フリフリ・パタパタ・ピーンとさまざまな動きを見せてくれたり、ボフッと膨らんだりする猫のしっぽ。ずっと見ていても見飽きるどころか、惹きこまれて時間を忘れてしまいますよね。実は、猫はしっぽをただ動かしているのではなく、私たちにいろんな気持ちを伝えてくれています。しっぽを見て猫の気持ちを読み取り、愛猫にとって最高の飼い主さんを目指しましょう。
もくじ
尾椎(びつい)という小さな骨が連なってできている猫のしっぽ。長さによって個数は異なりますが、長いしっぽだと尾椎は24個あります。ここに筋肉がつき、尾骨神経という神経によって先端まで細かく動かすことができるのです。
豊かに動く猫のしっぽには、次のような役割があるといわれています。
猫のしっぽの一番の役割といえば、感情表現です。嬉しいときや興奮しているとき、狩りの最中に獲物の様子をうかがうときなど、気分によって振り方が変わります。
どんな動きでどんな気持ちを表しているのかは、後半で詳しく紹介しますのでお楽しみに。
ネコ科であるチーターは、走りながら右に曲がるときはしっぽを左回転させ、左に曲がるときは右回転させてバランスを保持します。チーターはかなりの速度で疾走するので、曲がるときの遠心力はかなり強いです。
獲物を捕らえるために疾走しているので転倒してしまっては意味がありません。しっぽを上手に使ってバランスを取っています。
同じように猫のしっぽは、バランスを取るときの舵取りとしての役割もあります。高い所を歩く猫の姿を想像するとイメージがつきやすいと思います。
幅が細く不安定な場所を歩く際は姿勢を低くしながらしっぽを高く上げてバランスを取ります。急に体の向きを変えるときにも、しっぽを上手に使って体のバランスをとっています。
寒いときに猫がしっぽを体に寄せている姿を見ることがあると思います。単純にしっぽが冷えるのを防ぐため体にくっつけている可能性もありますが、しっぽを寄せることで暖を取っているのかもしれませんね。
狩猟補佐など、仕事の役割によって品種が作られた犬とは違い、猫は毛質や見た目の違いを求めて品種が作られています。そのため、品種によってしっぽの特徴も異なります。
しっぽに注目して猫の品種をいくつか紹介します。
短いしっぽといえば、ジャパニーズボブテイルが有名です。ポンポンのようなしっぽが特徴です。
その他に、アメリカンボブテイルやエキゾチックショートヘアのしっぽも短くカールしています。
短毛の猫種のしっぽは長いことが多いです。ロシア皇帝にも寵愛されたというロシアンブルーは、長いしっぽの猫としてみなさんもイメージがつくと思います。
シャム猫(サイアミーズ)は細く長いしっぽですし、無毛のスフィンクスのしっぽもムチのように細長いです。短い縮れ毛のコーニッシュ・レックスのしっぽは非常に長いです。
長毛の猫種はしっぽの毛も長く、キツネのしっぽのようにフサフサ。可愛いしっぽがポフッと顔に当たるとつい嬉しくなってしまう飼い主さんも多いのではないでしょうか。
寒暖の激しい気候風土にも耐えられる大きくてたくましい長毛猫であるメインクーンのしっぽも毛が長く、体格とともに太く大きいです。
ノルウェージャンフォレストキャットも寒さに適応して長くて密度の高い分厚い被毛の持ち主なので、しっぽもかなりフサフサしています。
しっぽの長いアビシニアンを長毛種にしたソマリも、フサフサとした胸元と長いしっぽが特徴的です。
長毛の猫として真っ先に浮かぶペルシャのしっぽも当然ながらフサフサですが、上記の猫種と違い、しっぽ自体の長さは実は少し短めです。
しっぽの無いマンクスという種類の猫もいます。前あしより後ろあしが長く、ぴょんぴょんとウサギのように飛び跳ねる動きが特徴です。
もともと孤島で自然と近親交配が起こった結果、突然変異によってできた種類です。
ここまで猫のしっぽに注目して猫種のご紹介をしましたが、可愛い姿だと安易に注目してしまうと、猫のためにならないこともあります。
例えば、マンクスは先天的な神経障害が多く、神経が上手く働きにくく失禁してしまう猫が生まれることがあります。交配の仕方によってはほとんどの子猫が死んでしまいます。
しっかりした知識がなかったり、品種の見た目の特徴を出すことにだけ注力した結果、マンクスのようにさまざまな疾患を抱えた猫が生まれることが増えています。
お家にお迎えする場合は、見た目の可愛さや猫種ランキングなどに惑わされず、しっかりと未来の猫たちのことも考えていただけると嬉しいです。
しっぽの役割でご紹介したように、猫のしっぽには、感情表現の役割があります。さまざまな場面や気持ちによって変化する猫のしっぽをよく見て、猫の気持ちを読み取りましょう。
ふわ~っと柔らかにしっぽを大きくゆっくりと振っているときは、猫が落ち着いているとき。母猫が子猫相手にしっぽでゆったりと遊んでいるときもこうした動きです。意識して動かしているというよりは、しっぽが勝手に動くようです。
