スコットランド原産のスコティッシュフォールドという猫をご存知ですか?いまやもう押しも押されもせぬ人気猫ですが、この猫の飼い方にはちょっとしたコツとあふれる愛情が必要です。今回はそんなスコティッシュフォールドのことをお話していきましょう。
もくじ
(Andrey Tairov/shutterstock)
スコティッシュフォールドは、その名前の通りスコットランドがふるさとです。
1960年代初頭に、偶然そこにいた折れ耳の白い猫、スージーから歴史ははじまりました。その愛らしさに魅せられブリーディングを繰り返し、誕生したのがスコティッシュフォールドというわけです。
しかし、スコティッシュフォールドは繁殖を繰り返すうちに、骨格や関節、聴力などにも異常が認められる個体が続発したことから、イギリスでは繁殖中止となりました。
その後、アメリカでブリーディングを続けられることとなったスコティッシュフォールドですが、遺伝性疾患を克服するために、さまざまな試みを経て、猫種としての確立を遂げました。
とはいえ、残念ながら現在でも疾患を抱えている個体は少なくありません。アメリカンショートヘア、ブリティッシュショートヘア等と交配させて、スコティッシュフォールドの個性を活かしつつ、遺伝子疾患を克服する方法など、試行錯誤は続いています。
(LeniKovaleva/shutterstock)
スコティッシュフォールドは、メスよりもオスの方がやや大きくなりますが、おおよそ体長60cmほど。
猫の中では平均的な大きさです。体重は個体差がありますが、メス3~5kg、オス3~6kgが平均になります。
子猫は100g前後で生まれますが、3ヵ月で1kgを超えることがほとんど。半年で2.5kgほどまで育ち、約1年で成猫になります。この1歳頃の体重が、その猫の理想体重と言われています。
スコティッシュフォールドと言えば愛らしい垂れ耳が大きな特徴ですが、立ち耳のスコティッシュフォールドもおり、「スコティッシュストレート」とも呼ばれています。実はスコティッシュフォールドの半分以上は立ち耳とも言われています。
立ち耳のスコティッシュフォールドが生まれたのは、健康な猫を増やすため。垂れ耳のスコティッシュフォールド同士を交配すると、耳の軟骨の異形成はほぼ100%遺伝し、生まれた猫は垂れ耳になります。
しかしこの猫は、骨や軟骨の疾患にかかるリスクが非常に高くなるので、垂れ耳のスコティッシュフォールド同士の交配を禁止している国もあります。
そのような遺伝的リスクを抱えた猫を増やさないため、垂れ耳同士の交配を避けてアメリカンショートヘアなどとの交配が行われるようになったことで、立ち耳のスコティッシュフォールドが生まれました。
立ち耳のスコティッシュフォールドは遺伝的疾患に対して比較的強いと言われています。
ちなみに、垂れ耳のスコティッシュフォールドであっても、生まれたときはみんな立ち耳になっているのが一般的。生後数週間ほどで次第に耳が折れ曲がってくるのが一般的です。
スコティッシュフォールドには長毛と短毛のタイプがあり、一般的には短毛の子が多いと言えるでしょう。
ゴージャスな印象の長毛タイプは、温厚で人懐っこい性格の個体が多いと言われています。鳴き声も比較的小さく、大人しいことが多いです。
短毛タイプであっても、北国スコットランド生まれのスコティッシュフォールドの被毛はダブルコート(オーバーコートとアンダーコートの二重構造)ですので、換毛期には抜け毛がかなり出ます。定期的にブラッシングしてあげると良いでしょう。
毛色と柄の豊富な組み合わせは、スコティッシュフォールドの魅力のひとつ。毛色は代表的なものだけでも「レッド(赤茶色)」「クリーム」「ホワイト」「ブルー(グレー)」「ブラック」と様々。
ここに単色の「ソリッド」、縞模様(しまもよう)の「タビー」、まだら模様の「トーティ」、毛先のみに色が入っている「シェーデッド」、三毛猫のような「キャリコ」など、様々な模様パターンが組み合わさります。
例えばレッドとブラウンの縞模様なら「レッドタビー」。ベースがシルバーで黒いうずまき縞模様が入っていると「シルバークラシックタビー」と呼ばれます。
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スコティッシュフォールドはとても人懐こい性格の猫と言われています。実際に飼っている方たちも、うちの子は穏やかで甘えん坊です、とよく話しているのを聞きます。
