言葉を話せない猫たちにとって、鳴き声は大切なサインのひとつ。鳴き声の様子からからある程度は、猫の状態をうかがい知ることができます。今回は猫の鳴き声から、その気持ちをひも解いてみましょう。
猫が鳴く理由は?
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猫の鳴き声といえば「ニャー」ですが、よく聞いてみると鳴き声には様々なバリエーションがあります。鳴き声は猫の気持ちや要求を知るための大きなヒントですが、そもそもなぜ猫は鳴くのでしょう?
【理由①】飼い猫と野生の猫の違い
<野性の猫が鳴く理由>
野生の猫は、実はほとんど鳴きません。外敵から身を守り、獲物を確実に捕らえるためには、自分の存在に気付かれないように振る舞ったほうが合理的だからです。
それでは猫同士のコミュニケーションはどうしているのかというと、ボディランゲージやニオイで十分取れているのです。もし野良猫が鳴いていたら、発情期や猫同士のケンカがほとんどです。
<飼い猫が鳴く理由>
一方、飼い猫はよく鳴きます。これは言葉でコミュニケーションをする人間と暮らしているためです。
ご飯がほしいときや遊んで欲しいとき、鳴くことで飼い主さんの注意を引いているのです。猫に話しかける私たちのマネをしていると思うと、微笑ましいですね。
【理由②】子猫と成猫の違い
大人の猫に比べると、子猫はとてもよく鳴きます。「ミューミュー」という小さな鳴き声には、誰もがキュンとせずにはいられませんよね。
子猫がよく鳴く理由は、1匹だけでは生きていくことができないから。特に生後1ヶ月頃までは、食事だけではなく排泄や保温に至るまで、常に母猫に世話をしてもらっています。
「おなかすいた~」「寒いよ~」「怖いよ~」などの要求を訴えるため、一生懸命小さな体で鳴いているのですね。
子猫はよく鳴きますし、大人の猫のような仕草や表情はありませんので、人間が子猫の鳴く理由を把握するのは難しいかもしれません。
生後間もない子猫のお世話をするときはこまめにケアをして、鳴き声でわからない分をカバーするようにしましょう。
鳴き声からわかる猫の気持ち
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1)甘え・要求・親愛などを表現する鳴き声
・「ニャッ」という短い鳴き声
【挨拶】
猫に話しかけたときなどに、発せられるこのような鳴き声は、いわば挨拶。名前を呼ばれたときや優しく撫でてもらったときに鳴く猫もいます。
基本的には親愛の表現ですが、強い口調のときは嫌がっている可能性も。構いすぎていると感じたら、すぐに自由にしてあげましょう。
・「ニャーン」「ニャーオ」という少し長めの鳴き声
【甘えたい・遊んで欲しい】
甘えたいときや遊んで欲しいときに聞かれます。子猫が母猫を呼ぶときにも似たような声で鳴くことがあり、信頼している相手に向けた鳴き声と言えるでしょう。
【大好き】
誰か特定の人に呼ばれたときだけ高めの声で返事をしていたら、その人を特に大好きな証拠です。
【お願い】
もし食器の近くで「ニャーン」と鳴いたら「お腹が空いたよ」という要求かもしれません。
窓やドアのそばであれば「外に出たいよ」と言っているのかも。要求と言っても怒りのような強い感情ではなく、お願いという感じですね。
・「ミャーオ」「アオーン」という低い鳴き声
【何かを強く訴えている】
猫が低い声で鳴くときは、何か強く訴えたいことがある可能性があります。どんなシチュエーションかによって、訴えたい内容を推測しましょう。
兄弟猫に向かって低い鳴き声で鳴いている場合は「そこをどいて!」と訴えている可能性が。排泄をするときに低い声で鳴く場合は、敵に狙われていないか真剣に見張っていることが考えられます。
猫が低い声で鳴いているときは、不安や要求を抱えているケースが多いので、いつも以上に気にかけるようにしましょう。
・「キーキー!」「ギャーギャー!」という高い鳴き声
【興奮している】
耳が驚くほど高い声で鳴いている場合は、猫が興奮している可能性があります。大好きな人に会ったときや、お気に入りのおもちゃを見つけたときなど、気持ちが最高潮に高まっているときにこういった鳴き声で感情をあらわします。
