みなさんの愛犬は人間で考えると何歳でしょうか。飼い始めたころは小さかった愛犬も、あっという間に年を重ねていきます。愛犬の心はいつまでも子供のようですが、体は歳を重ねることで少しずつ老化していきます。すでにシニアに近づいてきた子も、まだまだ若い子も、シニア期の健康管理や注意点について知り、シニアになっても楽しく過ごせる環境を整えていきましょう。
もくじ
犬を飼ったことがある人なら、「うちの犬は人間で考えればどのくらいの年なんだろう?」と疑問に思ったことがあるでしょう。
犬種や飼育環境などによって差がありますが、犬は生後半年くらいまでに急激に成長し、1歳くらいで、だいたいの成長が止まります。
小型犬や中型犬は6~7歳くらいでシニア期に入りますが、大型犬はもう少し早く、5~6歳くらいからシニア期となります。
しかし、若くても寝てばかりいる犬もいれば、高齢でも元気に動き回っている犬もいるなど、犬の年齢はとてもわかりにくいのです。
犬と人間では歳をとるスピードが異なるため、単純に年齢を比較・換算することはできません。
人間と犬の成長スピードを見てみましょう。
これを人間に換算すると下のような表になります。
犬の年齢 | 人間 |
---|---|
1カ月 | 1歳 |
2カ月 | 3歳 |
3カ月 | 5歳 |
6カ月 | 9歳 |
9カ月 | 13歳 |
1歳 | 16歳 |
1歳半 | 20歳 |
2歳 | 24歳 |
3歳 | 28歳 |
4歳 | 32歳 |
5歳 | 36歳 |
6歳 | 40歳 |
7歳 | 44歳 |
8歳 | 48歳 |
9歳 | 52歳 |
10歳 | 56歳 |
11歳 | 60歳 |
12歳 | 64歳 |
13歳 | 68歳 |
14歳 | 72歳 |
15歳 | 76歳 |
16歳 | 80歳 |
ざっくりとした把握なら上の表で大丈夫ですが、犬種によって平均寿命は大きく異なるため、年齢換算も変わる点に注意が必要です。
犬種ごとに年齢を把握したい場合は、ご自身が飼っている犬種の平均寿命から逆算して考えましょう。
というのも、大体どの犬種でも生後1歳くらいで体が成熟することに差はありません。そこを基準として、平均寿命から計算していけば良いのです。
例えば、ラブラドール・レトリバーの年齢換算表を見てみましょう。
(計算をわかりやすくするため、数値に誤差があります)
ラブラドール・レトリバー:人間 |
---|
1ヶ月:1歳 |
2ヶ月:3歳 |
3ヶ月:5歳 |
6ヶ月:9歳 |
9ヶ月:13歳 |
1年:16歳 |
以降、1年毎に6.4歳 (2年:22.4歳、5年:41.6歳、10年:73.6歳) |
11年:80歳 |
一般的な犬の平均寿命を人間の80歳とし、犬の1歳を16歳と換算します。生後2年以降に、犬が一年で年を取る年齢は、次のように計算できます。
(80歳-16歳)÷(調べたい犬種の平均寿命-1年)=犬が一年に年を取る年齢
これを、ラブラドール・レトリーバーの平均寿命を11 歳として計算すると、1年に6.4歳年を取ることになります。
先ほど計算した1年に年を取る年齢を使って、現在の愛犬の年齢を人間に換算できます。
16+(犬の年齢-1)×犬が1年で年を取る年齢=人間に換算した犬の年齢
例えば、8歳のラブラドール・レトリバーの今の大体の年齢を知りたい場合は、
16 + (8 – 1) × 6.4 = 60.8 歳
つまり人間に換算すると、60歳くらいという結果になります。
ただし、この数値はあくまで目安だということを知っておきましょう。
この計算式は、無理やり人間に当てはめたもののため、正確ではなく実用的でもありません。
実際に、獣医師は次のように把握しています。
何歳という明確な数値にしなくても、成長期なのかシニア期なのか、そして平均寿命がわかれば、治療のプランや生活習慣の指導は十分に可能なためです。
サイズごとの平均寿命や、代表的な犬種の平均寿命をご紹介しましょう。
サイズ | 平均寿命 |
---|---|
小型犬 | 15.8歳 |
中型犬 | 14.4歳 |
大型・特大犬 | 12.9歳 |
犬種 | 平均寿命 |
---|---|
チワワ | 15.0歳 |
トイ・プードル | 16.7歳 |
ポメラニアン | 15.0歳 |
ミニチュア・ダックスフンド | 15.9歳 |
フレンチブルドッグ | 13.1歳 |
柴犬 | 15.6歳 |
データの取り方や犬種、環境による個体差があるため若干の誤差があります。あくまで目安と考えて頂ければと思います。
「愛犬と少しでも長く一緒にいたい」というのは、犬を飼ったことがある人なら誰でも思うこと。少なくとも平均寿命までは生きてほしいですよね。