運動量もそれほど必要ではなく、おとなしい印象。猫といえばあまり言うことをきかない、勝手気ままのイメージがありますが、スコティッシュフォールドにそれは当てはまらないかもしれません。
人間の子どもとの相性もいいようです。環境の変化にも強く、家族が大好きで、いつも一緒にいたがる、との声も多数聞かれます。
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スコティッシュフォールドは太りやすい猫種と言われがちです。肥満しやすい体質というわけではありませんが、大人しい気質の個体が多いため、自然と運動不足になりやすいのでしょう。
子猫のうちはどんどん体重が増加していきますので、あまり気にする必要はありません。気を付けてほしいのは1歳をすぎてから。
成猫になった1歳のときの体重がその猫の目安となる体重です。もし数か月で15%以上の増減があったら注意しましょう。病気のサインかもしれません。
単なる肥満だったとしても、極端な体重の増加は内臓や関節に負担となります。目安となる体重から大きく増えすぎないよう、運動を促したり、食事を見直したりしてください。
またスコティッシュフォールドは抜け毛がかなり多い猫種。長毛タイプでも短毛タイプでも、毎日ブラッシング&コーミングをして美しい毛並みをケアしてあげましょう。
猫は自分で毛づくろいをする動物ですが、やはりお手入れを全くしてあげないと、毛が絡まって毛玉になってしまうこともあります。
飲み込んだ毛がお腹の中で塊になってしまう「毛球症」という病気もありますので、ぜひ毎日の日課にしてしまいましょう。甘えん坊のスコティッシュフォールドにとって、飼い主さんとのスキンシップは嬉しいひとときになるはずですよ。
ブラッシングほど頻繁にする必要はありませんが、耳掃除も定期的に行ってほしいケアです。特に垂れ耳の場合、耳の通気性が悪く雑菌が溜まりやすいので、こまめにケアしてあげてください。
ただしやりすぎると傷つけてしまう恐れがあるので、あくまで優しく。可能であれば動物病院などで指導してもらうといいでしょう。
耳を触られるのを嫌がる猫は多いので、子猫のときから慣らしておきましょう。
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垂れ耳のスコティッシュフォールドにとっては宿命とも言える遺伝性の病気です。簡単に言うと、軟骨や骨が正常に成長しない病気のこと。
関節部の軟骨がコブ状になり、動かしづらさや痛みが現れ、その痛みの程度によっては歩けなくなることもあります。さらには後ろ足やしっぽが変形することも。慢性的な関節炎の原因にもなります。
現段階ではこの病気の発症を予防することも、なってしまった場合に完治させることも難しいと言われています。
対症療法として、消炎鎮痛薬を使用して痛みを減らしてあげることしかできず、病気と長くつきあっていく覚悟が必要になります。
飼い主さんとしての責務は、定期検診などで病気を早期発見することです。手足を触られるのを嫌がる、歩き方がおかしいなどの症状が見られたら、早めに獣医師に相談しましょう。
もしも病気が認められたら激しい運動などは避け、段差などに注意して四肢にかかる負担を少しでも減らす努力をしてください。
垂れ耳は通気性が悪いので、どうしても耳の病気が起きやすくなります。
「外耳炎」は、鼓膜の外側である外耳が炎症を起こす病気。スコティッシュフォールドの場合は、湿気が溜まることで細菌が繁殖してしまうケースが多いようです。
頻繁に耳をかく・こすりつける、赤や黄色の耳垢が溜まっている、悪臭がする、といった症状が見られたらすぐに受診しましょう。治療では耳を洗浄し、内服薬や点耳薬を投与します。
「耳ダニ症」は、ミミヒゼンダニというダニが外耳に寄生する感染症。親猫や他の猫から感染することが多く、一緒に暮らす猫や犬にもうつる危険性がある、厄介な病気です。
耳ダニは激しいかゆみを引き起こし、耳垢が黒くなって大量に出ますので、そういった症状が見られたら速やかに受診して治療を受けましょう。
治療では耳の洗浄を行い、ダニ駆除剤を投与します。多頭飼いの場合、他の猫も治療が必要になることもあります。予防にはなにより「ダニをもらわない」ことが重要。完全室内飼いにして、カーペットなどの定期的な掃除も行いましょう。
