【獣医師監修】犬の生理(ヒート)とは?期間や症状、犬の発情期の注意点を知っておこう
2019.01.24 作成

【獣医師監修】犬の生理(ヒート)とは?期間や症状、犬の発情期の注意点を知っておこう

獣医師

島村剛史

島村剛史

犬のヒートとは発情という意味で、交配のためにオスを受け入れる状態のことです。犬では出血を伴うため、生理と言われることもあります。妊娠の準備として通常生後6~10ヶ月頃から始まると言われています。今回は、犬を迎える前に知っておきたいメス犬の生理と発情期について紹介します。現在避妊をしないメス犬と暮らす飼い主さんも、改めて犬の生理(ヒート)について学びましょう。

もくじ

    犬のヒート(生理)とは

    【獣医師監修】犬の生理(ヒート)とは?期間や症状、犬の発情期の注意点を知っておこう
    (mariesacha/shutterstock)

    犬も私たち人間と同じように、赤ちゃんを産むための準備があります。そのひとつが、メス犬のヒート(生理)です。犬のヒート(生理)とは「発情出血」とも言われ、オスを受け入れる状態が整った「発情前期・発情期」に起きる現象で、避妊をしていない健康なメス犬に訪れます。

     

    人間の生理との違い

    人間の生理との違い
    (Lenar Nigmatullin/shutterstock)

    人間と犬の生理における大きな違いは「生理の仕組み(役割)」です。人間の生理は妊娠が成立しなかった場合に起こりますが、犬の場合は、妊娠の準備が整った場合に起こります。

    人間の場合

    人間の場合、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌によって子宮内膜が厚くなり、ある程度に達すると黄体形成ホルモン(LH)が分泌されて排卵が起こります。

    妊娠が成立しなかった場合はプロゲステロンが減少し、厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、排卵から約14日後に不要になった子宮内膜を排出するための生理が起こります。

    一般的には、約4週間(28-30日)を1サイクルとし、人間は毎月生理があります。

    犬の場合

    これに対して犬のヒート(生理)は、「発情出血」とも言われ、発情前期から発情期に起こります。発情出血が始まって約11.7日後に排卵が起こりますが、人間の生理とは異なり子宮内膜の剥離・脱落は起こりません。

    犬の「発情出血」とは?

    犬の子宮内膜が妊娠向けて厚くなり充血すると、陰部からドロッとした赤褐色の出血が見られるようになります。これが犬のヒート(生理)です。

    犬のヒート(生理)はいつから?期間は?

    犬のヒート(生理)はいつから?期間は?
    (Eve Photography/shutterstock)

    犬の初めてのヒート(生理)はいつ?

    通常、生後6-12ヶ月頃から始まると言われていますが、個体差があり、遅い子では生後1歳半頃に始まる子もいます。

    犬のヒート(生理)の期間は?

    発情前期に陰部からの出血が見られ、一般的には8日前後、長い場合は2-3週間ほど続きます。同時に、陰部が膨らみ始めるのも特徴の一つです。

    個体差はありますが、1ヶ月を超えても出血がおさまらないなど、普段よりやけに長い場合は、子宮の病気である可能性も考えられるため、動物病院を受診することをおすすめします。

    犬のヒートの時期は?

    犬の発情には季節性はないため、「春(3-5月)」と「秋(9-11月)」の年2回訪れるというイメージを持つ方もいますが、犬は季節に関係なく発情します。

    また、犬のヒート(生理)はそもそも人間の生理とはメカニズムが異なり、避妊手術をしなければ高齢になっても続きます。

    ただし、その子によっては出血量が少なかったり、犬が自分で舐めてしまい飼い主さんが気づかなかったりするケースも考えられますので、しっかり観察するようにしましょう。

    犬の発情周期

    犬の発情周期
    (atiger/shutterstock)

    犬は6~10ヶ月のサイクルで発情を繰り返すため、ヒート(生理)も半年から1年に1回となります。発情期間は小型犬では短く、大型犬では長い傾向があります。

    また、犬の発情周期は、(1)発情前期、(2)発情期、(3)発情休止期、(4)無発情期の4期に分けられます。それぞれの特徴を解説しましょう。

    1)発情前期

    発情前期とは、無発情期(発情していない時期)から発情期に移行する時期のこと。持続日数は個体差がありますが、平均すると8日ほどです。

    この時期には、外陰部の明らかな腫れ、充血、発情出血がみられます。陰部の腫れは発情前期の後半で最大となり、むくんで硬くなりますが、発情期に入ると柔らかくなります。膣分泌中の性フェロモンによってオス犬を寄せつけますが、まだオス犬からの交尾行動を受けいれません。

    日常生活の様子としては、落ち着きがなく、飲水および排尿回数が多くなる傾向があります。

    2)発情期

    オス犬との交尾を受け入れる時期で、持続日数は5~20日ほど。平均10日となっています。この時期には、メス犬はオス犬が近づくと立ち止まり、交尾を受け入れる行動が見受けられます。

