獰猛(どうもう)で怖いといわれているピットブル。しかし、その魅力は奥深く、愛好家が多いことでも知られています。とはいえ、海外の土佐犬ともいわれるピットブルを飼う場合には、攻撃性を抑えるしつけが必要です。家族として迎え入れる前に、ピットブルの性格や身体的な特徴、飼い方を知っておきましょう。
もくじ
闘う犬というイメージが強く、家庭犬として見かけることが少ないアメリカン・ピットブル・テリアは通称ピットブルとして知られています。死亡事故にもつながるほどの強い力をもつピットブルですが、本当はどんな犬なのでしょうか。まずはピットブルについて詳しく説明します。
闘犬として有名なピットブルは、戦う姿と力強いイメージが強い犬です。しかし、少し離れた小さな目と短い鼻はどこかひょうきんで、普段の表情はとてもおだやか。明るく元気な犬種でもあります。
体高は46~56cm、体重は14〜36kgが標準とされており、筋肉質でがっしりとした体をしています。体高より体長がやや長いです。
※体高…四つ足をついて立ったときの、地面から背中までの高さのこと。
毛は短毛で 白、黒、ブリンドルなどあらゆる色が認められています。
ピットブルは本来、明るく無邪気で遊ぶことが大好きな人懐っこい性格をしています。飼い主さんに対して非常に忠実で、指示にもよく従いますが、一度興奮したら止められない獰猛(どうもう)な部分もあわせもっています。
非常に粘り強く、トレーニングや自分の仕事にも熱心で、飼い主さんを喜ばせるために頑張ってしまうお人好しな一面も。噛みついてしまう事故など怖いイメージが付きまといますが、実は人を噛むことは好みません。
愛好家たちはそんなピットブルの優しく愛情深い部分をこよなく愛している人が多いようです。
ピットブルは19世紀ごろに闘犬のために作られた犬種です。イギリス生まれのスタフォードシャー・テリアとブルドッグなどを交配してアメリカで作り出され、数々の舞台で戦ってきました。
闘犬が禁止されるようになると、その賢さや従順さから牧場で使役犬(職業犬)としても活躍しました。
20世紀になるとピットブルの攻撃性や凶暴性を悪用されるようになり、用心棒として人を傷つけるために使われ、凶暴で危険な犬というイメージを確立してしまいます。そのため、現在では危険犬種として、飼育が規制されている国や地域が多数あります。
優しく飼い主さんに従順な一面と、攻撃的な一面をあわせもつピットブル。力強い犬種だからこそ、飼い方には注意が必要です。
ピットブルはこれまで様々な仕事をしてきた犬なだけあり、体力や気力にあふれた犬です。そのため、家の中だけで過ごすような飼い方は向いていません。運動量を確保する必要があるため、散歩は1日2回、1回1〜2時間ほどと飼い主さんの熱意と体力が求められます。
時には広い場所で自由に走り回って運動ができるように工夫しましょう。運動能力も非常に高いので、アジリティ競技や嗅覚を利用したノーズワークなどに挑戦するのもおすすめです。
ただし、非常に力が強いため、散歩やドッグランに出かける前に服従訓練を徹底することが原則です。
体はさほど大きくありませんが、ピットブルの力は超一級です。興奮しだしたら、普通の大人の力ではとても抑えられません。そのため、ピットブルの飼育には適切な訓練が必要です。
特に小さな頃から主従関係をはっきりさせ、飼い主さんが絶対的なリーダーであると認識させるようにしましょう。リーダーを認識すれば、覚えが早く、とてもよく指示に従う有能な犬です。
ただし、犬の飼育経験がある人にも、ピットブルの飼育は容易ではないと言われています。家族の命令を絶対的に聞けるように、しつけや訓練はプロのトレーナーの力を借り、責任をもって行いましょう。
ピットブルと安全に過ごすためには、丈夫なリードやチェーン、口輪を用意しましょう。
本来、ピットブルは穏やかな性質をもっており、最近では闘犬用ではない家庭タイプのピットブルも登場しています。しかし、公共の場所で突発的なことが起こった時にコントロールできなければ、事故につながってしまいます。そのため、ピットブルの力にも負けない丈夫なものを用意してください。
口輪は、興奮した時の無駄吠えや噛むことを防ぐ目的もありますが、公共の場で周りの人へ安心感を与える意味もあります。
他の犬との争いが起きやすく、飼い主さんの負担も相当なものになるため、ピットブルは多頭飼いに向きません。多頭飼いを検討している場合は、飼育環境やしつけについてよく考えて判断しましょう。
ピットブルの平均寿命は8歳~14歳ですが、飼い主さんの健康管理で寿命は延びると言われています。日頃から健康に注意して、異常を感じることがあれば早めに獣医師へ相談しましょう。
ピットブルは、一緒に暮らせばたくさんの楽しみをくれる犬です。飼う上で気になるのは病気や寿命のこと。ここではピットブルの健康に関することをチェックしてみましょう。
ピットブルの代表的な病気が股関節形成不全です。股関節形成不全は股関節がうまく発育せず、関節に異常を起こす病気です。足を引きずって歩く、腰を左右に振って歩く、つまずく、運動を嫌がるなどの様子が見られたら、早めに獣医師に相談しましょう。
アレルギーによって引き起こされる皮膚炎です。皮膚の強い痒みが主な症状で、しきりに舐めたり噛んだりするようになります。皮膚に炎症や脱毛が見つかり、痒がっているようであれば、獣医師の指導のもと食事や生活環境の調整が必要になります。
