犬達がペットから家族の存在になり、今まで以上にケアをする飼い主様が増えてきました。それは愛犬の歯磨きもしかりです。犬達も歯磨きを怠ると、口臭や歯周病になってしまいます。 今回は、犬が歯磨きをするとなぜ良いのか。歯磨きがもたらす効果についてお話しをします。 (執筆:獣医師・堀江志麻)
もくじ
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歯磨きの重要性は、今ではたくさんの飼い主様に認識されています。多くの方が家の中で愛犬と一緒に暮らされているため、犬との距離も近くなったからではないでしょうか。
昔に比べて近年では、愛犬の「歯・お口の悩み」で受診される方が増えているように感じます。
特に多いお悩みは、愛犬の口臭です。愛犬のお口が臭う場合、どのようなことが考えられるのでしょうか。
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もしおうちの子に“少しでも”口臭があるようでしたら、見えていない歯周ポケットで感染や炎症が起きている可能性があります。いわゆる歯周病です。歯周病のないお口の中は本来無臭なのです。
また、歯周病は症状が重度に陥ると命に関わる危険性もあります。「歯の病気くらい…」と思わず、しっかり歯磨きをして毎日ケアをすることが非常に大切なのです。
では、その歯周病はどのように進行するのでしょうか。
歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。歯ブラシなどのお口のケアが不十分な場合、歯と歯肉の間、いわゆる歯周ポケットに多くの細菌(歯垢)が停滞し、まず歯肉炎を引き起こします。
歯肉炎は歯肉が赤く腫れるという症状が出るのですが、口の中は飼い主様には決して見やすいものではなく、犬達も痛みをほとんど感じないため、飼い主様が気付くことは難しく、放置された結果、進行していきます。
歯周ポケットは健康な小型犬では通常1−2mmの深さですが、歯肉炎が進行すると歯周ポケットはより深くなっていき、嫌気性菌といわれる強い炎症を引き起こす細菌群が増加し歯肉炎から歯周炎へと悪化して行くのです。
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つづいて、歯周病になると一般的にどのような症状が出やすいのかをお話しします。
歯周病は歯を支える土台(歯槽骨)を溶かすため、歯がぐらつき始め、最後には抜け落ちてしまいます。
他にも、犬の上顎の歯の根っこはすぐ上に鼻が通っているため、その炎症が鼻にまで到達し、くしゃみや鼻汁を慢性的に引きおこします。また、隣接する頬が炎症によって腫れるなどの症状も見られます。
全身の免疫力が低下したシニア犬では、口腔内環境が悪化し、歯肉が化膿する症例も増えます。
その他にも歯周病は、心疾患、脳血管疾患、糖尿病など様々な疾患に関連していることがわかっており、口腔内に特異的な細菌が、心臓や肺など、その他の臓器から発見されていることから、全身に影響を及ぼすことも懸念されます。
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特に小型犬は、大型犬と比較して顎の大きさに対して歯が大きいため(歯が近接している)歯周病になりやすい傾向にあります。
また、パグやフレンチブルドッグ、シーズーなどの短頭種の子達はその骨格上オーラルケアが重要です。
通常、鼻の長い長頭種では、どの歯も一列に正しく並ぶのに対して、短頭種の子達は鼻が短いため、顎に歯が入りきらない状態になっています。
入りきらない歯は、横に捻転したり、2列になったりして入り組んでいるため、その隙間に歯垢や歯石が付着し重度の歯周病となることがあるのです。
重度の歯周病は、放っておくと大変危険です。歯磨きなどの毎日のケアが非常に大切ですが、愛犬の口臭が治らない場合や痛がっている場合は病院で受診するようにしましょう。
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経験上、犬達の歯科処置をした後、性格が穏やかになるケースや食事に対して興味が強くなるケース、活動性が増すケースなどが見られます。犬達は歯の疾患に対して、何らかの違和感やストレスを日々抱えていることがわかります。
歯周病は飼い主様が予防できる疾患です。また、一度破壊された歯周組織は元には戻りません。ですから、予防、早期の発見、治療、メンテナンスがとても重要になります。
飼い主の皆様には、毎日のオーラルケアによって、愛犬の歯周病をぜひとも予防していただきたいと思います。そのひとつとして、愛犬の歯磨きはとっても大事なのです。
愛犬が歯磨きを嫌がる場合や上手に磨けているか不安な方は、病院で受診されることをオススメします。愛犬たちは自分で歯を磨くことができませんから、飼い主様が愛情を込めて、きちんとケアをしてあげてくださいね。