犬は、人間に比べると寿命の短い動物。犬種によっても異なりますが、その平均寿命は10~14歳といわれています。できることなら長生きして、ずっと家族でいて欲しいですね。犬の平均寿命や人間に換算したときの年齢、ギネスにも載っている世界最高齢の犬や長生きしてもらうために飼い主さんができることについて解説します。
もくじ
2022年のペット&ファミリー損保の調べでは小型犬の平均寿命が15.8歳、中型犬の平均寿命が14.4歳、大型犬・特大犬の平均寿命が12.9歳となっています。(※)
獣医療の進歩、飼い主さんの意識の変化による予防の徹底や病気の早期発見などによって犬の寿命は延び、今後さらに長寿化することが考えられます。命を預かる責任を持って面倒をみていきましょう。
大型犬・特大犬の平均寿命は12.9歳で、小型犬および中型犬の平均寿命がいずれも14歳を超えていることを考えると短命な傾向にあるといえそうです。
その理由として、小型犬に比べて大型犬の成長のスピードは早く細胞分裂の回数が多いこと、成長ホルモンの一種であるIGF-1濃度が高いことなどが考えられています。
IGF-1は成長に欠かせない伝達物質として働くため、体が大きな個体ほど分泌が多いことがわかっています。一方で、IGF-1濃度を低下させたマウスなどでは寿命が伸びることが研究されています。
今後研究が進むと、このIGF-1と寿命の関係が明らかになるかもしれません。
大型犬に比べて、小型犬・中型犬は長生きする傾向があります。日本で飼育頭数の多い小型犬、人気の高い小型犬の平均寿命を挙げてみましょう。
小型犬 | 平均寿命(※) |
チワワ | 15.0歳 |
トイ・プードル | 16.7歳 |
ポメラニアン | 15.0歳 |
ミニチュア・ダックスフンド | 15.9歳 |
小型犬・中型犬の中でも心臓病にかかりやすいキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルやパグやボストンテリアなどの短頭種は少し寿命が短い印象です。
ミックス犬は、体が丈夫で長生きしやすいといわれています。確かに、弱肉強食の世界で生き残ってきた野犬や野良犬は、生命力の強い遺伝子が受け継がれてきたといえます。そうした野生の血を引くミックス犬を迎え入れた場合は、病気をせずに長生きする可能性はあると考えられます。
しかし、純血種同士を交配して誕生したミックス犬の場合、遺伝子検査等により適切なブリーディングができていなければ、親犬の遺伝病や虚弱な体質を引き継いでいる可能性があります。
特に小型犬では、純血種でもミックス犬よりも長生きする犬種(トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフント、カニヘン・ダックスフント、ビションフリーゼ)もあるので、ミックス犬かどうかは寿命にそこまで影響を与えていないということになります。
ギネスに登録されている世界で最も長生きした犬は、オーストラリアのビクトリア州で暮らしていたオーストラリアン・キャトル・ドッグのBluey(ブルーイ)です。1910年に家族に迎えられ、約20年間も牧牛犬として働きました。
1939年11月14日、29才と5ヶ月で最期を迎えました。この公式記録は、それから90年が経とうとする今でも塗り替えられていません。
ブルーイと同じビクトリア州で、酪農家のブライアン・マクラーレン氏と生活を共にしていたオーストラリアン・ケルピーのマギー。2016年まで存命で、ブルーイの記録に並ぶほど高齢でした。
耳は聞こえなくなっていたものの、彼女は毎日、マクラーレンさんの事務所まで歩いていっては猫たちに吠えるなど、晩年になっても衰えを見せていなかったようです。しかし、亡くなる2日前に容体が急変し、2016年4月17日に穏やかな死を迎えました。
マギーは、マクラーレン氏の息子さんが4歳のときに家族に迎えられました。亡くなった2016年には、その息子さんは34歳になっていたので、マギーの年齢は30歳のはずでした。しかし、マギーの年齢を証明する公的な書類が存在せず、残念ながらギネスの公式記録を塗り替えることはできませんでした。
30歳は犬の平均寿命の倍以上です。アメリカンケネルクラブの計算式を当てはめると、人間の年齢に換算して164歳と、驚くべき長寿です。
世界で最高齢を記録したオーストラリアン・キャトル・ドッグは、野生化した牛をも扱いこなす「ヒーラー」と呼ばれる特殊な牧牛犬で、吠え声を出さずに牛を誘導するのが得意。
いうことを聞かない牛には、かかとを軽く噛んで驚かせ従わせます。牛だけでなく、山羊や馬、アヒルなどの追い込みや管理もできる優秀な犬です。
オーストラリアン・キャトル・ドッグは、体高43~51cm、体重16~20kgの中型犬。首は太く、胸は広く、胴は長めで、脚は太く短めと、外見はややずんぐりしており筋肉質でがっしりとした体つきです。耳は立っており、しっぽはふさふさで垂れています。
