猫が嘔吐をする原因は様々。生理的に毛玉を吐くことから、命に関わる疾患による嘔吐まで実にたくさん。 今回は、その中でも実際によく遭遇する「毛玉を吐く」嘔吐と、「異物の誤飲」について触れてみたいと思います。
もくじ
(chie hidaka/shutterstock)
猫が吐く理由はたくさん考えられます。
1日2日で症状が収まるような急性胃腸炎の場合もありますし、おもちゃやヒモなどの異物を誤飲して嘔吐をする場合も。
その他にもユリなどの植物を食べたことが原因になる中毒性の嘔吐、さらには寄生虫感染症で吐くこともあります。
また、二次的に内臓疾患、腎臓病、膵臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症といった疾患が原因で嘔吐することも。
理由がどんな嘔吐であれ、何度も嘔吐をしたり、猫がぐったりしていたり、食欲も全くないようなら動物病院を必ず受診しましょう。
(Ekaterina Senakosava/shutterstock)
猫と暮らしたことのある飼い主さんは、愛猫が毛玉を吐くのを見たことがある方もいらっしゃると思います。
キレイなコロンとした毛玉を吐く子もいますし、吐いたものの中に毛が混じっているような場合もあるかもしれません。
猫はなぜ毛玉を吐くのでしょうか?
猫は通常、日常生活においてグルーミングを行います。グルーミングには体温調節だったり、被毛の汚れを除去したり、親和行動の一種だったりと様々な理由があり、猫にとってはとても重要な生活の一部です。
猫の舌表面はとってもザラザラしているのでこのグルーミングの際に被毛を体内に取り込みやすい性質を持っています。
グルーミングによって消化管内に取り込まれた毛は通常、糞便として排泄されますが、時に胃内で塊となって毛玉(毛球)を形成してしまうことがあります。これを【毛球症】と呼びます。
毛球、つまり毛の塊になってしまうと、それは猫の体にとっては異物になり、嘔吐によって吐き出されるか、あるいは胃内に停滞することも。そうなると、慢性的に嘔吐を繰り返す、食欲不振、体重減少などを引き起こします。
毛球症は短毛種よりも、長毛種の猫で好発する傾向がある点を覚えておきましょう。
また、毛玉が胃から腸に流れ、途中で腸に詰まって腸閉塞を起こすこともあります。腸閉塞を起こしてしまうと、手術で開腹しなくてはいけなくなります。愛猫の嘔吐物をよく確認して、慢性的に毛が混じる場合には注意が必要です。
生理的に毛が便に排泄される程度であれば問題ありませんが、胃内で毛玉を形成してしまうような毛球症は、背景にノミ寄生、皮膚疾患、痛み、ストレス、不安による過剰なグルーミング、慢性的な腸疾患など、何らかの基礎疾患があると考えられています。
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空腹だったり、胃の運動が低下してたりすると、黄色い液体を吐くことがあります。この黄色い液体は、胆汁であることが多く、そんなに心配をすることはありません。
お腹が空きすぎると腸に流れるはずの胆汁が胃に逆流して、それが吐き出されることになります。
食事を小分けにして与えることで、空腹時間を減らすことができるので、頻繁に吐くようであればそうしてあげてください。
まれに肝炎や腎臓病の初期症状として黄色い液体を吐くこともあるので、嘔吐がさらに続くようなら、早めに動物病院を受診しましょう。
飲んだ水や胃液などが逆流したものだと思われます。胃のむかつきや空腹時による胃酸過多が原因によるものも。
たいていはすぐ収まりますが、繰り返し吐くと脱水症状になりますので、気になる場合は動物病院へ。
緑色の液体や泡を吐いたときは、要注意です。
これは胆汁が多量に分泌されたときに出る色で、異物を誤飲したときなど、それを消化しようと胆汁が大量に分泌されることがあるのです。
異物が腸に詰まって腸閉塞を起こした場合にも緑色の液体を吐くことがあります。腸閉塞は短時間で命を落とすこともあるため、すぐに動物病院へ連れていきましょう。
飼い主さんが誤飲に気付いている場合はまだしも、たいていのケースは『なにを飲んでしまったのかわからない』ことが多いです。
以下、異物の誤飲について詳しく述べていきましょう。
(PHOTOCREO Michal Bednarek/shutterstock)
猫はヒモや糸が付いているおもちゃで遊んでいるうちに、それを飲み込んでしまう…という事故が多い動物です。ヒモ状の異物以外にもおもちゃの一部、弾力のあるマットやサンダルの一部などをかじって飲み込んでしまうことがあります。
誤飲してしまって胃の中にとどまった異物による症状は、無症状から連続的に起こる嘔吐まで様々です。
異物が胃内を通過し、小腸に流れ込んでしまうと、小腸はとても細いため、引っかかって小腸内で詰まってしまうことがあります。
その場合は毛球症と同様に、嘔吐のほか、食欲不振、元気がない、腹痛などを訴えます。
診断は飼い主さんからの情報に、「異物を飲んだ」という認識があると診断に役に立ちますが、もし異物を飲んだ可能性が不明な場合には、胃内異物の診断はとても難しいのです。
レントゲンに写るような大きさの異物の場合は確認が簡単ですが、ヒモやタオルなどはレントゲンに映らないため、麻酔をして内視鏡検査などを実施する必要があります。
とにかく異物の誤飲がないように、普段の生活と環境を整えていくことが大切です。これは、ペットの環境を人間の赤ちゃんがいるのと同じように考えるくらいのほうがよいと思います。
では、実際に異物があると診断された場合、どのような処置を行うのでしょうか?
胃内異物の種類によっては、催吐(さいと)処置を行なってその場で吐かせることもあります。
吐かせるには危険と判断した場合には、麻酔をして内視鏡で異物を除去することもあります。
異物が小腸内に閉塞している場合や、開腹しないと取り出せないような大きな異物の場合には開腹手術が必要となります。
ペットが誤飲をしたときに異物を吐かせるために、家庭で「塩水」などを飲ませるという方法が聞こえてきますが、これは絶対にNGです。猫が高ナトリウム血症に伴う中毒症状を引き起こすことがあります。
必ず獣医師のもと、薬剤などを使用した処置を施してもらってください。
嘔吐を引き起こす原因は本当にたくさんあります。
しかし、嘔吐が続くということは、猫の体にとっても大変負担がかかる症状ですので、様子がおかしいなと思ったら早めに動物病院を受診しましょう。