猫は臆病な性格ですが、時には猫同士でけんかをしてしまうこともあります。特に多頭飼いをしている飼い主さんは猫同士のけんかのお悩みも多いのではないでしょうか。今回は、猫がけんかをする理由や、飼い主として仲裁すべきかどうかについて解説します。
もくじ
猫は単独で生活する生き物です。猫に対して自由気ままに生活するイメージが強いのは、群れを成さないことによるのではないでしょうか。犬のように集団で生活するイメージがないため、猫には社会性が無いと考えられてしまいがちですが、猫にも少しだけ社会性はあります。
もし、社会性が全く無いのであれば、お互いを無視する状態になるのでけんかは起こりません。少しだけ社会性があるがゆえ、苦手な相手との同じお家での生活は、かなりのストレスになります。
単独での生活中に怪我をすることは、天敵に狙われるなど命の危機につながります。そのため、猫はとても臆病な生き物です。
怪我をするリスクの高いけんかはなるべく避けられるように、爪とぎをしたり排泄をしたりして自らの存在を知らせ、ほかの猫と出会わなくて済むように過ごしています。
猫は苦手な相手に出会うとけんかをしてしまうものの、けんかは極力避けて過ごしたいのが猫なのです。
猫はなぜ、けんかしてしまうのでしょうか。
テリトリーとは、自分の行動圏のことを指します。さまざまな要因が関わりますが、猫にとって重要なのは食事ができることです。食事ができる場所と落ち着いて眠れる場所を、猫のテリトリーと考えてみましょう。
普段仲良く過ごすことができる猫同士でも、食事を分け与えることはありません。食事の邪魔をされることは、けんかの原因になります。大きなけんかにならないのは、潤沢に食事があると猫が解っているときです。
苦手な猫が自分のお気に入りの休息スペースにいれば、けんかが始まることもあるでしょう。
野良猫の鳴き声やけんかの声がよく聞こえる時期があります。発情期を迎えたメス猫やオス猫は、普段より大きな声で長く鳴いてアピールします。
猫は、尿・糞・皮脂腺からの分泌物などの香りから、いつ頃どんな猫が通ったかといった情報を嗅ぎ取ります。
避妊/去勢手術をうけずに発情期に入ると、メス猫は普段より匂い付けの回数や場所を増やします。その香りをたどったオス猫同士が出会うことで、けんかが始まります。
猫たちにとって、食事を奪われる心配もなくゆっくり食べることができるのは、とても大切なことです。
猫同士が向き合ったり並んだりした状態で食べることは、「隣の猫からいつ食事を横取りされるか」とストレスを感じる場面であり、けんかにつながる可能性があります。
猫の食事スペースは、背後を気にせず壁に背を向けて食事ができるような食器配置にしたり、そもそも食事を与える場所を分けたりするのが理想的です。
また、それぞれのキャリーで食べてもらうこともおすすめです。災害時にキャリー内で食事ができるようにするためのトレーニングにもなりますし、療法食などの、それぞれの猫で食事内容を分ける必要が出た際に役立ちます。
相性が悪い子同士では、どんなに時間が経ってもお互いにとってストレスであることに変わりはありません。食事に限らず、生活スペースもそれぞれ分けてあげましょう。
とても慎重な生き物である猫のけんかは、むやみに始まっているわけではありません。住み分けをしていくための大切なコミュニケーションとして、けんかをしている場合もあります。
下手に人が入ることで、猫同士の関係をこじれさせることもあります。猫同士のけんかは、大きな怪我にならないように見守りましょう。また、仲裁する際は、飼い主さんが噛まれたり引っかかれたりしないよう注意してください。
猫のけんかを防ぐためには、十分な数のトイレを用意したり食事場所を分けたり、お気に入りスペースをしっかり確保してあげたりするなど、けんかをさせない環境作りが大切です。
しかし、どんなに対応していても、じゃれあいが発展してけんかになったり、猫同士の相性の問題からけんかが起きてしまうことがあります。少しでも被害が小さく済むように対策をしておきましょう。
目を傷つけあってしまう可能性があるため、定期的に爪切りを行いましょう。猫同士の怪我はもちろん、仲裁した際に猫がヒートアップしていると、自分でもどうなっているかわからず、猫が飛び回ることがあります。
