【獣医師監修】愛猫と引越し。ストレスフリーを目指そう
2021.08.04 作成

【獣医師監修】愛猫と引越し。ストレスフリーを目指そう

獣医師

堀江志麻

堀江志麻

昔から、【犬は人に付き、猫は家に付く】という言葉があります。これは、犬と猫の性状の違いを言葉に表したものであり、『犬は人間(=飼い主)に従い、 猫は住みなれた場所に執着する』という意味です。そう考えると愛猫にとって引っ越しはNGなの? と感じてしまいます。実際のところ、愛猫にとって、引っ越しはどうなのでしょうか?

もくじ

    猫だって引っ越しにストレスを感じる

    引っ越しによる猫のストレス症状とは

    (Africa Studio/shutterstock)

    猫は「変化」に緊張しやすい

    犬は番犬として、猫はネズミ対策のために飼われていた時代はそうだったかもしれませんが、今は犬も猫も人間ととても近い関係で“家族”として暮らしています。

    猫も犬のように飼い主に甘え、飼い主が出かけるときは寂しさを訴え、外出先から戻った飼い主との再会を喜び、飼い主に心を寄せる姿がたくさん見られます。犬と比較すると、家畜化された歴史は浅いので、まだまだ本能を強く持ち合わせていたり、人に対してそこまで心を解放しない子がいるのも事実です。

    とても飼い主に懐いていても、「変化」に対して猫は比較的強い緊張感を示す動物です。例えば、普段はとってもおとなしくても、病院では緊張と怖さがゆえにパニックになってしまったり、住み慣れたお家の中でも、ホームパーティーでたくさんの人が集まったり、工事による騒音でストレスを感じ、オシッコをしなくなったり、ゴハンを食べなくなったりします。

    引っ越しをストレスに感じるかは猫の性格しだい

    なので、引っ越しによりストレスを受けるかどうかはその子の性格に大きく左右されると考えられます。例えば、とても飼い主に懐いていたり、他人が家に来ても興味を持って近くに寄ってきたりする性格の猫の場合、“家”が変化しても共に暮らす家族が一緒であればそこまで動揺はしません。

    使い慣れた食器やトイレ、ベッドを新しいおうちにセットしてあげれば猫は比較的早くに新しい環境に順応します。新しい家が今までよりもかなり広い場合には、最初は移動できる範囲を小さくしておくことも猫が安心できる対策です。

    猫がもともと臆病で飼い主にすらあまり寄ってこない、もしくはとてもシャイな性格の場合、新しいおうちのリビングではない、静かな一部屋に使い慣れた食器やトイレ、ベッドをセットして、最初の数日間は猫が自ら出てくるまで無理にかまったりせずに放っておくことも大事です。

     

    引っ越し当日は特に注意

    猫との引っ越し当日は特に注意

    (Konstantin Aksenov/shutterstock)

    新しいおうちでの対応は比較的やりやすいのですが、猫との引っ越しで一番注意しなくてはいけないのが引っ越し当日です。

    業者さんに荷物をパッキングしてもらう時の騒音や人の出入り、新しいおうちでの家具のセッティング時などの騒音が猫にとって一番のストレスとなります。ですので、引っ越し業者が入る日や片付けなどで人の出入りが多いと思われる日は予め知人や友人の家、ペットホテルや動物病院で預かってもらうのも一つの方法です。

    友人の家に預けたとしても、数時間であればキャリーケースから出さなくても落ち着いていられる場合もあります。

    もちろん、そういった場所に預けることも猫にとっては少なからずストレスではありますが、引っ越し業者さんが来てものすごい騒音がすること、人の出入りが激しいこと、そして住み慣れた“家”が変化していくを目の当たりにするよりはストレスが少なくて済むと考えられます。

     

    フェロモン製品を上手に使う

    【猫と引っ越し】フェロモン製品を上手に使う

    (Kristi Blokhin/shutterstock)

    上記のように、猫にとっての引っ越しは、家が変わるということよりも、それに伴う普段経験しない「騒音、人の出入り、自分が住んでいた場所が荒らされていくこと」を目の当たりにすることが一番のストレスの原因と考えられますので、愛猫の性格を踏まえて対策を考えることをお勧めします。