毛色はブルー・アンド・タンが主流。硬めの短毛はシングルコートで、オーストラリアの暑さに適応しています。
※体高…四つ足をついて立ったときの、地面から背中までの高さ
性格は忠実で忍耐強く、やや神経質で生まれつき他人に疑い深い傾向があります。しつけの飲み込みが早く、判断能力に優れ、行動力と度胸があります。運動量は大型犬並みに多く、とてもスタミナがあります。
オーストラリアが植民地になったばかりの頃、牧畜は人間の居住地に近い限られた範囲でのみ行われていました。
その頃はまだ、入植者がヨーロッパから連れてきた牧畜犬だけで充分仕事がこなせましたが、牧畜の規模が拡大するにつれ、牛が半野生化してしまうという思いもよらない事態が発生し始めました。
野生化した牛は、ヨーロッパの牧畜犬では制御ができません。そこで、新しい牧牛犬を交配によって生み出そうという試みが始まりました。
スコットランドから連れてきた短毛ハイランド・コリーに、現地の野生犬ディンゴやオーストラリアン・ケルピー、ダルメシアン、ブルテリアなどを異種交配させて生まれたのがオーストラリアン・キャトル・ドッグです。
野生犬ディンゴの体力と、ハイランド・コリーの知恵、ダルメシアンの忠誠心を持ち合わせています。
その力強く美しい姿から、ショードッグとしても好まれるようになりましたが、現在でも作業犬として根強い人気があり、アメリカ西部やニュージーランドでも牧牛犬として活躍しています。
日本でもわずかながらペットとして飼育されていますが、登録数は毎年10頭以下にとどまっています。
オーストラリアン・キャトル・ドッグの平均寿命は13~15歳といわれています。比較的長寿ではありますが、それでもやはりブルーイの29.5歳には驚かされます。
寿命とともに気になるのが、「犬の年齢が人間の何歳に相当するのか」ということではないでしょうか。
1950年代から「犬の1歳=人間の7歳相当」という計算が一般的でした。現在では小型犬や大型犬で換算方法が異なり、小型犬の場合2歳以降は1年に4歳ずつ歳をとり、大型犬では1年に7歳ずつ歳をとるとしているものが多いです。
諸説ある中でアメリカの獣医師会では一般的なガイドラインとして
と説明しています。
また、2019年のカリフォルニア大学における研究では、「人間の年齢=In(犬の年齢)*16+31)」。という新しい算出方法が打ち出されました。これによると、
犬 | 人間 |
3歳 | 48歳 |
5歳 | 57歳 |
10歳 | 74歳 |
となります。ただし、この研究では104頭のラブラドール・レトリバーをサンプルとしています。実際は諸説あるため、今後研究が進めば、犬種ごとの年齢換算表ができるかも知れません。
犬の体格によって、年齢換算は次のように異なります。
犬の大きさ(※) |
小型犬(~9kg) |
中型犬(9~23kg) |
大型犬(23~45kg) |
超大型犬(45kg~) |
犬の年齢 |
人間に換算した年齢 |
|||
1歳 |
15歳 |
15歳 |
15歳 |
12歳 |
2歳 |
24歳 |
24歳 |
24歳 |
22歳 |
3歳 |
28歳 |
28歳 |
28歳 |
31歳 |
4歳 |
32歳 |
32歳 |
32歳 |
38歳 |
5歳 |
36歳 |
36歳 |
36歳 |
45歳 |
6歳 |
40歳 |
42歳 |
45歳 |
49歳 |
7歳 |
44歳 |
47歳 |
50歳 |
56歳 |
8歳 |
48歳 |
51歳 |
55歳 |
64歳 |
9歳 |
52歳 |
56歳 |
61歳 |
71歳 |
10歳 |
56歳 |
60歳 |
66歳 |
79歳 |
11歳 |
60歳 |
65歳 |
72歳 |
86歳 |
12歳 |
64歳 |
69歳 |
77歳 |
93歳 |
13歳 |
68歳 |
74歳 |
82歳 |
100歳 |
14歳 |
72歳 |
78歳 |
88歳 |
107歳 |
15歳 |
76歳 |
83歳 |
93歳 |
114歳 |
16歳 |
80歳 |
87歳 |
99歳 |
121歳 |
※体重ごとの犬の大きさの分類は、当社の分類とは異なります。
犬も猫も、室外飼育に比べて室内飼育のほうが長生きする傾向にあり、犬の場合2~3年ほど長生きするといわれています。
夏は暑く、冬はとても寒い日本の気候により、人でも体調を崩すことがあります。暑さに強い犬種、寒さに強い犬種はそれぞれありますが、どちらにも強い犬種はなかなかいません。
また、室外のほうがノミやダニなどの感染症のリスクが高く、脱走による交通事故の可能性もあります。室内で過ごしていれば気づけたかも知れない愛犬の異変を、見逃してしまうことも考えられます。
愛犬を守るためにも、可能な限り家族とともに室内で過ごさせてあげましょう。
子犬だと思っていた愛犬もいつの間にか自分より高齢になり、少しでも長く元気に過ごせたらと願う日々が続くことでしょう。ここでは一般的に長生きにつながるとされている犬への接し方を取り上げます。
