2019.12.20 作成

猫のグルーミングとは?嫌がらないブラッシング方法・頻度を解説

獣医師

堀江志麻

堀江志麻

猫はその被毛をキープするために、ブラッシングが欠かせないとよく言われます。美しさという見た目のことだけではなく、ブラッシングをふくめたグルーミングには、実はもっと深い意味があるのです。今回はその効用についてもお話していきましょう。

もくじ

    猫の毛づくろいにヒントがある!?

    AltamashUrooj/shutterstock

    猫ちゃんに舐められて、あまりにその感触がザラザラしていてびっくりされたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
    猫の舌には“糸状乳頭”しじょうにゅうとうと言われるとても小さな突起がびっしりとついています。
    このザラザラの舌にはどんな意味があるのでしょうか?

    諸説ありますが、このザラザラの舌を使って、 上手に水を飲んだり、きれいに食べ物を舐め取ったり、体についた埃や汚れなどを舐めとり皮膚を清潔に保っています。

    特に、この体を舐める仕草を毛づくろい(グルーミング)と言いますが、猫と暮らされたことのある飼い主様はご存知だと思いますが、1日の中で多くの時間を毛づくろい(グルーミング)に費やしています。
    このグルーミングには非常に深い意味があり、猫が健康に過ごすためには必要不可欠な行動です。

     

    グルーミングの深い意味

    Jelena990/shutterstock

    ではグルーミングについて少し考えてみましょう。
    動物が自身の体を手入れすることを一般的にグルーミングといいますが、私たち人間がブラシでブラッシングをしたり、爪を切ったり、耳そうじを行ったり、体の手入れをすることもグルーミングといいます。

    でも実はグルーミングにはもっと深い意味もあるのです。

    子猫は出産時、膜(胎膜)で覆われて生まれてきます。当然膜に包まれていますのでこの時点では子猫は通常鳴きません。その胎膜を母猫が噛み切り舐めとり、臍の尾を噛み切り、かつ、子猫を一生懸命なめて刺激をして肺呼吸を促します。
    刺激を受けた子猫はミューっと第一声をあげ、この瞬間から肺呼吸が始まります。
    この行動こそが最初に子猫が受けるグルーミングとされています。
    生まれたばかりの子猫は自分で排泄することができないために、母猫が子猫のおしりを舐め、排泄を促します。

    母猫は、子猫がひっくり返って転がってしまうほど体中隅々まで舐め、仮に便で子猫の体が汚れていても、全部キレイに舐めとってしまいます。
    この刺激と行動が母猫の愛情であり、その愛情をしっかりと受け、子猫は心身共に穏やかに育つのです。

    愛情表現をかねてこそ

    FOTOGRIN/shutterstock

    猫は自分自身の体を舐めてグルーミングすることにより、汚れや、時に外でついてしまった寄生虫などを落とすと同時に、母猫から受け継いだ愛情同様、自身をリラックスさせるために食後の落ち着いた時間や、少し緊張した後などにグルーミングを行います。

    また、親兄弟など、非常に仲のよい猫同士では互いに舐め合い、信頼関係を確認するように互いにグルーミングを行います。
    この自分以外の相手にグルーミングを行う行動は、猫同士に限らず、信頼している飼い主に対して行うこともあります。

    猫が舐めてきてくれたら、それは愛情表現なので、ぜひ、猫ちゃんの頭や体を舐めるかのように撫でてあげてくださいね!

    愛情表現でもあり、皮膚を健康に保つためのグルーミング行動も、シニアになってくると、あまりこまめにしなくなったりします。また、シニアじゃなくても、もともとあまりグルーミングをしない子もいますし、長毛種の子などは、猫自身がグルーミングをしていても毛が絡まってしまったり、アンダーコートと言われるふわふわの毛がうまく抜け落ちずに毛玉となり、皮膚の違和感から過剰なグルーミングを行い、皮膚の炎症を引き起こしてしまうことがあります。

     

    ブラッシングが大切な理由

    Telekhovskyi/shutterstock

    私たち飼い主は、愛情表現に加えて、猫の健康状態を保つためにも日々のブラッシングはとても大切です。人間が猫に行うグルーミング行為、それがブラッシングとも言えるでしょう。

    ではどれくらいの頻度で,どういう方法でブラッシングをすれば良いのでしょうか?

    理想は毎日です。子猫の頃から愛情表現の一環としてブラッシングを行うことで、ブラシでブラッシングされることに猫も慣れますし、毛玉ができてから慌ててブラッシングを行うと毛玉がひきつれて痛みを伴い、その先ブラッシングをさせてくれなくなり、それこそブラシを見ただけで逃げ出してしまいます。

    コミュニケーションを構築することを目的として,毎日軽めのブラッシングを行ってくださいね。
    そして、猫の気分が乗らない場合は,決して強引に行わず、様子を見ながらブラッシングしてください。

    あごの下、頭の後ろや首周りは比較的受け入れる子が多い印象ですが、お腹やしっぽは嫌がる子が多いようです。当然ながら、嫌がらないようにするには嫌なことをしない、という方法がいちばんですので、反応を見つつブラッシングをすることが大切です。

    ブラッシングの道具を知ろう

    Nils Jacobi/shutterstock

    ブラッシングの道具としては一般的に以下のようなものがあります。

    ・ スリッカー:抜け毛、もつれ毛を効果的に取り除く
    ・ ピンブラシ:先が鈍になっているので皮膚や被毛を傷つけない
    ・ ラバーブラシ:浮いた毛を絡めとる。短毛種向き
    ・ 獣毛ブラシ:毛艶をよくする。短毛種向き
    ・ コーム:ブラッシング後の仕上げに毛並みを揃える

    それぞれに効果が異なりますので、猫ちゃんの好みにも合わせて選んでくださいね!

    しっかりとブラッシングを行っていれば基本的にはシャンプーは必要ありません。しかし猫ちゃんの汚れ、フケ、毛艶や臭いが気になるようであれば必要に応じてシャンプーをしてください。

    ただし犬と違って猫は被毛や皮膚が水に濡れるのを極端に嫌う傾向にありますので、あまり無理をせず、濡れタオルやブラッシングでケアしましょう。

    意外と奥が深い猫のブラッシング。心身ともに健康であるための大切な行為ですので、ぜひ楽しんで行ってください。

    著者・監修者

    堀江志麻

    獣医師

    堀江志麻

    プロフィール詳細

    所属 往診専門動物病院「しまペットCLINIC」院長

    略歴 1979年 山口県宇部市に生まれる
    1986年~1992年 ドイツ・デュッセルドルフに滞在
    1998年 北里大学 獣医畜産学部・獣医学科に入学
    2004年 獣医師国家資格取得
    2004年~2007年 神奈川県 横浜市の動物病院に勤務
    2008年~2010年 同動物病院の分院(東京都大田区)の分院長を務める
    2010年 子供を出産し、一時お休み
    2011年 千葉県と東京都の2つの動物病院で勤務
    2011年11月11日 往診専門動物病院、しまペットCLINIC 開院 現在、東京都内を中心に千葉県、神奈川県にて往診をおこなっている。

    資格 日本小動物歯科研究会(レベル1認定講習・実習 終了)
    日本メディカルアロマテラピー協会(JMAACV日本メディカルアロマテラピー動物臨床獣医部会認定ペットアロマセラピスト)
    日本ホリスティックケア協会(日本ホリスティック協会認定ホリスティックケア・カウンセラー)

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