    それ以外にも猫が安心する製品などをプラスアルファとして使用するのも良いかもしれません。一つご紹介します。

    世界中で広く愛用されている猫用フェロモン製品、フェリウェイ(FELIWAY)です。

    ビルバック フェリウェイ スプレー

    ビルバック フェリウェイ スプレー 猫用 60mL

    フェリウェイはもともと、多頭飼育などで問題となりやすい猫のスプレー行動などの問題行動を抑制するために開発されたフェロモン製剤です(CEVA社製品情報より)。

    この製品は、猫の健康的な生活と福祉に大きく貢献した製品に贈られる賞である「キャットフレンドリーアウォード」を過去に受賞しています。

    フェリウェイには、猫のフェイシャルフェロモンF3類縁化合物が含まれています。スプレータイプや、自宅のコンセントに差し込んで成分を拡散させるタイプがあります。

    ●フェイシャルフェロモンF3とは…
    猫が大好きな人や物にほっぺをスリスリする行動を見たことがあると思います。あれは猫が慣れ親しんでいる事を示すために、ほっぺからフェイシャルフェロモンF3を分泌し、こすりつけているのです。

    ●フェロモンとは…
    フェロモンは動物から自然に産生される化学物質です。猫では鋤鼻器(じょびき)で受容され、同種間のコミュニケーションに用いられます。

    このフェリウェイを、猫が普段過ごしている環境に使用することで、猫の気持ちを落ち着かせてあげて、様々な問題行動を抑制するものです。

    効果がある子には効果があり、効かない子には効かない場合もありますが、引っ越し前の慌ただしい時期に使用してあげたり、移動のために入れたキャリーバッグの上にフェリウェイを染み込ませたタオルを上からかけてあげたり、引っ越し先の新しいおにフェリウェイを使用するのも良いでしょう。

    引っ越しによる猫のストレス症状とは

    【獣医師監修】愛猫と引越し。ストレスフリーを目指そう

    (svitlini/shutterstock)

    もし引っ越しにより猫がストレスを受けた場合、どういった症状があるのでしょうか。

    •  食欲不振
    •  下痢、嘔吐などの消化器症状
    •  オシッコやウンチをしないなどの排尿障害
    •  皮膚をかきむしったり過剰なグルーミングによる皮膚疾患
    •  部屋から出てこない
    •  不安げに鳴く

    2〜3日で症状の改善が認められない場合には、一度動物病院を受診してくださいね。

    このように愛猫の性格を知って、ストレスが少なくなるように対応してあげることができれば、猫にとっての引っ越しも大きな問題ではありません。事情により引っ越しをしなければならないことはあると思います。ぜひ新しいおうちで楽しい生活を愛猫ちゃんと過ごしてくださいね。

    著者・監修者

    堀江志麻

    獣医師

    堀江志麻

    プロフィール詳細

    所属 往診専門動物病院「しまペットCLINIC」院長

    略歴 1979年 山口県宇部市に生まれる
    1986年~1992年 ドイツ・デュッセルドルフに滞在
    1998年 北里大学 獣医畜産学部・獣医学科に入学
    2004年 獣医師国家資格取得
    2004年~2007年 神奈川県 横浜市の動物病院に勤務
    2008年~2010年 同動物病院の分院(東京都大田区)の分院長を務める
    2010年 子供を出産し、一時お休み
    2011年 千葉県と東京都の2つの動物病院で勤務
    2011年11月11日 往診専門動物病院、しまペットCLINIC 開院 現在、東京都内を中心に千葉県、神奈川県にて往診をおこなっている。

    資格 日本小動物歯科研究会(レベル1認定講習・実習 終了)
    日本メディカルアロマテラピー協会(JMAACV日本メディカルアロマテラピー動物臨床獣医部会認定ペットアロマセラピスト)
    日本ホリスティックケア協会(日本ホリスティック協会認定ホリスティックケア・カウンセラー)

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