まるで人間のように夜泣きをする猫。 なにかの思いがあってのことなのか、ちょっとかわいそうになってしまいますよね。 けれどもこちらも不眠、近所迷惑にもなりそうで…。 今回は猫の夜泣きについて解説していきましょう。
もくじ
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猫の夜泣きについてお話しする前に、動物の行動時間帯について触れてみます。
動物は、活発に行動する時間帯によって「夜行性」、「昼行性」、「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい:夕暮れや早朝など薄暗い時間帯に活動)」に分けられます。
猫は夜行性と思われがちですが、厳密に言うと、猫は「薄明薄暮性」の動物です。
日中はおとなしく、早朝や夕暮れ時に活発に動きます。そのため、猫が夜〜明け方に活動してニャーニャー鳴いたとしても、 それは生理的なことであり、異常ではありません。
とはいえ、人間と家の中だけでゆっくりと安全に暮らすようになり、以前よりも寝ている時間は増えたように感じますし、人間の睡眠サイクルに合わせて、夜は朝までぐっすり眠る猫も最近では多いように思います。
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そのほか、生理的な現象としては、発情に伴う過剰な発声があります。
年に数回やってくるメスの発情期には飼い主様もびっくりするような大声で鳴き続け、それに伴いオスも発情します。
発情期には鳴き声以外にも不適切な場所での排泄や異常な興奮などが認められます。
これらの行動を抑制するには発情を回避するよう、早期避妊、早期去勢手術をおすすめします。
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では、病的に鳴いてしまうものにはどういった疾患が考えられるのでしょうか?
夜に限ったことではありませんが、猫がニャーニャー過度に鳴いてしまう疾患として代表的なものが甲状腺機能亢進症です。
甲状腺機能亢進症とは、首の所にある甲状腺という組織から、過剰に甲状腺ホルモンが分泌されることにより、体に種々の障害をもたらす疾患です。
(人ではバセドウ病としてよく知られています)
6〜20歳の中高齢の猫に多く、性差はありません。
日本では13歳以上の猫の約2割に甲状腺機能亢進症が見られると報告されています。
甲状腺機能亢進症の猫にはどのような症状が認められるのでしょうか?
・食欲が増進しその割には痩せて行く
・飲水量が増加する
・性格が活発あるいは攻撃的になる
・以前よりもニャーニャーニャーニャー鳴く
・毛がパサパサしている
・時々下痢や嘔吐をする
などの症状が認められます。その他、一般血液検査では ALTやALPといった肝臓の数値が軽度に上昇することが多いです。
甲状腺機能亢進症の診断は現在国内では甲状腺ホルモンを測定することが可能であるため、臨床症状とともに、甲状腺ホルモンの値が明らかに高値を示している場合、甲状腺機能亢進症と診断できます。
原因は、国内では良性の甲状腺腫や悪性の腺癌が原因とされています。
もし、甲状腺機能亢進症と診断された場合にはどのような治療法があるのでしょうか?
大きくわけて食事療法、抗甲状腺薬による内科療法、外科的に甲状腺摘出があります。
まずは食事療法と内科療法を行い、過剰に分泌された甲状腺ホルモンを抑えることを試みます。薬剤の副作用や、療法食を食べないといったことがなければ、基本的にはうまく管理することができ、ニャーニャー鳴くといった症状や、食べても痩せてしまうといった症状は徐々に改善されていきます。
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そのほか、猫の夜泣きとして昨今問題となっているのは、猫の認知障害(認知症)です。
認知障害とは高齢動物における進行性の認知力低下を原因とした行動変化の総称です。
犬で認知症はよく知られていますが、猫でも14歳以上の子で報告がいくつも認められています。
認知症の症状には、うろうろ歩き回る徘徊や、不適切な場所での排尿、フードを認識するのに時間がかかるなどといった行動に加えて、夜泣きといった症状が認められています。
猫の認知症の治療法は確立されていませんが、抗酸化作用のあるサプリメントや薬剤など多少の効果が認められるかもしれません。
いずれにしても、夜泣きという行動は、飼い主様にとっても睡眠が障害されたりするため、なんらかの方法で対応し、最終的には薬剤などの介入も行い、少しでも互いに穏やかに過ごせるようにすることはとても大切です。