混合ワクチンやフィラリア症などの予防に加えて、年に1回は定期健診を受けましょう。
シニア犬(小型・中型犬では10歳前後、大型犬では8歳前後)の場合は年に2回は診てもらうとよいでしょう。高齢になると腫瘍などの発生リスクが高くなります。血液検査だけでなく、X線検査や超音波検査なども受け、病気の早期発見に努めてください。
かかりつけの病院をもち、普段から病院に慣れておくことで、万が一通院や入院が必要になったときに犬にかかる精神的な負担も軽減できます。
また、病気だけでなく、犬の性格や普段の様子などを把握してくれている獣医師やスタッフがいることで、治療についても相談しやすい環境ができるでしょう。
近くに動物病院が複数ある場合は、診察方法の違いや得意分野の違いなどもあるため、比較してみて愛犬にあう病院を早めに見つけてあげてください。
犬にとって中毒になる食べ物はもちろん、人が食べるために味付けされたものは与えないようにしましょう。
人用の味付けは、犬にとって塩分や糖分、脂肪分の過剰摂取につながります。嘔吐や下痢、場合によっては急性膵炎を起こし、命を落とす危険もあります。可愛い顔でおねだりされるとあげたくなってしまう気持ちは理解できますが、心を鬼にして与えないという選択をしてください。
また安価なフードには、嗜好性はよくても犬の体によくない添加物が使われていることもあります。内臓や皮膚の病気につながる可能性もあるため、品質にも注意しましょう。
ただし、質のよいフードの中にもアレルギーを起こす原材料が使われていたり、体質によってうまく消化できずに便秘や嘔吐を引き起こしたりするものもあります。
食事を変える際は、今まで食べていたご飯に新しいフードを少量ずつ混ぜていき、愛犬の体に合うかどうかを確認しながら理想的なフードを探していきましょう。
室内飼いのほうが寿命は長いものの、適度な運動は必要です。外でのお散歩はもちろん家の中での遊びも含めた運動は、体の健康だけでなく、ストレス発散や満足感といった心の健康にも関係します。
体力がある犬の場合は、短時間のお散歩だけでは物足りないと感じることもあるため、知育玩具などを用いて遊ぶなどの工夫も必要です。また、高齢犬でも全く運動をしないと筋肉が衰えてしまいます。
運動のさせすぎには注意が必要ですが、認知症の予防や、心身の健康のために、適度な運動や遊びなどで刺激を与えましょう。
最近では、高齢犬向けのデイケアなどを取り入れている病院もあるようです。持病など抱えている愛犬の運動についてはかかりつけの病院で相談するとよいでしょう。
早期の去勢・避妊手術により、オス・メスともに生殖器や性ホルモンに関連した病気のリスクを軽減し、寿命が長くなるといわれています。
全身麻酔のリスク、手術後は太りやすくなる、かかりやすくなる病気があるといった点もありますが、発情期にみられる問題行動がなくなったり、望まない妊娠を防いだりすることもできます。
どうしても愛犬の子犬を見たいという強い願望がなければ、去勢・避妊手術によってお互いがストレスなく過ごし、一緒にいられる時間が長くなるかもしれません。
ただし、避妊去勢手術は適切な月齢や時期があるので、犬を家族に迎えた時に早めに動物病院で相談しましょう。
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ギネス世界記録に登録されるほど長生きの犬もいますが、一般的に犬の寿命は十数年と短いもの。より長く一緒に暮らすためにも、食事の管理や定期健診など飼い主としてできることをしてあげたいですね。
※2021年1月~12月における死亡解約頭数および2021年の保有契約をもとに簡易的な生命表を作成し、0歳時点の平均余命を平均寿命とした。
参照元:
AMERICAN KENNEL CLUB 「How to Calculate Dog Years to Human Years」 (2022/4/19閲覧)
AGE (2011) 33:475–483(2022/4/19閲覧)
Guinness World Records「Oldest dog ever」(2022/04/19閲覧)
HUFFPOST「世界最高齢と考えられていた30歳の犬、天国に旅立つ」(2022/04/19閲覧)
AMERICAN KENNEL CLUB 「How to Calculate Dog Years to Human Years」(2022/04/19閲覧)
三宅洋一 他「犬・猫における避妊手術のメリットとデメリット」日本獣医師会雑誌 41巻(1988年) p267~271
Hoffman JM et al.” Reproductive Capability Is Associated with Lifespan and Cause of Death in Companion Dogs” PLOS ONE April 2013 volume 8 issue(2022/4/19閲覧)