犬によく見られる先天性の心臓疾患です。初期症状は特になく気がつくことはほとんどありません。症状が進行すれば運動してもすぐに疲れたり、咳をしたりするようになっていきます。合併症として、心不全や肺高血圧症が起こる場合があります。
上あごが生まれつき裂けている病気です。そのため食事や哺乳がしにくく、栄養不足に陥ってしまうこともあります。子犬のうちに1度は口腔内検査を行い、必要があれば手術を行います。
網膜形成異常は、網膜血管の発育に異常が起きることで起こる目の病気です。軽度のものは無症状ですが、重度になると視力に異常をきたすようになります。網膜剥離を引き起こすと失明の可能性も高いため、早めに治療を行いましょう。
細菌感染や、ミネラルの多い食べ物を食べると、尿道、腎臓、膀胱に結晶、結石をつくる尿石症になりやすいです。血尿、頻尿がみられたら病院へ行きましょう。
ピットブルの子犬を迎え入れるための相場は、おおよそ13〜25万円(2024年7月時点)です。犬の値段は性別、血統、チャンピオン犬かどうか、迎え入れる方法によって変動します。
日本のペットショップでピットブルを見かけることは少ないです。ピットブルと一緒に暮らしたいと思ったら、ブリーダーにコンタクトを取ってみてください。願った時に必ず子犬がいるとは限りませんが、複数のブリーダーに連絡を取り、どのような犬がいるか実際に見るなどして、焦らず最良のパートナーとの出会いを探していきましょう。
ピットブルを迎え入れるまでに、準備しておきたいものは、以下の通りです。約4〜5万円ほどをみておくと良いでしょう。
【寝床の準備】
・ペットサークル
・クレート(ペット用キャリー)
・ベッド
【日用品の準備】
・ドッグフード
・フードボウル
・水飲みボウル
【トイレ用品の準備】
・トイレトレー
・トイレシーツ
【ケア用品】
・ブラシ
・爪切り
・ペット用シャンプー
・歯磨きグッズ
【その他】
・首輪
・リード
事前に飼育環境を整えておく必要もあります。危険なもの、噛まれては困るものは片づけるなどしておきましょう。
ピットブルは暑さにも弱いので、夏場はクーラーなど空調設備のできるものも備えておくと安全です。余裕があれば、犬が遊べるおもちゃなども買っておきましょう。
【関連リンク】
犬を迎える前に準備しておきたいもの
犬を迎える前に整えておきたい室内のポイント
犬をペットとして迎える時の心構え
役所への登録料やワクチン接種・健康診断の費用として2〜3万円ほどかかります。
ピットブルの平均的な飼育費用は、1カ月あたり2万5,000〜3万8,000円になります。
フードやおやつといった食費。価格はピンキリですが、平均すると1カ月で5,000~6,000円ほどかかります。
トイレシーツなどの日用品が2,000~5,000円前後。
シャンプーなどのお手入れをトリミングサロンにお願いする場合は、その費用も必要になります。ピットブルの場合は1回1万円ほどを見ておきましょう。
力の強いピットブルと暮らすのであれば、しっかりしたトレーニングが必要です。自分でしつけることが難しいい場合には、トレーナーに依頼する必要があります。トレーニングは、およそ月1〜2万円ほどかかります。
フィラリアやノミ・ダニの予防薬なども含め、健康であっても医療費として年間で3万~6万円ほど必要でしょう。1カ月にすると3,300円程度です
初めて犬を飼う方の盲点となるのが、ペットの医療事情です。ペットには公的な健康保険がなく、治療費は全額自己負担となります。自由診療のため病院によって料金が異なる点が、人とは違います。
子犬は、骨折や異物誤飲が多いです。
ただし、どちらも場合によっては20万円を越えるケースもあるため、住環境を整えるなど事前の予防が大切です。
お迎えしたばかりの頃は環境変化によるストレスで軟便や風邪にもなりやすいので体調の変化にも気を付けてあげましょう。
ピットブルは、14〜36kg程度と言われています。
犬の保険料は、犬の年齢と体重によって変わるため、1ヶ月の保険料は以下を参考にしてみてください。*1
ペット保険は、健康でないと加入できず、加入可能年齢が「満7歳まで」のように制限のある場合がほとんど。0~3歳の間に加入するケースが多いです。人と同じように犬も年齢が上がれば病気のリスクも上がるため、早めに加入したいものです。
ペット保険はたくさんの種類があり、どれも同じように見えるかもしれませんが、各保険商品によって補償内容は大きく異なります。
保険料だけではなく、以下の補償内容をよく理解し、最もご自身に適した保険を選ぶようにしましょう。
*1参照:慢性疾患にも、高額治療にも対応したペット保険!ペット&ファミリー損害保険「げんきナンバーわんスリム プラン50」
*2 犬の加入タイプ(小型犬・中型犬・大型犬・特大犬)は、ご加入時・ご継続時の体重で決まります。ただし、1歳未満の幼犬の場合「犬種分類表」を参考に、1歳時のおおよその予測体重で加入タイプが決まります。
家族になる前からたくさんのことを学ぶことで、快適な暮らしをスタートすることができます。お迎えする犬の特徴や費用などをよく知ってよきパートナーとして信頼関係を築いていってくださいね。