心臓の筋肉が厚くなり、心臓の働きが弱くなる病気です。スコティッシュフォールドだけでなく、メインクーンやアメリカンショートヘアなどの猫種も遺伝的に多いと言われています。
全身に送れる血液量が減ってしまうため、疲れやすい、呼吸が速くなる、食欲不振といった症状が現れます。心臓の内部が狭くなったことで血栓が出来てしまい、それが末梢血管に詰まると後ろ足の麻痺が出ることも。突然死を起こすことも多い、恐ろしい病気です。
治療では、血圧降下剤や抗不整脈薬といった心臓の負担を軽減する薬を投与したり、血栓ができにくくする薬を投与したりします。残念ながら完治させられる病気ではないので、進行を遅らせながら一生付き合っていく病気となります。
初期ではほとんど無症状のため気付くことが難しく、健康診断などで偶然見つかることも多い病気です。若いうちから定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
スコティッシュフォールド、ペルシャ、アメリカンショートヘアなどに多い遺伝性の腎臓病です。
腎臓内に液体をため込んだ「嚢胞」ができ、次第に数を増やしたり大きくなって正常な組織を圧迫し、最終的には腎不全を起こします。
初期は無症状ですが、進行すると「水を飲む量が増える」「尿の量が増える」といった慢性腎不全と同じような症状が現れます。これらの症状が現れるのは2~3歳以降ですが、嚢胞は子猫のうちからできはじめます。
生後半年~10ヵ月頃にエコー検査を行うと検出率が高いと言われています。また遺伝子検査によって発症素因を持っているかを調べることもできます。
この病気は完治させられませんが、早い段階で発見できれば症状の進行を遅らせることができます。進行している場合は、療法食や点滴といった慢性腎不全と同じ治療を行い、腎臓の負担を減らし、症状を緩和します。
(zossia_/shutterstock)
丸みを帯びた愛らしさと大人しく人懐っこい性格から、非常に人気が高いスコティッシュフォールド。
ペットショップやブリーダーから迎える場合の平均的な費用は、およそ15~40万円ほど。(2021年9月時点)
前述の通り遺伝的な問題を抱えやすい猫種ですから、親猫の情報などもしっかり確認して、信頼できるブリーダーやペットショップからお迎えしたいですね。
迎えるために必要なアイテムとしては、ケージやベッド、食器、爪とぎ、移動時のキャリーバッグなどを揃えておく必要があります。キャットタワーなどもあれば、愛猫の充実感は増すことでしょう。
フードやおやつといった食費は平均すると年間で5~7万円ほどかかります。トイレの砂などの日用品が2万円前後といったところです。
猫の混合ワクチン費は3,000~8,000円ほど(1回)。子猫の場合、母乳中に含まれる母猫からの免疫(移行抗体)が徐々に消失していきますが、移行抗体が残っている時期においては、ワクチンを接種しても効果が十分に得られないため、何回かの追加接種が必要となります。0歳であれば2〜3回の接種が必要だと考えましょう。
フィラリアやノミ・ダニのケアもお忘れなく。部屋の中だけで飼うとしても感染リスクはありますし、特に蚊を媒介とするフィラリアには注意が必要です。
猫は犬と違ってフィラリアの診断が難しく、何よりも予防が大事です。ノミ、マダニ、フィラリアのオールインワンの予防薬も選択肢に入れてみてもよいかもしれません。年間費用は1万5,000円前後ほどになります。
また、初めて猫を飼う方の盲点となるのが、ペットの医療事情です。ペットには公的な医療保険がなく、治療費は全額自己負担となります。そのため、ペット保険に加入する人も多いです。自由診療のため病院によって料金が異なる点も覚えておきましょう。
猫の年齢によって保険料は変わりますが、猫の場合、1カ月1,300~2,400円*ほど。0~3歳の間に加入するケースが多いです。
ペット保険は、健康でないと加入できず、加入可能年齢が「満7歳まで」のように制限のある場合がほとんど。人と同じように猫も年齢が上がれば病気のリスクも上がるため、早めに加入したいものです。
ペット保険はたくさんの種類があり、どれも同じように見えるかもしれませんが、各保険商品によって補償内容は大きく異なります。
保険料だけではなく、補償内容をよく理解し、最もご自身に適した保険を選ぶようにしましょう。
*参照:慢性疾患にも、高額治療にも対応したペット保険!ペット&ファミリー損害保険「げんきナンバーわんスリム プラン50」