愛猫が眠りながらしっぽを振っているときは、そっと眺めるだけにしましょう。
不機嫌なときも横になってしっぽを床にたたきつけることがあります。しっぽだけでは見分けが難しいため、耳の動きや状況を見て判断する必要があります。
猫のしっぽが垂直に立っているときは、好意的なときです。
飼い主さんが帰宅した際や、フードの袋を開けている際などに、しっぽをピーンっと立てて小走りしてくると思います。ピーンと立てながら小刻みに震わせているときもあるでしょう。
子猫が母猫に「ママ~!」と近づく際もこの仕草をします。愛猫がしっぽをピーンと立てて「にゃにゃっ」と鳴いているなら、子猫気分で甘えたくて駆け寄ってきているときです。存分に甘やかしてあげましょう。
飼い主さんが幸せを噛みしめることができる瞬間ですね。
不安で様子をうかがうようなときは、猫のしっぽは下がります。
安全な場所に逃げ込みたくて、しっぽを下げて腰を落として頭を頻繁に上げ下げしながら行き先を探している姿を見たことのある飼い主さんもいると思います。
例えば大きな音がしたとき、愛猫が一瞬立ち止まってしっぽを下げているようなら、おやつを1粒出して気分転換させてあげるのもよいでしょう。
あまり人慣れしていないなど、近づいてほしくないときの猫もしっぽを下げ、耳も少し倒れています。安心できる人だと認識してもらえるまで近づきすぎず、無関心のフリをすることもおすすめです。
怖くてたまらないときの猫のしっぽは、お腹の方にぴったり巻き込まれます。攻撃されたときにしっぽを狙われないように、お腹の下に隠すのです。
診察室でも怖がりの猫さんはしっぽをピッタリとお腹の下に巻き付けて固まってしまうことが多いです。
危険を感じているときの猫は、逃げるか攻撃するかを考えています。このときに触ると飼い主さんに対してでも噛みついてしまう可能性があります。無理をさせないことが一番です。
どうしてもその場から愛猫を動かさないといけないようであれば、普段から使用しているお気に入りの毛布やタオルで包んであげてからにしましょう。
イライラしているなど不快な気持ちのときの猫はしっぽをパタンパタンと振ります。リラックスしているときにもしっぽを振るので見極めが難しいですが、やや強めに振り下ろしていたり、短い間隔で振ったりします。
うるさいなと感じていたり、我慢して撫でられたりしているときの猫に見られます。「もうやめてよ」の意図である可能性があるので、耳が倒れているようであれば不機嫌なのだと捉えて、何かしている最中であれば怒られる前にやめましょう。
獲物を狙っているときにもパタパタとしっぽが動いてしまう猫もいます。このときに触ると、獲物に集中していた猫は驚き攻撃をしてしまう可能性があるので危険です。
しっぽの毛が逆立つように膨らんでいるのは、驚いたときや喧嘩などで、全身の毛も逆立っているでしょう。
しっぽが膨らんでいても、通常はしっぽが下がっていたり、お腹に巻き付けていたりと身を守る姿勢を取ります。
しかし、しっぽが膨らんだ状態で立てているようなときは徹底的な攻撃をしようとしているときです。横跳びをして全身を大きく見せようとすることもあるでしょう。
猫同士でも、しっぽや耳、姿勢などからお互いの気持ちを読み取って、攻撃すべきか、逃げるべきかを考えながら戦います。
私たち人も少しでも猫の気持ちを読み取りながら遊んであげましょう。
怖いと感じたときに、攻撃されないようにお腹の下にしっかり隠すほど、猫にとってしっぽはとても大切な部位です。安易に触ってよいものではありません。
日常的に、しっぽの先まで触らせてくれるような信頼関係を作っていくことが大前提です。
しっぽから触ろうとするのではなく、ゆっくりと猫が触れてほしそうなところから撫でてあげて、リラックスしてもらいながら、ついでに触れる程度にしましょう。
掴んだり、ましてや踏んだりしてよいものではありません。神経が繋がっているため、最悪の場合下半身不随の原因になることも頭の隅に入れておきましょう。猫のしっぽはとても大切です。
猫の腰辺りをトントンと軽くたたいてあげると喜んでくれることもあるでしょう。
しっぽの付け根あたりにある皮脂腺からにおい付けができるため、大好きな飼い主さんが相手であれば猫は自分の香りを付けやすいため触られることを嬉しく思ってくれることもあります。
ただし、数ミリずれた場所が触ってほしくない部分であることも大いにあります。猫に触れときは細かい見極めが重要です。
「猫はここが好きなんでしょ」と安易に触れれば、噛まれるなど痛い目を見ることになります。場所はもちろんですが、猫だって触られて嬉しい人、嬉しくない人がいるということを忘れないように接しましょう。
猫にとってコミュニケーションツールといっても過言ではない、しっぽについてお話ししました。
猫は非常に多くのボディランゲージで感情を表現してくれます。愛猫の日常生活をしっかり観察することで、細やかな気遣いのできる飼い主さんを目指しましょう。