2019.05.30 作成

【獣医師監修】 愛犬のための健康診断Q&A

獣医師

堀江志麻

堀江志麻

春は狂犬病ワクチン、フィラリアやノミダニ予防がスタートする時期。 普段は病院に行かない方も、年に1度はこの時期に病院を受診されるのではないでしょうか ぜひ年に1度は健康診断もしてみましょう。

もくじ

    犬の健康診断についてQ&A方式でお答えします!

    Pressmaster/shutterstock

    Q;犬にも健康診断って必要なの?
    A;犬は言葉を話すことができません。”なんとなく調子が悪そう!”と愛犬の様子から感じ取ることはできても、どこがどう調子が悪いのかはなかなか判断をすることが難しいです。また、慢性疾患は一見愛犬の様子はどこも悪くなさそうに見えることもあります。言葉を話せない愛犬たちの病気をいち早く見つけ、手遅れにならないよう定期的な健康診断がオススメです。

    Q;どんなことをするの?
    A;検査には様々な種類があります。
    身体検査(視診、聴診、触診)、血液検査、尿検査、便検査、超音波検査、レントゲン検査、その他特殊な施設で行うことができるCT検査、MRI検査などがあります。

     

    具体的な検査はどのようなもの?

    WilleeCole Photography/shutterstock

    Q;それぞれの検査で何がわかるのか少し詳しく教えて?
    A;身体検査;なんらかの目的で病院を受診した場合、必ず行われます。全体を見て体の左右差はないか、立位の姿勢、犬座姿勢、歩行の様子などに異常がないかを確認します。また歯周病がないか、口の中に何かできていないか、口を開けて確認します。
    聴診では心雑音や不整脈の有無、呼吸音の異常などを確認します。
    犬たちは全身を毛で覆われているため、体を触り、何かしこりのようなものができていないか、どこかを触って痛みを発する場所はないかなどを確認します。

    血液検査;貧血の有無や、感染・炎症の有無、腎臓肝臓など内臓の状態、電解質のバランスなど把握することができます。その他犬に発生するホルモン疾患の特定やアレルギー検査などもおこなうことができます。

    尿検査;犬の個体によっては、 腎臓や膀胱内に結石を作ってしまう体質の子もいます。またシニアになると気づかないうちに慢性的な膀胱炎になっている子も。これらの腎臓や膀胱でのトラブルは、血液検査や身体検査ではピックアップすることが難しく、尿検査でのみ発見されることも多々有ります。
    また、血液検査で腎機能の低下がわかる前に尿検査で腎機能の低下を疑うこともできます。
    このように、尿検査では早期に疾患をピックアップすることが可能なので、ぜひ健康診断の項目に尿検査もいれてくださいね。

    便検査;子犬の頃は病院に健康診断に行くと必須の項目として便検査をされていたかもしれません。子犬は流通や販売の過程の中で寄生虫に感染している子達もいます。なので、生後数ヶ月までは健康診断の際に便検査もされていると思います。
    犬たちは外に出る機会が多いので、常に寄生虫に感染する可能性はあります。
    寄生虫に感染しても、初期や少量寄生では犬は症状を示さないこともあります。ç
    便検査では、寄生虫感染のほか、腸内細菌叢を確認したり、血便の有無を確認することができます。
    慢性的に軟便や下痢を起こしている子では便検査は必須となりますが、健康な子でも定期的に健康診断の際には便検査もされると良いと思います。

    超音波検査;超音波とは、人が聴くことができない高周波の音波です。この音波を臓器に当てて、跳ね返ってきた音を画像に表し、リアルタイムで臓器の様子を確認することができます。
    肝臓や腎臓、様々な臓器の内部の状態、血管の状態、腫瘤の有無、心機能の確認などを、基本的には痛みや麻酔を必要とすることなく検査することが可能です。
    体の中のたくさんの情報を得ることができ、負担も少ない検査ですので、健康診断の一つにぜひ取り入れてください。

    レントゲン検査
    ごく微量の放射線を照射し、全身の状態を確認する検査です。肺や心臓の大きさの異常、腫瘤などの有無、肝臓、脾臓などの臓器の陰影の異常、腎臓結石、膀胱結石などの結石の有無、骨折などの骨の異常、関節の異常を観察することができます。
    10歳以上の6割の犬たちに老齢性関節炎が認められることから、シニアになってからの健康診断にはレントゲン検査も取り入れてくださいね。

    CT検査、MRI検査
    CT検査とMRI検査では、2Dの平面画像のレントゲン検査と異なり、3Dで臓器や骨を観察することができより詳しく体内の状態を把握することが可能です。
    見る部位、疾患によってCT検査なのかMRI検査なのか選択されますが、いずれにしても犬たちでは全身麻酔が必要となります。
    すでに体内に腫瘍があり、その経過観察などを目的に検査が必要な子に限っては、健康診断の一環として必要となる検査かもしれません。

    愛犬に定期的な健康診断を受けさせよう!

    StudioByTheSea/shutterstock

    Q;健康診断ってどれくらい時間がかかるの?
    A;どこまでの検査をするかにもよりますが、通常の診療時間内に30分から1時間程度で行うことができます。
    また、超音波検査やレントゲンなども行う場合、半日お預かりして行う場合もあります。麻酔をかけた検査になると、1日がかりになることも。
    その子によって検査の種類も方法も異なってきますので、かかりつけの動物病院で相談してください。

    Q;健康診断って予約が必要なの?
    A;身体検査などは診察時にそのまま行うことができますが、検査内容によっては絶食や絶水が必要なこともありますし、かならずかかりつけの病院に確認しましょう。

    Q;費用ってどれくらいかかるの?
    A;健康診断の内容によって金額は大きく変わってきます。かならずかかりつけの病院に確認してみてくださいね。

    健康診断を定期的に行うことで、あなたの愛犬の状態をきちんと把握することができるようになるでしょう。これは飼い主としてのつとめ、とも言えそうですが、愛犬の体のことを知るというのは、とても楽しい作業です。
    長寿を目指すために、すてきな思い出をもっともっと作っていくために、定期的な健康診断を受けるようにしましょう。

    著者・監修者

    堀江志麻

    獣医師

    堀江志麻

    プロフィール詳細

    所属 往診専門動物病院「しまペットCLINIC」院長

    略歴 1979年 山口県宇部市に生まれる
    1986年~1992年 ドイツ・デュッセルドルフに滞在
    1998年 北里大学 獣医畜産学部・獣医学科に入学
    2004年 獣医師国家資格取得
    2004年~2007年 神奈川県 横浜市の動物病院に勤務
    2008年~2010年 同動物病院の分院(東京都大田区)の分院長を務める
    2010年 子供を出産し、一時お休み
    2011年 千葉県と東京都の2つの動物病院で勤務
    2011年11月11日 往診専門動物病院、しまペットCLINIC 開院 現在、東京都内を中心に千葉県、神奈川県にて往診をおこなっている。

    資格 日本小動物歯科研究会(レベル1認定講習・実習 終了)
    日本メディカルアロマテラピー協会(JMAACV日本メディカルアロマテラピー動物臨床獣医部会認定ペットアロマセラピスト)
    日本ホリスティックケア協会(日本ホリスティック協会認定ホリスティックケア・カウンセラー)

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