫ってこないかを確認できる場所が猫にとっては理想的。高い場所かつ細い場所をご自宅内でも準備してあげると、愛猫に香箱座りをしながら見下ろしてもらえる確率が上がるでしょう。
森鴎外の「青年」という作品には虎斑の猫(キジ猫でしょう)が積み上げた本の上に飛び乗って香箱座りをしている描写があります。「香箱を作って」と記載されています。
芥川龍之介の「お富の貞操」という作品には三毛猫(それも雄)が薄暗い台所で香箱座りしている描写があります。「香箱をつくってゐた」と記載されています。
文豪たちも猫がそばで丸まっている姿を見て可愛いと思いながら作品を生み出していたのではないでしょうか。
猫のボディランゲージは防御や攻撃の時以外は、よく観察しておかないと見逃しやすいです。もともと単独生活をしていた猫は、コミュニケーションをあまり必要としていません。
しかし、しっぽの様子や耳の向きをはじめ、猫は様々な気持ちを表現してくれています。一緒に生活する私たちがしっかりと読み取ってあげることが重要です。
今回は香箱座りを中心にした猫の気持ちの読み取り方をお話しします。
リラックスのあかしである香箱座りは、前あしは胴体の下に折りたたんでいますが、後ろあしはすぐに地面を蹴って飛びあがれる姿勢でもあります。猫はちょっとでも異変を感じたらすぐに逃げることが出来るのです。
もしも香箱座りから、後ろあしが滑り出てきたようにはみ出ていれば、すぐに飛び上がることは出来ません。よりリラックスしていると考えてよいでしょう。
香箱座りがやや崩れて、ゆったりと体を伸ばすような姿勢になり、顔を前あしの上に置いたりしている時は更にリラックスしている時です。寝息が聞こえてくる事もあるでしょう。
警戒心の強い猫が眠って良い場所と判断してくれたのですから、猫が安心できる場所を提供できた証拠です。リラックスしている猫は体の側面にしっぽを寄せていたり、ゆっくりとしっぽをゆらしたりすることもあります。
前あしを折り曲げるものの、胴体の下に綺麗に収めることが出来ない猫もます。座り方にも個性が出てくるものと考えてあげましょう。子猫は好奇心が強くいつでも駈け出せるように香箱座りをしないこともあります。
香箱座り同様に丸まっている姿でも、前あしの肉球がしっかり地面についている場合はすぐにでも逃げ出すことが出来るように警戒しています。
様子をうかがうために気になる方向へ耳が向いているので、何を気にしているのか確認してあげましょう。
耳がペタンと倒れている場合は怖くてたまらない時です。しっぽもお腹の下にしまい込まれているでしょう。近づいたときに耳が倒れた場合は、それ以上は近づかずに落ち着くのを待ってあげましょう。
しっぽが出ていてパンパンと大きく動いている場合は、かなりイライラしていると伝えてくれています。それ以上猫を怒らせるとしっぽが膨らんで立ち上がって「シャー」と威嚇されてしまうこともあります。
お互いに怪我をしないためにも、適切な距離を保ってあげましょう。
愛猫の様子によってお気に入りの場所を確認し、いつでも愛猫が利用できるように確保してあげましょう。お部屋の全てが見渡せる場所は猫に気に入ってもらえやすいです。
どんな場所でどんな姿勢をしているのか注目してみてください。
猫が驚いた時や怖いと感じた時に「ここなら危険が来ない」と信頼できる場所を作ることも大切です。安全地帯が確保されていると、気を抜いた時に何かあっても逃げる場所があるので猫にしっかりリラックスしてもらうことが出来ます。
猫が隠れることが出来るBOX型のベッドなどは、床の上に設置しがちですが、怖いときに逃げ込む場所としては不向きです。低い場所で視界が狭いと、いつまでも安全確認が出来ず、猫がずっと怖い思いをしてしまいます。
逃げ込んでも猫自身が周囲を見渡すことが出来て、安全確認を行えるように高い位置に設置できると理想的です。特に来客が苦手な愛猫の飼い主さんは参考にされてみてください。
逃げ込んで入った場所は安全地帯と認識してもらえるようにしましょう。猫が隠れ場所に入ったら、無理に手を入れて触らない等、ご家庭の中でルールを決めておくと猫に「ここは大丈夫」と伝わりやすいです。
ハードキャリーを常時逃げ込める場所として認識してもらっておくと、地震などの災害時に役に立つのでおすすめです。まずはキャリーの中でおやつを食べてもらったり、遊んだりして猫にキャリーを好きになってもらいます。キャリーの中で香箱座りをしてくれるようになれば、キャリーの中を信頼してくれたと考えてよいでしょう。
四肢をすべてを胴体の下にしまい込む姿勢である香箱座り。リラックスしている姿勢としてお話ししましたが、もしかすると寒さから四肢を守るために胴体にしまい込んでいる可能性もあります。
また、猫がお腹を見せた状態で寝ている姿は、かなり無防備な状態なのでリラックス度は高いと考えられますが、お部屋が暑くて伸びている可能性もあります。
愛猫に快適に過ごしてもらえるように、温度設定の際は猫の姿勢を参考にされると良いでしょう。
トイレの中で香箱座りをしている猫も少なからず居ます。猫砂が冷たくて気持ちよくベッド代わりにしているようであれば、他の場所に冷たいマットを設置して冷たい場所を用意してみると、気に入ってくれれば移動してくれるでしょう。
このように、お気に入りの場所としてトイレに滞在しているのであれば良いのですが、膀胱炎など泌尿器疾患の影響で排尿したいのに出来ずに座り込んでいる事もあります。
その他、排尿後のトイレの中でうずくまっている場合は、体のどこかに不調があり動くのが難しい状態になっている事もあります。歯肉の色や耳の内側等ピンク色の所が白っぽくなっていないか、血色を確認し、かかりつけの動物病院へ相談しましょう。
トイレに限らず、長時間香箱座りをして過ごしている場合、痛みや怠さがありじっと耐えている可能性も考えられます。嘔吐した跡がないか確認したり、下痢したりしていないか、食欲が落ちていないか等、最近変わった様子がなかったか考えてみましょう。
受診の際に、猫がどんな所でどんな姿勢をしていたかを飼い主さんにお話しいただけることは診断のヒントになる事があります。
日々どんなところで愛猫が過ごしているかを観察し、普段と違うなと感じた場合は詳しく様子を見てあげてくださいね。
香箱座りをきっかけに、さらに愛猫の気持ちに寄り添っていただけるとうれしいです。