特に、後ろあしで蹴られると深く大きな傷がつきます。
愛猫が爪切りを嫌がって暴れる場合は無理に切らず、毎日1本だけ爪を切ってご褒美をあげることを繰り返しましょう。愛猫にとって、爪切りも飼い主さんとの楽しいコミュニケーションタイムにし、ゆっくり毎日実施していくことが大切です。
猫同士のけんかの場合、どちらか一方が執拗に追い掛け回すこともあります。逃げ込める場所も用意してあげましょう。1匹で閉じこもれる場所は大切です。
また、キャットステップやキャットウォークは一方通行ではなく、けんかが起きた際の逃げ道になるように2方向のルートを用意しておくとよいでしょう。
弱い立場の猫がトイレを利用するのを邪魔しようとする猫がいたり、苦手な猫と同じトイレを利用したくない猫がいたりします。けんかの後などは特に、使いたいトイレへの通り道にけんか相手がいてトイレを利用できなくなる事があります。
排尿を我慢することは、膀胱炎をはじめ泌尿器疾患につながります。どの猫たちもストレスなくトイレを利用できるよう、トイレはなるべく多く準備しましょう。
お家にスペースがあるならば頭数+1個にこだわらず、置けるだけ配置してあげることが理想的です。
猫同士のけんかを止める際は、お互いの気をそらしてあげることが有効です。おもちゃの音を鳴らしたり、オヤツを出したりして様子を見ましょう。
賢い猫たちは「どうやったらおやつをもらえるか?」を考えているので、けんかの度におやつを出して仲裁するのではなく、猫たちの様子をしっかり見極めて判断してください。
また、大きな声を上げて止めることはおすすめできません。繰り返すうちに、さらに大きな刺激が必要になりますし、大きな声をきっかけに飼い主さんとの関係性が壊れてしまう可能性があります。
けんかを止めた後は、なぜけんかになったかを検討して対策をすることも大切です。また、けんかによるストレスで、膀胱炎などの病気になる可能性もあります。健康状態に変化が出ていないか、しっかり様子を見てあげましょう。
けんかが終了して猫たちが落ち着いたら、怪我がないか触って確認しましょう。
猫は被毛に覆われているので、なかなか怪我を見つけることが難しいです。全身を触られることが苦にならないよう、おやつを上手に使って日ごろから全身触らせてもらえるようにしておきましょう。
目を開けにくそうにしている、猫自身が気にして舐めている、あしを床に着けないなど、普段と違うところがないかもよく観察してください。
痛そうにしている個所を見つけ、触って確認する場合は、反対側から確認します。
例えば右前あしを気にしているように感じたら、まずは左前あしを確認して何もないことを確認してから右側も触ります。痛い方を触ったらそのほかの部分を見せてくれなくなるためです。
異変を見つけたら、写真や動画を撮るなどして様子や場所の記録をしておくと受診がスムーズです。
傷口を見つけた場合、自己判断での消毒液や絆創膏の使用はやめましょう。絆創膏を貼ったことで皮膚の組織が悪くなり、小さな傷があし全体の炎症の原因となり場合によって断脚しなくてはならなくなることもあります。
誤った消毒により傷の治りが遅くなることがあるため、傷口を見つけたら速やかに動物病院を受診しましょう。
猫は傷の治りが早いため、傷口がすぐに塞がることも多いです。しかし、傷が塞がったのちに化膿して腫れてくることもあるため注意してください。
けんかによって噛まれた傷口に菌が入り、けんかの数日後に腫れや熱をもった部分が見つかることもあります。この場合も速やかに動物病院を受診しましょう。いつ頃けんかをしていたか伝えられるよう、けんかを確認した日など日常の記録を残すことも大切です。
四肢をしっかり触って変化がないか確認できるような関係づくりは傷の早期発見にもつながります。日々、少しずつ愛猫に触れる練習をしていくことも大切です。
けんかは極力避けたい猫たち。猫同士の関係にも配慮できた生活環境を提供しましょう。
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