愛猫が喜ぶ姿は見ていて微笑ましいですが、過度な興奮はストレスにつながりますので、興奮させすぎないように気をつけましょう。
2)不安・驚き・威嚇などを表現している鳴き声
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・「ニャオーン」「ウミャー」という高い鳴き声
【不安を感じている】
高い鳴き声は甘えや興奮の表現ですが、不安を感じているときにも高い声で鳴く場合があります。高音で鳴き続けていたら「助けて~!」と助けを求めているのかもしれません。
家族がお出かけをして姿が見えなくなったときなど、不安でこのような鳴き声になることがあります。留守番カメラを設置するなど、留守中の様子も見られるようにしておくと安心ですね。
・口を閉じて「ンー」「ウー」という鳴き声
【威嚇・警戒】
見知らぬ人や不審な物を警戒しているとき、おもちゃやおやつをくわえているときによく見られるこの姿は、近寄らないでほしいときの威嚇です。
このときにむやみに近寄ったり、くわえているものに手を伸ばすと、攻撃される可能性がありますので注意してください。
・「シャーッ!」「フーッ!」と激しく鳴く
【強い威嚇・拒絶】
猫同士のケンカ中などに聞かれる、強い威嚇や拒絶の鳴き声です。しっぽが膨らみ、毛を逆立てていると怒りがよくわかりますよね。
そこまで敵意を持っていない相手でも、機嫌が悪いときに「自分の縄張り」と認識している範囲に入ってくると、このような鳴き方で威嚇することも。
敵意をむき出しにしている状態なので、こんなときはそっとしておくのが鉄則。下手に触ろうとするとこちらがケガをしかねません。
・鳴き止まない
【ストレス】
愛猫が鳴きやまないときは、ストレスが溜まっている可能性があります。猫は狩りをする動物なので、その行動が不足すると欲求不満になってしまいます。
近年では、室内で猫と暮らす家族も増えてきました。清潔が保たれた室内で暮らすことは猫にとっても幸せなことです。
しかし、「生き物を狩る」という猫本来の習性を奪わないように、狩りごっこができるおもちゃを与えてあげるなどの工夫をしてみてください。
3)変わった鳴き声
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・ゴロゴロ音
【ご機嫌・自分を落ち着かせている】
猫が喉をゴロゴロと鳴らす音は、ご機嫌なときのサインとして有名ですね。心が満たされてリラックスしているとき、このような音が聞かれます。喉の奥の軟口蓋という部分が感情に反応して動き、このような音を立てているそうです。
このゴロゴロ音は生まれて数日の子猫も出すことができます。ゴロゴロ喉を鳴らすことで自分が元気で満足していることを伝え、母猫とコミュニケーションを取ると言われています。
また体調が悪いときやストレスのあるとき、自分を落ち着かせたりつらさを緩和する効果もあるそうです。
・サイレントニャー
【母猫と同じくらい信頼している】
いつもと同じ表情で鳴く仕草をしているのに、「ニャー」という声が聞こえない…。「声が出ない病気かも!」と驚く飼い主さんもいるかもしれませんが、実は人間には聞こえない高周波の声で鳴いているのです。
英語圏でも“Silent Meow”と呼ばれ、親しまれているそうですよ。これは母猫に向けて子猫がする鳴き方なので、もしサイレントニャーをしていたら相手を母猫と同じくらい信頼して甘えている証拠です。
・クラッキング
【獲物を狙って奮闘中】
「ケケケッ」「カカカッ」「クククッ」というような鳴き声が聞かれたら、その猫は狩猟の真っ最中。獲物を狙って興奮し、なかなか捕まえられず、イライラしているときにこのような鳴き方をします。
飼い猫でも窓の外にいる鳥や虫、おもちゃを相手にクラッキングを発する姿が見られますよ。
猫の鳴き声は、感情をあらわす大切なサイン。とはいえ、シチュエーションによって訴えたい内容は異なります。鳴き声だけで気持ちを判断するのではなく、そのときの状況も踏まえて気持ちを読みとるようにしましょう。
