猫をたくさん飼いたい!可愛い猫たちに埋もれて生活したい!猫飼いにとって夢のような話ですが、ちょっと待ってください。何事も準備が大切です。今回はそんな夢の「猫の多頭飼い」についてお話します。
もくじ
(Borkin Vadim/shutterstock)
猫を飼い始めて落ち着いてくると、次第に「留守番の間も寂しくないよう、遊び相手がほしいな」「たくさんの猫に囲まれたいな」と思う方も多いでしょう。または野良猫を拾ったりして、急に猫を保護することになる場合も。
実際に“猫屋敷”なんて呼ばれるほど、たくさんの猫が幸せに暮らしているおうちもあります。
しかし、基本的に猫は縄張り意識が強く単独行動を好む、独立性の高い生きもの。多頭飼いをいざ始めてから「こんなはずじゃなかった!」とならないよう、よく考えて準備しておくことが肝心です。
飼育費用(食費や医療費)は飼っている頭数ぶんかかりますし、それぞれの猫が単独で過ごせる住環境も必要です。頭数が増えれば、あまり負担に思っていなかった毎日のお世話も、体力的に大変になる可能性があります。
厳しいようですが、「やっぱりお世話しきれない…」となってしまわないよう、事前によく考えて判断しましょう。
新しい猫を迎えようと思ったら、まず考えてほしいのはスペースの確保。猫にとってプライベートな空間やひとりの時間は、とても大切なものです。それぞれの猫が安心してくつろげる場所を準備してあげましょう。
必ずしも1頭に1部屋必要なわけではありませんが、トラブルがあって隔離しなければいけないケースも考えておくと安心です。高さの異なる台やキャットウォーク、隠れられるようなキャットタワーなどを活用し、落ち着けるスペースをたくさん作ってあげてくださいね。
猫のトイレは「猫の数+1個」が理想。最低でも1頭につき1個は用意しましょう。猫は汚れているトイレを嫌うため、トイレの数が少ないと排泄を我慢して病気になってしまったり、トイレでないところで排泄してしまったりします。
トイレが複数ある、というのはなかなかスペース的に厳しいかもしれませんが、できるだけ「猫の数+1個」を用意してあげましょう。
それが難しい場合、とにかく清潔に保ち、こまめに掃除をすることです。
大げさなようですが、トイレのことだけでなく部屋の掃除をしたり整理整頓したりするのは、猫たちの独立性と生命を尊重することにつながります。「環境を整える」のは飼い主さんの役目であり、愛情そのものなのですから。
(Marian Weyo/shutterstock)
猫の独立性の尊重は、トイレだけでなく食事面でも大切です。「うちの猫たち」をひとくくりにしないこと。それぞれ独立した存在なのだ、と飼い主さんが肝に銘じなければなりません。
そのために、ごはんは大皿にまとめて盛るのではなく、それぞれの食器を用意して「自分のごはん」を確保できるようにしましょう。ごはんをあげるタイミングは一緒でも構いません。
他の猫と食事をすることで、「ごはんを取られるかも!」と不安になったりケンカになってしまうかもしれませんので、最初のうちは用意する場所を離しておいたほうが安心です。
逆方向を向かせて食べさせて、他の猫のごはんが目に入らないような工夫するのも良いですね。食べるのが遅い猫から先に与えると、先に食べた猫が邪魔をするトラブルを避けられます。
また、食器を分けておくことで一頭ずつの食事量も把握しやすくなり、健康チェックに役立ちます。ごはんの内容も、年齢や体調に合ったものをそれぞれに与えてあげましょう。食は健康の基本。用意する側としては手間がかかりますが、愛猫のためにそれぞれに合ったごはんを用意しましょう。
新しい猫を迎え入れたいな…と思った段階で、一度先住猫の健康チェックをしておきましょう。感染症やノミ・寄生虫はもちろん、何らかの持病が見つかったらそのケアが必要になりますし、環境の変化によるストレスが悪影響となる場合も。
もし問題が見つかったら、新しい猫を迎え入れるタイミングや環境を見直すことをおすすめします。
