人が定期的に爪を切るように、愛犬にも爪切りが必要です。トリミングサロンや動物病院、飼い主さんご自身でとご家庭によって爪切りを行う場所はさまざまですが、爪切りをすることの意味、正しい切り方、頻度などを知り、適切な愛犬のケアをしましょう。
もくじ
犬も人も、時間の経過とともに爪が伸び、伸びすぎると爪が邪魔になってしまいます。
犬の足の爪が長くなると、肉球がうまく地面に付かず歩きにくくなっていきます。カーペットや隙間などに爪をひっかけやすくもなるため、爪が折れたり、抜けたりし、出血や場合によっては骨折につながることもあります。
長期的に放置し続けると、さらに爪が伸びて指や関節が正常な位置を保てず、骨や関節の変形を起こしたり、爪がぐるっと一回りして肉球を刺したりする危険もあります。
また、人の親指に相当する狼爪(ろうそう)は、地面に接地していないため、床で削られることがありません。伸びるのが早い傾向があり、引っかかりやすく、爪切りを忘れやすい部位でもあるため、注意が必要です。
※狼爪は、ある犬もない犬もいます。また、退化し狼爪に骨がない犬も多いです。
犬の爪切りは一般的に、月に1回程度といわれています。しかし、体重が重く、散歩の時間が長い大型犬や、アスファルトなど硬い地面を歩いている犬は、爪が削れてほとんど切る必要がない子もいます。
犬のライフスタイルや個体差もあるため、定期的に爪の長さをチェックして判断しましょう。
フローリングを歩く足音が大きくなった、歩きにくそうに感じる、といったことから爪を切ろうと思う飼い主さんも多いです。
犬の爪の中には血管と神経が走っており、深爪をすると出血をしてしまいます。ピンク色をした部分が血管のため、切らないようにしましょう。
短くしすぎると、直後の散歩や激しい動きによって、断面から血がにじんでくることもあります。血管や神経のギリギリまで狙って切るというよりも1mm程度は残しておいたほうがよいでしょう。
爪切り後に、まっすぐ立たせて爪が地面にギリギリつくか付かないか程度の長さが適正な爪の長さです。
あまりにも爪を切らない期間があると、爪の中にある神経や血管が伸びてきてしまい、自宅やトリミングサロンでは、適切な長さまで切れない場合があります。その際は、動物病院での処置が必要になります。
爪切りにも種類があります。扱いやすいものを選びましょう。
切れ味がよく、素早く爪を切れます。動物病院では、ギロチンタイプを使用していることが多いです。
子犬の爪では、はさみタイプがよく利用されています。
切りたい部分にギロチンタイプの爪切りが入らない、巻き爪などで利用されることがあります。
切った後の爪は端が尖り、抱っこをするときに飼い主さんが痛みを感じやすくなります。カーペットや洋服にひっかかることもあるため、やすりもかけるようにしましょう。電動のものも市販されています。
Kwik Stop(クイックストップ)という止血剤が有名です。出血したときのために備えておきましょう。
爪に対して垂直にカットすると、爪の端が鋭く、深爪になりやすいです。爪をカットする際は、神経や血管が走っている中央が一番長い状態で、周囲に角度をつけて角をとるようにカットしましょう。
犬の歩き方のクセによって、爪が斜めに削れている場合があります。爪の左右の長さが同じになるように整えましょう。
爪を切る衝撃や、やすりでこする振動が嫌いな犬もいます。まずは、やすりを爪にあてることから始めましょう。電動やすりの場合は、音を怖がる犬もいるため、スイッチを入れるところから練習が必要な場合があります。
やすりをかける際は、爪の根元をもって、なるべく指に振動を掛けないようにしましょう。
足先を触られることが苦手な犬は多いです。小さいころから足先を触り、日常的に爪、指の間、肉球などをチェックし、触られることに慣れてもらうことが大切です。
また、爪切りができたらご褒美を与え、褒めることで、「爪切りは楽しい時間」と記憶させましょう。しつけの一環です。
爪が黒い犬の場合、ピンク色の血管を認識することは難しいです。ライトを当ててみるのもひとつの方法ですが、爪を細かく切ってみてください。血管や神経が近くなってくると、爪の断面の中心部分の色が変わります。
この色の変化により、ちょうどよい爪切りの長さに切れたと判断できます。
