犬と暮らす時に、いちばん考えなければならないことはなんでしょうか? 「飼いやすくて人気の室内犬!」「おとなしくてあまり吠えません!」「散歩はほんの少しでOK!」…といった惹句があふれている状況で、私たちが為さなければならないこととはどういうものでしょう? 「命」を迎え入れる、その責任と行動についてあらためて考えます。
もくじ
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「トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフント、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル…?、あ、柴犬!ボーダー・コリーもかわいいなあ…」
ついに犬を飼うことを決めた由希子さん(仮名)は犬種図鑑を眺め、胸をときめかせていました。結婚して1年、ペット飼育可のマンションも購入し、新生活をスタートさせるにあたって犬と暮らすことにしたのです。
いわゆる共働き夫婦だったので、お留守番が長くなるのは仕方がない、だから「飼いやすい」犬を迎えよう、と夫婦で話していました。
やってきたのはトイ・プードル。明るく活発な性格で、賢くて物覚えがよい。抜け毛も少なくて、マンションでも飼いやすい。そしてなんといっても、人気犬種ランキングでナンバー・ワン!由希子さんは「ショコラ」と名付けたその子犬の頭を撫でながら、小さな命とのすてきな新生活を想像していました。
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ところが、ショコラはとにかく吠える子でした。甲高い声で由希子さん夫婦にも威嚇するように吠え、周りからはうるさい、と苦情が入り、由希子さんは困り果てていました。ご主人は「話が違うじゃないか。トイ・プードルって飼いやすい犬なんだろう?」と彼女を責める始末。
さらに、いつからかショコラはご主人に咬みつくようになりました。どうやら言うことを聞かないショコラを何度か叩いたことがあるようで、それ以来ショコラは人の手を怖がり、攻撃態勢をとるようになってしまいました。
どうしてこうなってしまったのだろう、と由希子さんは思いました。「飼いやすい犬」だったはずなのに。
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それでは、「飼いやすい犬」の正体とはいったい何なのでしょう?
それは「人間にとって都合のいい犬」ということではないでしょうか。飼いやすい=こちらの都合に合わせてくれる、という論法です。
①吠えない
②咬まない
③いたずらしない
④病気にならない
そんな犬が存在する世界が、どこかにあるものでしょうか?
もしもあったとしたら、それが可能なのだとしたら、そこはヴァーチャルリアリティ(仮想現実)なのではないでしょうか。
由希子さんのケースで言えば共働き夫婦ということで、犬に留守番をさせる時間も長く、ショコラはかなりのストレスを感じていたことでしょう。加えてご主人の無知、無関心ぶりも悲劇に拍車をかけました。「どうしておれの都合に合わせてくれないんだよ」といくらご主人が思っていても、もちろん犬はそこに合わせてはくれません。
ほんとうは折り合いをつけることだって、できたのだと思います。
犬に少しだけ我慢をしてもらったり、こちらが妥協したりすることは、当然可能だったのです。
しかしそれをしなかったのは、やりかたを知らなかったのか、面倒だったのか。
いずれにしても、新生活に鳴り物入りでやってきた新しい「命」にリスペクトもなく、愛玩的に消費するだけの存在に仕立て上げてしまった。それは結局、犬にとっても人にとっても不幸な結果にしかなりません。
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日々の暮らしの忙しさにかまけて「できないままになっている」事柄のいかに多いことか。面倒だ、と感じたものから先送りしてしまうのはめずらしいことではありません。
けれども犬を飼うことは、一緒に暮らすことは、実はとても面倒なことです。うんちもおしっこもします。ごはんも食べさせて、場合によっては病気になったりもします。お金もそれなりにかかります。
では、どうしてわざわざそんな「犬を飼う」なんていう面倒なことをするのか。
それは面倒くさいことに勝る、そんなことをものともしない価値があるからなのでしょう。
その価値は「よろこび」と言い換えてもいいと思います。
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なんのために犬を飼うのか。どうしてあなたは犬と暮らしたいのか。
まずはそこをじっくり考えてみることが大切だと思います。
犬種選びは属性という意味でもとても大事ですが、生き物である以上、当然個体差というものがあります。この犬種はこういう性格、などというのは目安に過ぎません。まったく正反対の場合だってあるのです。
犬と暮らすということは、人生の価値そのものなのです。先送りできるようなものではないし、あなたの生活を確実に変えてしまう。
だとしたら、私たちは学ばなければいけません。不幸にならないために、不幸にさせないために。あなたの都合に合わせてくれる犬はいない(そもそも人間だっているかどうか怪しいものです)。すなわち、飼いやすい犬などいない、のです。