そして新入り猫にも必ず感染症やノミ・寄生虫のチェックを行いましょう。もし野良猫や捨て猫を保護したときは、家の中に入れる前に動物病院に連れて行って検査してもらいます。チェックが済むまでは、先住猫と絶対に接触しないように気をつけてください。
(WilleeCole Photography/shutterstock)
楽しい多頭飼い生活を送るためには、環境以外にも様々なコツやポイントがあります。どんな工夫があるのか見ていきましょう。
多頭飼いがうまくいくかどうかは、やはり猫同士の相性がとっても重要。どんな猫同士ならうまくいきやすいのでしょうか。
「子猫同士」・「若い猫×子猫」
一般的に相性がいいと言われるのは「子猫同士」「若い猫(5歳くらいまで)と子猫」。子猫同士はまだ縄張り意識もありませんので、じゃれ合ううちに仲良くなれるでしょう。先住猫が成猫であっても、子猫は敵と見なされにくいので、スムーズに受け入れてくれるケースが多いです。
「成猫(オス)×成猫(メス)」
また「成猫(オス)と成猫(メス)」の組み合わせも、子猫同士ほどではありませんが、仲良くなりやすいパターン。ただし繁殖を考えていないなら、去勢・避妊手術は必ず行いましょう。
そしてお互いの性格が似ていることもポイント。猫好きな猫同士であれば最高ですが、もし先住猫が一匹狼タイプなら新入り猫も同じタイプがオススメです。お互いに干渉し合わず、大人びた関係を築きやすいでしょう。
「子猫×シニア猫」
年齢差が5歳以上になると活動量がかなり異なるので、「子猫とシニア猫」のような組み合わせは避けたほうがベター。元気な子猫がシニア猫のストレスになってしまい、病気の引き金になってしまうこともあります。
「成猫のオス同士」
「成猫のオス同士」も、ケンカなどの問題行動が起きやすいので、避けたほうがいいでしょう。成猫は既に個性や縄張り意識が確立しており、オスは特に縄張り意識が強いので、仲良くなるのはなかなか難しいようです。
もし相性が悪い組み合わせであっても、事前にわかっていれば生活エリアを離すなど工夫することができますし、次第に慣れて仲良くなるケースもあります。
( Medvedev Andrey/shutterstock)
いよいよ猫同士の顔合わせ。第一印象はとても大きいですから、ここは失敗したくないポイントですよね。対面前に行ってほしいのは、先住猫の性格を改めて考えること。新入り猫がやってきたら、どんな反応をしそうですか?
攻撃、逃亡、硬直、無視……と、様々なケースが考えられます。愛猫が取りそうな行動を思い浮かべてシミュレーションしておくと、本番のときに対応しやすくなりますよ。
<ステップ1>別々の部屋で生活させる
最初の数日~1週間、新入り猫はケージなどに入れて別室で生活させましょう。もし新参猫の視界に先住猫が入ってしまうようなら、布などで目隠しを。
こうすることで、新入り猫が新しい環境に慣れることができます。健康チェックなどが済んでなければ、このタイミングで行ってしまいましょう。
<ステップ2>お互いの気配を感じさせる
双方の匂いがするタオルやおもちゃを近くに置いてみたりして、お互いの気配を感じられるようにします。「いつもと違う匂いがするぞ?」と、心の準備ができるでしょう。
仲良しの猫同士は体をこすりつけて匂いを交換しますから、相手の匂いがついているタオルで体を撫でてあげたりするのも良いかもしれませんね。
<ステップ3>ケージ越しで対面させる
初めて対面するときは、必ずケージ越しにしましょう。ケンカになってしまったとしても、ケージに入っていればケガを避けることができます。
まずは新入り猫が入ったケージを先住猫がいる室内に置き、先住猫が自分から興味を持って近付くのを待ちます。もし威嚇などが見られても、お互いに大きなストレスになってないようであれば、自然な行動として見守りましょう。
対面後はケージを別室に戻すか、同室でも目隠しをするなどして、どちらも落ち着ける環境を作ってあげてください。