爪を切るために片足を上げると、犬はバランスを崩しやすくなります。バランスを保とうと犬が動こうとするため、安定した保定が必要になります。
関節には可動域があるため、犬に無理な体勢をさせると嫌がります。犬の関節がどこまで曲がるのか確認をしてから、爪切りに臨みましょう。
基本的に、爪切りは犬にとって嫌いな行為です。そのまま受け入れてくれる犬もいますが、嫌うのが当たり前だということをまず念頭に置かなければなりません。
爪切りを嫌がる場合には以下のポイントを押さえましょう。
多くの場合、爪を切る瞬間の衝撃を嫌がりますが、足先を触ることにすら抵抗を示す犬もいます。嫌いなことをやり続けると、そこに手が近づくだけでも警戒するようになり、より「嫌い」が強化されていってしまいます。
まずは、どこまでであれば許容してくれるのかを知り、その許容範囲を少しずつ広げていく必要があります。
1日ですぐに許容範囲が広がるわけではなく、数週間、場合によっては数か月以上必要な場合もあります。犬が嫌がらない範囲で何度も練習を繰り返しましょう。
許容範囲を広げるためには、「何も起こらない」「痛くない」「嫌なことじゃない」を繰り返していく必要があります。その際、おやつなどのご褒美があるとより有効です。1本爪を切るごとに、おやつを与えるのもよいでしょう。
靴や靴下をはかずに歩く犬たちは、足先、足の裏にトラブルを抱えることが多くあります。日ごろからチェックとケアを行いましょう。
指と指の間の毛が、肉球を隠すくらいに伸びると、地面をとらえる力がなくなり、足を滑らせてしまいます。足腰に負担をあたえ、場合によっては怪我につながるため注意しましょう。
また、木の枝などが刺さっていたり、小石が挟まっていたりする可能性もあります。発見が遅れることにもなるため、足の裏の毛はしっかりと刈っておきましょう。
足の裏の毛刈りは、飼い主さんでもできますが、指の間の毛をバリカンで刈るにはテクニックが必要です。出血の可能性が非常に高い処置のため、動物病院やトリミングサロンで処置することをおすすめします。
散歩中にできた目に見えない細かい傷から、爪と指先の間に細菌感染を起こすことがあります。お散歩の後は足を洗い、清潔な状態を保ちましょう。
散歩中に足の裏を怪我することはよくあります。足の裏に傷や出血がないか目視でチェックするとともに、以下の様子がないか確認をしましょう。
足の裏に何か刺さっている場合は、その場で抜くと大量に出血する場合があります。犬を歩かせないようにして動物病院を受診しましょう。
細菌感染だけでなく、免疫介在性の病気や栄養素の欠乏、肝臓の疾患などによっても
肉球や足回りの皮膚が炎症をおこしたり、固くなったりしているといった異常がでることがあります。いつもと変わりのない足の裏をしているかチェックしましょう。
爪の上側が削れているのは足を引きずっている証拠です。神経や運動器に病気を持っている可能性があります。
足先や指の間の毛の色が茶色くなっていませんか。多くは、自ら足を舐めることによって唾液で染色されたことが原因です。かゆみや痛み、違和感をもっている可能性があります。
何かに爪を引っ掛けて、爪を折ったり割ったりすることもあります。グラグラと動く爪は残すことが難しく、痛みも生じるため、動物病院での処置が必要です。
根元から切断するような処置になっても、根元にある爪を生み出す細胞(爪母)に損傷がなければ、時間がたてば再び同じように生えてきます。ただし、爪母に損傷があると、爪が生えてこなくなったり、曲がった爪や細い爪などが生えてきたりする可能性があります。
先端を少し切りすぎた程度であれば、止血剤を出血箇所につけて、ティッシュペーパーなどでじっと抑えて待っていれば、止血できます。根元から誤って切ってしまった場合は、出血箇所を抑えてすぐに動物病院へ受診してください。
動物病院やトリミングサロンでは、いとも簡単に爪を切っているように見えるため、自分でもできるのではないかと考える飼い主さんは非常に多いです。
しかし、保定(動かないよう抑えること)や素早く爪を切るには技術が必要です。また、犬自身も飼い主さんが相手で、爪を切る場所が自宅だと、大人しくしてくれないことがあり、より難易度が増します。
嫌な思いや痛い思いをさせてしまうと、さらに爪を切らせてくれなくなるだけでなく、足先すら触らせてくれなくなることもあるため、無理はせずプロの力を借りましょう。