人間や犬とは違い、猫は完全肉食動物と言われています。とはいえ「本当に野菜ゼロで大丈夫?」と心配になってしまいますよね。実際のところ、猫に野菜(ビタミン)は必要ないのか、猫の“食”について紹介します。
もくじ
(Bogdan Sonjachnyj/shutterstock)
食事で必要とされる三大栄養素と言えば、炭水化物・たんぱく質・脂肪。そこにミネラルとビタミンを加えると五大栄養素になります。肉や魚を食事の基本とする猫もこの五大栄養素を必要としますが、その割合は人間と大きく異なります。
人間の場合、必要な三大栄養素の割合は「炭水化物68%、たんぱく質18%、脂肪14%」。
一方、猫の場合は「炭水化物45%、たんぱく質35%、脂肪20%」。
炭水化物が半分以下というのは、人間の感覚からすると驚きですよね。それどころか、猫はたんぱく質をエネルギーに変換する能力が高いので、ほとんど炭水化物を食べなくても大丈夫という説もあるほどです。
また、猫は動物性食品からもビタミンCやKを作ることができます。
猫が必要とするたんぱく質は人間の実に5~6倍。食事で摂取すべき「必須アミノ酸」も、人間は9種類のところ、猫は11種類も必要です。
このように、人間と猫が必要とする栄養は大きく異なります。人間の感覚で猫の食事を考えると、猫にとっては“ありがた迷惑”になりかねないのです。
そもそも、猫にとって最も自然な食事、理想的な食事とは何でしょう?
野生の猫は元々、捕まえたネズミや小鳥などの小動物を丸ごと食べていました。もちろん保存などはしませんから、新鮮そのもの。
その肉だけでなく骨や血や内臓、さらに消化器に残っていた植物などを全部食べることで、動物や魚介類しか食べなくても、ミネラルやビタミンまでバランス良く摂取できていたのです。
(lola1960/shutterstock)
「小動物丸ごと」は、いわば自然が与えてくれた猫にとっての「完全食」と言えるでしょう。これを飼い主さんがすべて手作りするのは至難の業。そこで生まれたのが「総合栄養食」のキャットフードなのです。
実はキャットフードには「総合栄養食」と書かれているものと、「一般食」「副食」「おやつ」などと書かれているものがあります。
このうち、猫に必要な栄養をバランスよく満たしているのは「総合栄養食」です。ペットフード公正取引協議会の基準を満たしていると証明されているので、規定の量の「総合栄養食」と新鮮な水があれば猫の食事はOKです。
「一般食」だけでは栄養不足になってしまいますので、こちらはあくまで嗜好品的な位置づけとなります。「総合栄養食」に混ぜたりトッピングとして活用するのがおすすめです。
ちなみにキャットフードがなかった頃、日本の猫の食事と言えば「猫まんま」でした。それでも栄養不足にならなかったのは、外でネズミや鳥を捕まえて丸ごと食べていたからです。つまり、不足分の栄養素は自力で調達していたのですね。何ともたくましい限りです。
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完全肉食の猫にとって、基本的に野菜は必要のない食材ですが、メリットが全くないというわけではありません。メリットとしてよく言われているのが、便秘の解消です。食物繊維を摂取することで、便秘がちな猫が改善したという話はよく聞きます。
また、意外と野菜好きな猫も多いようです。それでは、どんな野菜なら安心して猫に与えることができるのでしょうか。
実は猫にとって「OK野菜」と呼べる野菜はありません。どんな野菜でも猫にとっては、大量に摂取すると消化器の負担になり、下痢・便秘・嘔吐などの原因になってしまいます。
ごく少量を消化しやすく調理した場合に限れば、大根、白菜、にんじん、かぼちゃ、さつまいもなどは比較的安心と言われています。例外として、きゅうりは生でも大丈夫です。水分が多く、体温を下げる効果もあるので、暑い季節に良いでしょう。
キャベツ・レタス・ほうれん草は、愛猫に食べさせている人も多い野菜ですが、シュウ酸やリンといった結石の原因となる成分が含まれている野菜です。ただし、大量に食べさせなければ問題ないので、調理したものを少量だけを気をつけながら与えるようにしましょう。
「NG野菜」の代表は、何といってもネギ類。長ネギ・玉ネギはもちろん、ニラ・にんにく・らっきょうなどもネギ類に含まれるので気をつけましょう。加熱・加工してあってもネギ中毒を起こし、貧血・呼吸困難・血尿を起こします。
アボガドは猫だけでなく、多くの動物にとって危険な食材です。下痢や嘔吐、呼吸不全などの症状を引き起こし、命を落とすこともあります。また種子が腸管に詰まるケースも。
意外な食材としては、アスパラガス。「アルカロイド」という中毒性物質が含まれており、解毒能力の弱い猫には危険と言われています。嘔吐やけいれんなどを起こす可能性があるので、覚えておきましょう。
中毒症状を引き起こす野菜を食べても平気な猫もいれば、ゆで汁をほんのわずか口にしただけで発症する猫もいます。先住猫は大丈夫だったから…などと油断せず、「NG野菜」は拾い食いをしないように気をつけてくださいね。
(Elena_Alex/shutterstock)
続いて、猫に野菜を与える方法や注意点をお伝えします。
ただしあくまで、猫が野菜を食べる必要はないということをお忘れなく。肉食の猫の胃腸は、野菜(植物)の消化吸収が得意ではありませんので、嘔吐や下痢をする場合があります。また思わぬ食材でアレルギー反応を起こすことも。
野菜を欲しがる場合はおやつやトッピングとして、ごく少量をあげるようにしてください。
生野菜は消化に悪いので、基本的に避けた方がよいでしょう。細かく切ったものを茹でる、茹でたものをミキサーなどでピューレ状にする、などのひと手間を必ず加えてください。
またアレルギーの心配がありますから、一度にあげるのは1種類のみにしておいたほうが安心です。食べた後に気になる症状が出た場合は、すぐにかかりつけ医に相談するようにしましょう。
基本的には猫には必要のない野菜。食べさせても大丈夫な野菜でしたら、猫が欲しがったときに与えてあげると、愛猫との仲が深まるかもしれません。
愛猫に、あれもこれもと、あげたくなるのは、飼い主さんとしては当然のこと。健康のために手作り食や野菜食が気になるのは、愛情深く勉強熱心な証です。
だからこそ、まずは「完全肉食動物」という猫の“食”の基本を再確認し、何かを“プラス”するだけでなく、現状を“キープ”したり、時には何かを“マイナス”するのも愛情の形です。