<ステップ4>ケージなしで触れ合わせる
ステップ3を何度か行ううち、お互いに慣れてくるはずです。先住猫が特に躊躇もなくケージまわりでくつろいだりするようになればしめたもの。そのタイミングで新入り猫をケージから出してあげてください。
ただし、まだケージは片づけないで。ケージは新入り猫にとって、安心できる場所ですので、自由に出入りできるようにしておきましょう。
ここで威嚇などのアクションがあれば、また新入り猫をケージへ。何度でもそれを繰り返してみます。「離れている時間」と「接触する時間」を上手に組み立てていきましょう。
初めは険悪な様子でも徐々に慣れてくる場合が多いので、最低でも2週間は様子を見るようにしましょう。逆に、問題ないように見えても2週間はケンカなどに気をつけること。留守にする間は必ず新入り猫はケージに入れておきましょう。
「大変、ケンカしてる!」と慌てることがあるかもしれませんが、じゃれ合っているだけの場合もあるので、まずは落ち着いて様子を見ましょう。ケガをするほどではないなら、猫同士に任せることも必要です。
そのためには、ケンカのときにそれぞれが逃げられる場所を確保しておきます。子猫には成猫が入れないような狭い場所を、成猫には子猫が登れないような高い場所を。
日頃の行動をよく観察して、それぞれの猫が好む隠れ場所がどこかも把握しておきましょう。
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あまりにケンカが頻繁に起きるようであれば、顔合わせのステップをひとつ前に戻してしばらく時間をおきましょう。
食事やトイレはもちろん、部屋も別々…となると飼い主さんの負担は大きくなりますが、焦りは禁物。猫には縄張りを守るという本能がありますから、先住猫が警戒するのは当然のことです。
同じ部屋で過ごせるようになるまで数ヵ月かかることもありますが、無理に進めてしまうと大ケガをしてしまったりストレスが病気に繋がる危険性も。
とはいえ、猫同士の関係は、人間が改善できるものではありません。愛猫たちの健康や安全が守られる環境を整え、それぞれへの愛情を注ぎながら、焦らずゆっくり見守りましょう。
(kudla/shutterstock)
とにかく先住猫を尊重し、遊びもごはんも先住猫を優先するようにしましょう。「えこひいきでは?」と思うかもしれませんが、先住猫が落ち着いていることは多頭飼いを成功させるために大切なポイントです。
大好きな飼い主さんが他の猫を連れてくることは、例えるなら配偶者が突然愛人を連れてきて「一緒に暮らそう!」と言い出したようなもの。それくらい大きなショックを受けていると理解し、今まで以上に気を配って愛情を注いであげてください。
環境が大きく変化したのは、当然ながら新入り猫も同じです。新しい環境に慣れるまでは、安心できるケージで過ごせるようにしてあげましょう。
新入り猫が子猫の場合は、新しい環境や先住猫にも比較的慣れやすいですが、体力が少なく疲れやすいことに注意。
成猫の場合は警戒心が強く、新しい環境に慣れるのに時間がかかる傾向があります。先住猫だけでなく、飼い主さんに対しても威嚇などの行動が現れることもよくあることです。
どちらも猫のペースに合わせて、最初のうちは遊んだりスキンシップを取るのは控えて。慣れてきてからも、短時間で切り上げるように意識したほうが良いですね。
飼い主さんが細かく気を配り、顔合わせをゆっくりステップアップしていったとしても、猫たちがストレスを感じてしまうことはあります。
ときには、「毛づくろいのしすぎで皮膚炎を起こしてしまった。」「トイレを共有したくなくて排泄を我慢しているうちに泌尿器系のトラブルを起こしてしまった。」ということも。元々の持病が悪化してしまう場合もあります。
お世話をする相手が増えたことで飼い主さんも大変なときですが、多頭飼いのスタート時は、特に愛猫たちの体調に気を配ってくださいね。食事量・飲水量や排泄の回数なども細かくチェックするようにしましょう。