大切な家族である愛猫。できるだけ長く一緒にいたいと思うのは当然のことです。長生きの猫は何歳まで生きられるのか、平均寿命はどのくらいなのかと気になる方もいると思います。今回はギネスに載った長寿猫や長生きの秘訣などを紹介したいと思います。
もくじ
一般社団法人ペットフード協会の実施した調査によると2021年の猫全体の平均寿命は15.66歳、犬全体の平均寿命は14.65歳でした。比較すると猫の方が1歳ほど長生きという結果になりましたが、20歳を超える長寿猫はやはり珍しい存在といえるでしょう。
ちなみに、2010年の猫全体の平均寿命は14.4歳。この10年間で1歳程延びています。これは、人間に換算すると4歳分にあたります。2010年から2020年の間の日本人の寿命の延びは男性で2歳、女性で1.4歳(厚生労働省HPより)。
猫の寿命の方がより大きく延びていることがわかります。理由としては、獣医療の進歩や飼い主さんの意識の変化による予防の徹底、病気の早期発見などが挙げられるでしょう。
今後もさらに長寿化していく可能性が考えられますが、その分パートナーである愛猫の命を預かるということを忘れずに責任を持って面倒をいていく必要があります。
猫の年齢を人の年齢に換算すると生後1ヶ月で1歳、生後半年で10歳、1歳で15歳になるといわれています。1歳半の猫は、人の年齢では21歳ですから、1〜1歳半の間に立派な大人になります。
その後は1年で4歳ずつ歳を重ねていき、11歳になると人の60歳、いわゆる高齢期に入ります。長生きとされる20歳は、人の年齢に換算すると96歳になります。
ライフステージ | 猫の年齢 | 人の年齢 |
子猫期 | 0-1ヶ月 | 0-1歳 |
2-3ヶ月 | 2-4歳 | |
4ヶ月 | 6-8歳 | |
6ヶ月 | 10歳 | |
青年期 | 7ヶ月 | 12歳 |
1歳 | 15歳 | |
1歳半 | 21歳 | |
2歳 | 24歳 | |
成猫期 | 3歳 | 28歳 |
4歳 | 32歳 | |
5歳 | 36歳 | |
壮年期 | 7歳 | 44歳 |
10歳 | 56歳 | |
中年期 | 11歳 | 60歳 |
14歳 | 72歳 | |
老猫期 | 15歳 | 76歳 |
20歳 | 96歳 |
前述のペットフード協会の2021年の調査によると、猫の飼育場所は82.6%が完全室内飼い。8.7%が基本的には室内で散歩時に外出、7%が室内・屋外が半々、1.8%が主に屋外になっています。
完全室内飼いの猫の平均寿命が16.22歳だったのに対して、外出する猫の平均寿命は13.75歳と2.5歳ほど差がありました。ここ数年(2016~2020年)のデータを見ても、平均して2.5歳ほどの差があるという結果です。人に換算すると10歳ほどの差になることを考えるととても大きな差ですね。
野良猫の寿命はおおよそ4年ほどといわれています。屋外で生活する野良猫にとって夏の暑さや冬の寒さ、雨風をしのぐ場所を探すのも大変です。飼い猫と違い食事も自分で見つけなければなりません。この様な過酷な環境で生活することで体には大きな負担がかかり結果として寿命が短くなってしまいます。
もともと室外で自由に生活していた猫にとって、室内での生活はストレスに感じたりすることもあるかもしれません。しかし、室内飼いのメリットはたくさんあります。
猫エイズウイルス(FIV)や猫白血病ウイルス(FeLV)、寄生虫(ノミやマダニ)など野外で生活すると様々な感染症のリスクが増大します。
近年では重症熱性血小板減少症(SFTS)といった人獣共通感染症も報告されているため、愛猫だけでなく飼い主さん自身を守るためにも屋外での生活は避けた方がよさそうです。
野外では野良猫とのケンカや交通事故にあう危険性があります。特に交通事故は体の小さな猫にとっては命に関わる大きなケガにつながる可能性があります。
悲しいことに猫は一部の心ない人から虐待の対象としてみられることがあります。そのような人に近づけないためにも室内飼育が有効です。
食欲の有無や嘔吐、排泄の状態などは、外出をしてしまうと正確には把握できません。 ダイエットしているつもりが別の人にもご飯をもらっているなんて事もあります。猫の体調を把握するためにも外出は避ける方がよいでしょう。
ただし、室内飼いでは運動不足になりがちなため、しっかりと運動ができる環境を用意してあげることも重要です。
