【獣医師監修】猫のエイズとは?正しい知識を身につけよう
2021.10.06 作成

【獣医師監修】猫のエイズとは?正しい知識を身につけよう

獣医師

堀江志麻

堀江志麻

“猫エイズ”…猫を飼っている方なら一度は耳にしたことがある疾患だと思います。今は、病院でもすぐに猫エイズに感染しているかチェックができるようになりましたが、猫エイズは、どんな病気なのでしょうか。 予防法があるのか、もしも猫エイズに感染してしまったらどうすればよいのか、解説していきます。

もくじ

    猫エイズとは

    【獣医師監修】猫のエイズとは?正しい知識を身につけよう(ANUCHID.L/shutterstock)

    エイズ、(AIDS)は、acquired immunodeficiency syndromeの略であり、“後天性免疫不全症候群”と訳されます。

    猫エイズとは、猫免疫不全ウイルス(FIVfeline immunodeficiency virus)感染症による免疫不全症候群です。人間に感染することはありません。

    以下、猫エイズ(FIV)と表記していきます。

     

    猫エイズについてのQ&A

    猫エイズについてのQ&A
    (Svyatoslav Balan/shutterstock)

    Q:猫エイズ(FIV)はどの様にして感染するのでしょうか?

    A :猫エイズ(FIV)の主な感染経路は、猫同士のケンカなどによる咬み傷です。唾液中に含まれるウイルスが直接相手の傷に侵入することにより感染します。

    また、感染力は高くはないとされていますが、猫エイズ(FIV)感染猫と同じ食器でフードや水を飲むことでも、感染を広げるリスクがあります。

    感染率においては、猫の生活スタイルにも非常に左右され、屋外にも出る猫の場合、約15〜30%と高い傾向があります。またオス猫の方がメス猫と比較すると、感染率が2倍以上となります。テリトリーをめぐって争いをするためと考えられます。

    Q:猫エイズ(FIV)になるとどんな症状が現れるのでしょうか?

    A :症状と感染経過に基づき、5期に分類されます。

    【急性期】
    元気がなくなり、リンパの腫れや発熱などを起こします。
    感染後数週間〜4ヶ月程度持続します。

    〈主な症状〉
    ・発熱
    ・下痢
    ・リンパ節腫大(しゅだい)
    ・好中球減少(こうちゅうきゅうげんしょう)
    ・抗体陽転

    【無症状キャリアー期】
    その名の通り無症状に見える状態です。
    数ヶ月から数年程度持続します。

    〈主な症状〉
    ・なし

    【持続性リンパ節腫大期】
    全身にあるリンパ節が腫れてきます。ただし見た目では確認しづらいことも多いです。
    1ヶ月〜2ヶ月程度持続します。

    〈主な症状〉
    ・リンパ節腫大

    【エイズ関連症候群期】
    徐々に全身の免疫機能が低下してきます。口内炎や風邪症状などが見られます。
    1年程度持続します。

    〈主な症状〉
    ・体重減少
    ・口内炎
    ・歯肉炎
    ・上部気道炎

    【後天性免疫不全症候群期:AIDS期】
    全身の機能低下が見られ、さまざまな感染症にかかりやすくなり、最終的に死に至ります。

    〈主な症状〉
    ・体重減少
    ・日和見感染(ひよりみかんせん)
    ・腫瘍(しゅよう)
    ・骨髄抑制
    ・脳炎

    Q:猫エイズ(FIV)はどのように診断するのでしょうか?

    Q:猫エイズ(FIV)になるとどんな症状が現れるのでしょうか?

    (ANUCHID.L/shutterstock)

    A :現在、その場ですぐに血液中の抗FIV抗体を検出できる検査キットがあります。ここで重要なのは検査の時期です。

    猫が実際に猫エイズ(FIV)に感染し、抗体が産生されるのには約1〜2ヶ月かかります。それまでの期間は仮に猫エイズ(FIV)に感染していたとしても抗体陰性となります。

    感染の可能性がある猫に関しては、一度検査を行ったのち、約2ヶ月後に再検査をすることが重要です。

    また、子猫の検査においても注意が必要です。母猫がFIV陽性だった場合、母猫からの移行抗体により、子猫は感染していないにも関わらず陽性の結果が出てしまいます。

    移行抗体は生後12週齢程度まで残るため、もし陽性だった場合には、6ヶ月齢以上になってから再検査することが重要です。

    Q:猫エイズ(FIV)に感染した場合、治療法はあるのでしょうか?

    A:最初に述べたように、猫エイズ(FIV)は、猫免疫不全ウイルス(FIVfeline immunodeficiency virus)感染症による免疫不全症候群です。

    したがって、ウイルスに対する治療と感染に伴う免疫不全の症状に対する対処療法が主体となります。抗ウイルス薬に関しては、副作用も大きく、実際にはあまり臨床現場では使用されません。

    対処療法としては、口内炎、下痢、気道炎など様々な症状に対して一般的治療を行います。

     

    Q:猫エイズ(FIV)の予防方法はあるのでしょうか?

    猫エイズ(FIV)に感染した場合、治療法はあるのでしょうか?

    (Christine Glade/shutterstock)

    A:猫エイズ(FIV)の予防は猫を猫エイズ(FIV)感染猫と接触させないことが一番の予防法です。

    ・猫を室内飼いすること
    ・新しい猫を多頭飼いする際には、感染の有無を確認すること

    上記を徹底することにより感染は予防できます。

    Q:猫エイズ(FIV)は完治するのでしょうか?

    A:猫エイズ(FIV)は一度感染してしまうと、体内からウイルスを排除することはできません。

    ちょっとした傷も治りにくくなり、免疫力の低下から病気にもなりやすくなりますので、いつでも愛猫の様子を気にかけてあげなければなりません。

    室内飼育を心がけ、まずは感染させないことが大切です。

    著者・監修者

    堀江志麻

    獣医師

    堀江志麻

    プロフィール詳細

    所属 往診専門動物病院「しまペットCLINIC」院長

    略歴 1979年 山口県宇部市に生まれる
    1986年~1992年 ドイツ・デュッセルドルフに滞在
    1998年 北里大学 獣医畜産学部・獣医学科に入学
    2004年 獣医師国家資格取得
    2004年~2007年 神奈川県 横浜市の動物病院に勤務
    2008年~2010年 同動物病院の分院(東京都大田区)の分院長を務める
    2010年 子供を出産し、一時お休み
    2011年 千葉県と東京都の2つの動物病院で勤務
    2011年11月11日 往診専門動物病院、しまペットCLINIC 開院 現在、東京都内を中心に千葉県、神奈川県にて往診をおこなっている。

    資格 日本小動物歯科研究会(レベル1認定講習・実習 終了)
    日本メディカルアロマテラピー協会(JMAACV日本メディカルアロマテラピー動物臨床獣医部会認定ペットアロマセラピスト)
    日本ホリスティックケア協会(日本ホリスティック協会認定ホリスティックケア・カウンセラー)

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