    3)発情休止期

    オス犬との交尾を受け入れなくなってからの約2ヶ月間のことを言います。

    卵巣では黄体ホルモンが形成され、黄体機能により妊娠をしていなくても乳腺の発達、乳汁を分泌するようになります。この黄体機能は約2ヶ月続くため、この時期を「生理的偽妊娠」と言います。

    4)無発情期

    発情休止期に続く期間を無発情期と言い、次の発情前期までの4~8ヶ月を指します。犬の発情周期の大部分を占めるため、この長さによって発情周期の長さが決定されると考えられています。

    また、無発情期の卵巣は休止状態となり、機能的な卵胞も黄体も存在しません。発情前期開始1.5ヶ月前頃から陰部がわずかに大きくなりはじめ、この頃から卵胞の発育が始まると言われています。

    ヒート(生理)中の主な症状

    ヒート(生理)中の主な症状
    (Denis Prokofev/shutterstock)

    犬のヒート(生理)は、いわば発情状態を示しています。一般的に時期に関わらず、メス犬は、オス犬よりも性格が大人しいとされていますが、ヒート(生理)中には様々な症状が表れます。

    1)落ち着きがなくなる

    発情前期には、そわそわして落ち着きがなくなるといった様子がみられます。散歩へ行きたがらない場合も。ただし、これは生理的な行動なので、心配する必要はありません。

    アロマを使ったりマッサージをしたりするなど、犬がリラックスできるケアを心がけてあげると良いでしょう。

    2)マウンティングするようになる

    メス犬でも他の犬やぬいぐるみなどに陰部をこすりつけて、マウンティングをするようになります。これは、オス犬を受け入れる時期になったという証でもあります。

    3)元気がない・食欲が低下する

    ヒート(生理)中は、元気がなくなったり食欲が低下したりすることも。ごはんを食べないときは、トッピングをしたり香りのあるスープを加えたりするなど工夫をしてみましょう。

    愛犬が好きなものを加えるのもひとつの方法です。ただし、あまりにも食欲がないときは、病院で受診することをおすすめします。

    ヒート(生理)中の注意点

    ヒート(生理)中の注意点
    (Monica Martinez Do-Allo/shutterstock)

    ヒート(生理)中のメス犬は、オス犬にとって魅力的な存在です。散歩中に、オス犬が興奮をしてトラブルにつながることがあります。

    ヒート(生理)中のメス犬は精神的にデリケートな状態なので、興奮したオス犬につきまとわれると、立ち向かってケンカをしてしまうこともあります。

    散歩は他の犬と会わない場所や時間帯に行く、自宅の庭でのリフレッシュに留めるなど、工夫するようにしましょう。

    この時期はドッグラン、ドッグカフェ、ペットと泊まれる宿の利用も気をつけたいところです。

     

    オムツやマナーパンツの着用を

    オムツやマナーパンツの着用を
    (Firn/shutterstock)

    個体差はありますが、ヒート(生理)中は陰部からの出血を伴います。ソファやカーペットを汚してしまうことがあるので、オムツやマナーパンツを着用すると良いでしょう。

    最近では、小型犬や大型犬用など、各サイズごとのマナーパンツも販売されています。

    オムツやマナーパンツがすぐに脱げてしまう子には、犬用のサスペンダーを使用すると脱げにくくなります。

    また、オムツを利用する場合、人間の赤ちゃん用は吸収性が高くて丈夫で、リーズナブルなのでおすすめです。柴犬などの中型犬の子にはサイズが合うでしょう。しっぽの部分を十字にカットし”しっぽの穴”を作ってあげれば完成です。

    避妊も大切な選択肢

    避妊も大切な選択肢
    (Vershinin89/shutterstock)

    避妊手術をすると、様々なメリットがあります。

    1)ヒート(生理)が訪れなくなる

    2)乳腺腫瘍の発生率が低減する

    ※1歳齢未満に避妊手術を行った場合、乳腺腫瘍の発生率が低減するとされています。それ以降の避妊手術の場合、乳腺腫瘍の発生率が低減できるかは不明です。

    3)膣・子宮疾患(子宮蓄膿症など)の予防につながる

    愛犬がヒート(生理)によってストレスを感じる場合や、子どもを産ませる予定がない場合は、避妊手術を行うのも選択肢のひとつとして覚えておきましょう。

    避妊手術については信頼できる獣医師さんとよく相談し、ご家族でよく話し合って決めましょう。

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    著者・監修者

    島村剛史

    獣医師

    島村剛史

    プロフィール詳細

    所属 ふく動物病院(東京都国立市) 副院長

    略歴 1989年 和歌山県和歌山市に生まれる
    2008年 麻布大学 獣医学部獣医学科に入学
    2014年 獣医師国家資格取得
    2014年~ ふく動物病院(東京都国立市)に勤務
    2015年~ 麻布大学附属動物病院 腫瘍科研修医(現在:軟部外科腫瘍外科)

    資格 獣医師免許

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