こんな鳴き方には注意!病気の可能性も
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もし普段と違う様子に加えてこんな鳴き方が見られたら、猫に異常がないかをよくチェックしましょう。もしかしたら獣医師などの専門家に相談した方が良いサインかもしれません。
【注意したい鳴き声①】声がかすれている
【喉が炎症を起こしている】
サイレントニャーもかすれ声に聞こえることがありますが、普通の鳴き声がかすれていたら喉が炎症を起こしているのかもしれません。
【猫風邪】
もし、くしゃみや鼻水などの症状もあれば、猫風邪にかかってしまったのかも。完全室内飼いの猫はあまり猫風邪にかかりませんが、飼い主さんの服や靴などについたウィルスから感染してしまうこともあります。
様子を見て、長引いたり症状が重いようであれば受診したほうが良いでしょう。
【留守番中にずっと鳴いていた】
風邪の症状がなく、留守番の時間が長い猫の場合は、飼い主が留守にしている間に鳴き続けているのかもしれません。
基本的に留守番の間、猫は寝ていることがほとんどですが、いつもより留守番の時間が長くなったりすると不安を感じることも。気になったときは、普段より意識してスキンシップを取ってみてください。
【注意したい鳴き声②】苦しそうに鳴く
もし愛猫が苦しそうに大声で鳴いていたら、どんなときによく鳴いているのか、他の症状はないかを確認しましょう。猫は自分の体調不良に気付かれないようにする生き物ですので、苦しそうに鳴くのはかなりつらい状態だと考えられます。
【排泄のとき】
例えば排泄のときに痛そうな鳴き声をあげていたら、泌尿器系のトラブルの可能性があります。猫は結石などの尿路疾患が多い生きもの。血尿の有無や飲水量の変化、排泄の回数などを確認しましょう。
【ご飯のとき】
食事のときに今までと違う鳴き方をするなら、消化器系にトラブルがあるのかもしれません。食事量や便の様子をチェックして、異常がないか見てください。
他にも息が荒い、よだれが出ている、体のどこかを痛そうにしている、といった様子が見られた場合は、できるだけ早く受診したほうが良いでしょう。
【注意したい鳴き声③】異常な行動と共に鳴く
身体のトラブルではなく、脳神経系の異常によって急に鳴くことがあります。もし以下のような症状が見られたら、すぐに受診しましょう。
- 立つことができない
- まっすぐに歩けない、歩いていてもすぐに倒れてしまう
- 目が見えにくい、耳が聞こえにくい様子がある
- けいれん発作(ガタガタ震える、硬直、大量のよだれ)がある
シニア猫の場合、認知症の可能性もあります。忘れっぽくなったり、性格が攻撃的になったり、といった症状が見られる場合は、獣医師に相談してみた方が良いでしょう。
なかなか鳴きやまない…上手な猫のしつけ方
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ご飯や水などが足りていて、トイレもキレイ。発情期というわけでもないし、健康診断でも問題なし。それでもしつこく鳴く場合は、飼い主さんに甘えている可能性が高いでしょう。夜中に鳴くなら、家族が寝てしまって退屈なのかもしれません。
「遊んでよ~」「おやつ欲しいな」などと要求してくるのは、飼い主さんへの愛情と信頼の証ですが、メリハリを大事にしたいところ。要求にいつも応えていると、猫も際限なく甘えるようになってしまいます。
生活にメリハリを。おやつを使って学習させる
生活にメリハリをつけるために、遊ぶ時間には思いっきり遊んであげて、寝る時間やご飯の時間には遊ばないことを徹底しましょう。このとき、猫がうるさく鳴いているときに遊び始めないこと。「鳴けば要求を聞いてくれる」と勘違いさせてしまうからです。
甘えて鳴いているときは無視をして、静かにしているときに遊びやおやつといったご褒美をあげる。そうすることで、徐々に猫も学習していきます。
かわいい鳴き声を聞いても、甘えさせたい気持ちはぐっと我慢!家族にも協力してもらって、一貫した対応を取るように心がけましょう。