2021年に日本で飼育されている猫の種類を見ていくと75.3%が雑種で、アメリカン・ショートヘア(3.7%)、スコティッシュ・フォールド(3.2%)、マンチカン(2.3%)、ペルシャ(1.2%)、ロシアンブルー(1.1%)、メイン・クーン(0.5%)、ノルウェージャン・フォレストキャット(0.7%)と続きます。
これらの代表的な猫種の平均寿命は下記の通りです。(※)
アメリカン・ショートヘア | 17.5歳 |
スコティッシュ・フォールド | 15.7歳 |
ノルウェージャン・フォレストキャット | 15.1歳 |
マンチカン | 13.3歳 |
猫全体の平均寿命は15.66歳といわれているので、アメリカン・ショートヘアは寿命が長い傾向にあるといえるでしょう。スコティッシュ・フォールドやノルウェージャン・フォレストキャットは平均的な寿命といえそうです。
寿命の長い、短いは個体差や生活環境にもよるところが多いため、気にし過ぎる必要はありませんが参考にしてみてはいかがでしょうか。
ギネスの世界記録に登録されている人間の最長長寿記録はフランス人女性のジャンヌ・カルマンさん(1997年没)の122歳です。日本人でも2021年9月に107歳の双子姉妹が世界最高齢の存命一卵性双生児とギネス記録に認定されました。
人間と一緒に暮らすペットの代表、犬や猫はどうでしょうか。犬も猫も平均寿命は1~2歳の差しかありませんが、犬の最長寿記録が29歳であるのに対し、猫の最長寿記録は38歳です。
シャム猫の「スクーター」は1986年生まれでアメリカのテキサス州で暮らしていました。飼い主さんであるゲイルさんと仲良く過ごしていたスクーターですが、30歳の誕生日を迎えて数日後に虹の橋を渡りました。
シャム猫の寿命は15~20歳とされているため比較的長寿な種類ですが、それでも30歳は驚くべき年齢です。人間の年齢に換算するとなんと136歳です。
シュークリームという意味の名前を持つ「クリーム・パフ」。1967年生まれのクリーム・パフはスクーターと同じくテキサス州で暮らしており年齢はなんと38歳まで生きました。人間の年齢に換算すると驚きの168歳です。
この記録は現在もギネス最高齢の猫として君臨しています。
そんなクリーム・パフの飼い主さんであるジェイク・ペリーさんはもう1匹の長寿猫と暮らしていました。1964年生まれのその子の名前は「グランパ・レックス・アレン」。コンテストでのチャンピオン記録も持つ無毛が特徴のスフィンクスといわれるスリムな体型の猫でした。
グランパは34歳で虹の橋を渡りました(人間の年齢に換算すると150歳)が、同じ飼い主さんのもとでクリーム・パフと同時期に生活しており、ギネスブックの担当編集者は長寿の秘密について飼い主さんに聞き取り調査を行いました。
猫の寿命に影響を与える要因は多岐に渡りますが、中でも影響が大きいとされているもののひとつが食事です。
一般的に猫は肉食の動物です。野良猫の場合はネズミなどの小動物や小鳥やハトなどを捕食し、必要なタンパク質を摂取します。キャットフードではドッグフードと比較しても動物性のタンパク質を多く摂取できるように配合されています。
また、猫はほとんど汗をかかない事もあり、人間と同じような味付けをされたものや、多量の塩分は有害となります。チョコレートやカフェインに至っては中毒を起こすこともあります。
不思議なことに彼ら長寿猫が食べていたものはベーコン&エッグ、アスパラガス、ブロッコリーなどです。さらにはクリームたっぷりのコーヒーなども与えていたことがわかりました。
前述の通り、人間の食べものを猫に与えると、体に悪影響を及ぼすことは現在では常識といってよいでしょう。けれども、彼らが最高齢の猫だったことはまぎれもない事実です。
猫たちの食と長寿の因果関係はわからないままですし、正しい知識がとても大切であることはもちろんですが、クリーム・パフとグランパが美味しそうにそれを食べていた姿を、わたしたちは想像することができます。
残念ながら日本でギネスに認定された長寿猫はいませんが、日本で最高齢の猫は36歳まで生きた「よも子」です。昭和10年に青森県の岡田さん宅で飼われていた「よも子」というトラ柄で、短毛の猫は、36歳まで生きたという記録があるそうです。
上野動物公園に呼ばれ、最高齢の長寿猫として表彰された記録もあるそうですが、36才だという証拠がないことからギネスにのることはできなかったようです。
私たちが愛猫に求めていることとは何でしょう。ただそばにいて、生きてくれているだけでいい。一分一秒でも長く一緒いてほしい。みなさんそう思っているのではないでしょうか。
