ノミに刺されるとかゆいだけでなく、アレルギーや感染症を引き起こしたり、瓜実条虫(寄生虫)を媒介することも。猫だけでなく人間にも害のある、厄介な存在です。今回は、そんなノミを愛猫に見つけてしまったときの対応策をお伝えします。
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(Maja Marjanovic/shutterstock)
リラックスタイムに愛猫を撫でていたら、毛の中に黒い砂粒のようなものが……。もしかしたらそれは、ノミのフンかもしれません。
「うちの子にノミなんか見たことない!」と言われるかもしれませんが、ノミはとても小さい上に動きも素早いため、見つけることは難しいもの。猫はグルーミングでノミを取ってしまうことも多いので、見つけにくいのです。
愛猫の毛の中や寝床などに黒く小さな粒を見つけたら、湿らせたティッシュの上に置いてみましょう。粒が溶けて赤茶色になったら、それは血を吸ったノミのフン。残念ながら、ノミが寄生していると考えたほうが良いでしょう。
もし愛猫が身体をかきむしったり、やたらと毛が抜けたり、湿疹が出来ていたりしたら、ノミのフンが毛の中についていないか探してみてくださいね。
ノミが寄生していると思ったら、すぐに動物病院を受診しましょう。ノミ取り用のクシやシャンプー、市販の薬剤などもありますが、動物病院で処方してもらえる薬が一番効果的で安全性も高いです。
さらに、ノミによるアレルギーを起こしている場合もあるので、獣医師に診断してもらったほうが安心です。
薬の種類は、首筋の後ろに垂らす「スポット剤」や「経口剤」などがあり、現在の主流は「スポット剤」。猫の口が届かない場所につけるので舐めとる心配がなく、生後数週間から使用できるものが多いです。
1日ほどで全身に効果が行き渡り、その後は新しいノミの寄生を予防する効果があります。
ちなみに、昔ならノミを見つけたらプチッと潰していましたが、これはNG。メスの場合は卵を飛び散らせてしまう可能性があるので、絶対に避けましょう。
ノミを見つけたら粘着テープにくっつけて、中性洗剤(食器用洗剤)を溶かした水に沈めるようにしてください。
(miha de/shutterstock)
ノミは大体2mmほどの小さな寄生虫で、実は「ネコノミ」「イヌノミ」「ヒトノミ」など、非常に多くの種類が存在しています。現在の日本で多く見られるのは「ネコノミ」。名前には猫とついていますが、実際は犬や人間も吸血します。
ノミは卵→幼虫→さなぎ→成虫と成長していき、成虫は吸血後24~48時間後に産卵します。数日で孵化(ふか)して幼虫となり、1~2週間ほどでさなぎに。
幼虫はカーペットや部屋のすみなどの湿気が高くて暗い場所を好み、食べこぼし、成虫のフン、動物のフケなどをエサにして成長します。
さなぎは数週間ほどで成虫となりますが、条件によっては、さなぎのまま数ヵ月も眠っていることもあるそうです。ノミが厄介な理由のひとつですね。
なお吸血するのは成虫のみ。成虫の寿命は1~2ヵ月ほどしかありませんが、非常に飢えに強いのでまったく血を吸わなくても生存が可能です。
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さて、病院で薬をもらったからこれで大丈夫…と油断してはいけません。実は、目に見えるノミ(成虫)は、卵まで含めたノミ全体の5%ほどしかいないのです。
つまり、成虫はほんの数匹しか見かけてなくても、卵などの形で家じゅうにいるということ。いったん繁殖してしまうと、家の中から完全に駆除するには、かなりの時間と労力が必要になります。
卵は宿主(猫)の体からすぐに落ち、畳やカーペット、家具の隙間や猫の寝床などで孵化して育ちます。
そして幼虫が食べるのは先程ご説明した通り、食べこぼしやフケ・髪の毛などの細かなゴミ。徹底的な掃除こそが、ノミを全滅させる一番の方法なのです。
まずは家具を移動させたりして、部屋の隅々まで掃除機をかけましょう。掃除をした後はすぐに掃除機からゴミを取り出し、ビニール袋に入れて口をしっかり縛って捨ててください。ノズル部分には駆除剤を吹きかけておくと安心です。
熱湯消毒できるものはお風呂などで熱湯消毒。ノミは60~70℃以上で死滅するので、60℃以上のお湯に10分ほどつけておくと駆除できます。
布類など乾燥機にかけられるものは、熱湯消毒の後に乾燥機にかけておけばさらに安心。アイロンも効果があると言われています。
布団乾燥機をお持ちでしたら、布団も60℃以上になるようにしっかり乾燥させておきましょう。乾燥後は掃除機をかけることをお忘れなく。
可能であれば、燻煙・燻蒸タイプの駆除剤を使うのも効果的。卵などには効果が弱いので、2週間ほど後にもう1度行うのがベストです。
ノミを数日で完全に駆除することはできませんので、気長にこまめな掃除を続けていきましょう。もちろん、猫にノミ駆除・予防薬を定期的に与えることもお忘れなく。
ノミの成虫は動物の血を吸わないと生きていけないので、薬を継続していけばいずれノミを完全に退治できるはずですよ。
(KDdesignphoto/shutterstock)
一度繁殖してしまうと、完全に駆除するまでには手間もコストもかかるノミ。一番簡単なのは、そもそも愛猫がノミに寄生されないように予防することです。
予防方法は、寄生されてしまったときの対処と同様です。動物病院で定期的に駆除・予防薬を処方してもらい、こまめに家を掃除すること。ほとんどの薬は月1回の投与でOKなので、春~秋は毎月行うようにしましょう。
ただし最近は、通年予防する飼い主さんも増えています。というのも、ネコノミが過ごしやすい環境は温度20~30℃、湿度70%以上と言われていますが、温度13℃以上あれば十分繁殖できる能力を持っています。
現代日本の住宅は真冬でも暖かい場合が多いので、心配であれば通年予防したほうが安心です。
また「うちの子は完全室内飼いだから大丈夫」という方もいますが、人間の衣服や靴を経由して持ち込まれてしまうこともあります。動物病院などでもらってきてしまった、というケースも。
猫にとっても人間にとっても病気やストレスの原因になり、完全に駆除するのが大変なノミ。転ばぬ先の杖として、毎月の予防を欠かさないようにしてくださいね。