2019.05.09 作成
グルーミングという言葉はすでに世の中に浸透しているかと思われますが、 端的にいえば「毛づくろい」のことを差します。 そしてこのグルーミング、猫にとっては健康的に生きていくためにとても大切な行為なのです。 今回は猫のグルーミングの意味と、その深い理由についてお話ししましょう。
もくじ
(Bogdan Sonjachnyj/shutterstock)
ぺろぺろぺろ、と自分の被毛を舐めている猫の姿を、あなたも見たことがあると思います。 猫は1日の3分の2を寝て過ごし、残りの時間の半分をグルーミングに費やすと言われるくらい、毛づくろいをするのです。もはや、猫にとってグルーミングというのはライフワークに近い行為なのではないでしょうか。 では、どうして猫はグルーミングをするのでしょう? その前に、猫の被毛について知っておきましょう。 どうして猫には毛が生えているのか。それは「体・皮膚へのダメージ防御」、「汚れの付着を防ぐ」、「体温調節」のため、というのが基本的にはあります。 被毛をグルーミングして清潔に保つことで、まず皮膚病を防ぎます。さらには、血流も促進させることができ、健康の維持に役立っています。 猫の舌をみなさんはよく見たことがあるでしょうか。 ざらざらとした感触は、舌に糸状乳頭(しじょうにゅうとう)という突起があるからです。この舌によって、適度な刺激を与えられるわけです。
(yoshi0511/shutterstock)
猫のグルーミングにはまだ意味があります。 被毛を舐めることで、気化熱を利用して体温を下げることができます。夏場では、そのような猫もたくさん見かけると思います。 さらに冬場ではグルーミングによって被毛をふっくらさせ、空気を含ませることで保温効果も期待できるという働きも。 他にもあります。「転位行動」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、足をすべらせたり、物音にびっくりしたり…というような、軽い失敗をした時によく見られます。気持ちを落ち着かせ、そのストレスを解消するためにグルーミングをするのです。しつこく撫でられて嫌だった時なども、転位行動としてのグルーミングを行う様子がみられます。(karamysh/shutterstock)
ここまで解説してきたのは、猫が自ら行う「セルフグルーミング」のことです。 では、別の猫どうしがお互いの体を舐めあっているのを見たことはありませんか?あの状態を「アログルーミング」と言います。 アログルーミングは、親しい猫どうしで行いませんので、猫の親和行動のひとつと言えるでしょう。自分の体を他の猫に舐めさせる行為は、お互いに信頼と仲間意識がないとできません。 アログルーミングを行うのは、原則としてメスどうし、あるいはオスメスの組み合わせです。オスとオスがグルーミングし合うことは稀ですが、環境によっては仲の良いオスどうしも、しないことはありません。 けれども、気持ちよさそうにしているな、と思ったらいきなり喧嘩をはじめたりして、まったく猫は気まぐれだなあ、などと感じさせられます。もしかしたら、ちょっと痛かったりしたのかもしれませんね。 猫たちを観察しているとよくわかりますが、アログルーミングではセルフグルーミングで舐められないような部分を、相手が舐めてあげていることが多いです。 頭や首の後ろ側、耳、背中などの箇所は自分では舐められませんから、その部分を他の猫にグルーミングしてもらっているのです。お互い、ちゃんと助け合っているわけですね。 ちなみに飼い主のことも猫はぺろぺろと舐めてきたりしませんか? これもアログルーミングのひとつ、と言えるかもしれません。猫にとっては、仲間意識からくる親和行動なのですから、愛猫がこの行動に出たら、こちらもちゃんと撫でてお返しするのもいいかもしれません。
(meaofoto/shutterstock)
グルーミングする行為そのものに問題はありません。けれども、あまりにも頻繁に、過剰に自分で毛づくろいをして、毛が抜けてしまうことがあります。これは、何かしらのストレスが関係しているかもしれません。 最近、環境の変化はありませんでしたか? たとえば引っ越しや、子どもが生まれて家族が増えた、芳香剤を新しいものにした、住んでいるマンションが工事中…など。 いずれにしても過剰に舐めさせないために、エリザベスカラーなどを装着することもありますが、そもそもこのカラーに慣れていない猫には、ますますストレスがたまる悪循環にもなりかねません。 解決法はストレスを取り除いてあげることしかないのですが、ひとつの方法として「避難場所」をつくってあげるのもよいと言われています。 猫自身が落ち着ける安全な場所を用意してあげるのです。うるさくなく、少し暗めで狭く、ゆっくりできるようなスペースです。 押し入れの中のクレートでもいいですし、キャットタワーに備えつけられたハウスでもよいでしょう。居場所をつくってあげるのは、猫暮らしの基本中の基本でもあります。 ただし、過剰なグルーミングは皮膚病の可能性もあります。 かゆみのせいで舐めすぎてしまうのです。何らかのアレルギーの場合もあります。猫の体をよくチェックして、異常があればかならず獣医師に診てもらいましょう。(Koltsov/shutterstock)
では、セルフグルーミングができる猫に、私たちがコームなどでブラッシングしてあげる必要はないのでしょうか? いいえ、ブラッシングは現代の家猫にとって必要なことです。日常的に行うことによって体の異常を察知することができますし、慣れてしまえば猫も気持ちがよいはずです。コームやブラシは、愛猫の毛の長さに合わせて用意するとよいでしょう。 ブラッシングの目的は、猫が毛を飲み込まないようにすること。 やさしくゆっくりと、毛の流れに沿って施してあげましょう。 愛猫とのアログルーミングといえるブラッシングはきっと絆も深まるはず。ぜひまめに実践してみてくださいね。