では、猫に長生きしてもらうための秘訣はどんなものが挙げられるのでしょうか。飼う際に気をつけたいポイントをいくつか挙げてみたいと思います。
人や犬猫に限らず、全ての動物にとって食べることは生きていくために必要不可欠です。食事は肉体的健康、精神的健康だけでなく、行動や性格にも影響を及ぼします。
食べるものを自分で選べない飼い猫は、飼い主さんが与える食事で体を作ります。栄養バランスだけでなく、量やカロリーを適切に管理してあげることが重要になります。健康な猫では「総合栄養食」の表示があるご飯を与えましょう。
「総合栄養食」とは水とその食事だけで猫の必要な栄養基準を満たすことが認められているフードです。また、猫が喜ぶからといって人の食べ物やおやつを与え過ぎるのも注意が必要です。
一般的にはおやつは1日の必要カロリーの10%までが適正とされています。乱れた食生活が体に負担をかけてしまうことは人でも猫でも同じです。また、定期的に体重測定をして摂取カロリーの調整をしてあげるのも重要です。
「衣食住」が満たされた状態が人間にとっての幸せの第一歩だとすると、猫にとっても同じことです。前述のように外出をする猫では寿命が短くなることがわかっています。野外での病気やケガのリスクは避けるに越したことはありません。
一方、室内飼いでは運動量が少なくなってしまい肥満傾向になることが懸念されます。人では肥満は万病の元といわれますが、それは猫でも同じ。糖尿病や高脂血症、尿路結石症や関節炎のリスクなどが上がることが報告されています。
上下運動ができるようなキャットタワーを用意してあげたり、隠れたり、探索できる場所を作ってあげて猫の習性に合わせた環境を用意してあげましょう。
当然ながら、猫は飼い主さんに体調が悪いことや痛い箇所があることを教えてくれません。そのため、病気になっても最初はなかなか気づけません。
そこで、日頃から健康に配慮するだけでなく、定期的に健康診断に連れて行ってあげることが大切です。猫によっては自宅から出ることを嫌がったり病院を怖がったりすることもあります。
そうならないために、小さいころから動物病院に慣らすようにしましょう。定期的な健康チェックで病院に訪れるのは、慣らすためにも有効な手段ですね。猫の年齢別に起こりやすい病気をまとめてみました。
赤ちゃん猫の場合、下痢、結膜炎、外耳炎、嘔吐、膀胱炎などの症状が出やすいです。体力が未熟であるため、放置すると重篤化する可能性も高いので、症状が見られた際にはなるべく早く動物病院で獣医師の診断を受けましょう。
膀胱炎(尿路結石)、嘔吐、結膜炎、下痢、皮膚炎などの症状が出やすいとされています。
膀胱炎(尿路結石)、嘔吐、結膜炎の他、腎臓病やなどの病気も出やすくなるといわれています。
嘔吐、下痢、胃腸炎の他、関節炎や慢性腎臓病などの病気にもかかりやすくなるため、要注意です。
嘔吐、膀胱炎の他、腎不全、関節炎や慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症などの病気にかかりやすくなります。
猫では若齢から高齢まで膀胱炎や腎臓病などの泌尿器系の病気が多いのが特徴です。定期的に尿検査だけでも実施すると病気の早期発見につながります。
猫によりトイレの好みはありますが、いざという時に尿の採取がしやすいシステムトイレの方が望ましいかもしれません。最近では猫がトイレに入った際に体重を測れたり、尿の量や回数をモニターしてくれたりできるトイレも発売されています。
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猫の長寿について紹介しましたがいかがでしたか。長生きのポイントはいくつかありますが、一番重要なのは愛猫を飼い主さんの生活に欠かせない存在として迎え、責任を持って命を引き受ける重さを持ち続けること。その気持ちこそが愛猫の「長寿」につながるのです。
参照元:一般社団法人ペットフード協会「令和3年(2021年)全国犬猫実態調査(主要指標サマリー)」(2022/5/20閲覧)
Journal of the American Animal Hospital Association 2010;46:70-85(2022/05/20閲覧)
服部幸(2018)「猫を極める本 猫の解剖から猫にやさしい病院づくりまで」株式会社インターズー(現:株式会社エデュワードプレス)
Guinness World Records「猫の最長寿記録~人間の170歳まで生きた猫」(2022/5/20閲覧)