この章では、愛犬に少しでも長生きしてもらうためのポイントをご紹介します。
飼い主さんが自宅でできることはもちろん行いつつ、かかりつけの病院と連携して愛犬の細かな変化に気付けるようにしましょう。
犬が平均寿命より早く亡くなってしまう原因は、ほとんどが事故か病気です。事故に関しては防げないことも多いですが、病気は早期に発見できるものもあるため、定期的に健康診断を受けましょう。
ポイントは、血液検査や胸とお腹のレントゲン検査、お腹の超音波検査などで全身をくまなく検査してもらうことです。
頻度としては、7歳未満が年1回、7歳以上なら半年に1回が推奨されます。
病気の早期の状態では、脱水や食欲低下が起こることがあります。すると、水分や栄養が体から抜けて体重が減少します。逆に、体重が増えると肥満になり、さまざまな病気を引き起こす可能性が高くなります。
毎日体重を測定する必要はないですが、週1回くらい測定してあげると、思わぬ変化に気付けることがあります。
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しこりは体のさまざまな所にできます。体内にできるしこりは触ってもわからないことが多いですが、体の表面(皮膚)にできるしこりは見つけられます。普段から体に触れ、しこりを見つけたら早めに病院で診てもらうようにしましょう。
ライフステージによって、愛犬への接し方や環境づくりのポイントが異なります。ライフステージごとの注意点をご紹介します。
離乳完了後のこの時期は、外の世界に興味津々。いろんな所を探検したり、高い所に登ったりと、好奇心が旺盛です。
体はまだまだ未熟なので、狭い所に入り込んだり、高い所から落ちてしまったりするなど、危険な目にあうこともあります。また、噛みたい欲求が強い時期のため、なんでも口に入れたがります。電気のコードを噛んで感電したり、物を飲み込んで窒息したりするなど、非常に危険です。
などの対応を心がけましょう。
事故やケガの具合によっては手術が必要になったり、命に関わったりするため注意が必要です。
体ができてくると、怪我や病気の心配は減ってきます。しかし、病気にならないわけではないので、体重や食事の量、排便や排尿をチェックし、気になることがあれば病院を受診しましょう。
拾い食いの癖が抜けていない場合は、そちらも注意してください。
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シニア期に入ると、筋肉や関節の衰えから体が思うように動かなくなり、病気のリスクが上がります。シニア犬への環境づくりは後ほど詳しく記載しますが、なるべくバリアフリーにして、体の負担を減らしましょう。
また、体重、食事、排泄などの小さなサインを特に意識してください。
生き物ですので絶対はありません。獣医師として普段診察をしている中で、平均寿命を待たずして亡くなってしまうことをたくさん経験しています。しかし、快適に長生きしてもらえるよう、ライフステージにあった環境づくりを心がけましょう。
ここまで「シニア」という言葉を使ってきました。個人的には「老化が始まってきたらシニア」というように使っていますが、「シニア」には明確な定義はなく、人によって使い方が異なります。
また、「何歳くらいからシニアなのか」というのも、個人差があるため一概には決められません。
人間で置き換えてみるとわかりやすいかと思います。
50代でも、マラソンや登山など、日々運動をしていて、若者より元気な方もいらっしゃいます。一方で同じ50代でも、腰痛などに悩まされて病院通いが多いという方もいるでしょう。
このように、年齢だけで区切れるものではなく、個人差が非常に大きいです。年齢だけで判断せず、愛犬の現在の様子を考慮して、シニアかどうかを判断することが重要なのです。
とは言え、目安があった方がわかりやすいですよね。それが先にご紹介した、大型犬は5~6歳、小型犬/中型犬は6~7歳なのです。あくまでも目安で、個人差が大きいものではありますが、全体的な傾向からすると、これくらいの年齢になると老化が始まります。
年齢以外の判断ポイントもご紹介しましょう。
シニア期に入ると体の機能の衰えが始まります。その変化を捉え、適切に対処してあげてください。
シニア期に起こる変化の例をあげてみましょう。
あなたの愛犬は、いくつ当てはまったでしょうか。当てはまる項目が多いほどシニア期に突入している可能性が高いです。
しかし、これ以外にも老化のサインはたくさんあります。大切なのは「今までできていたことができなくなった」「今までとここが変化した」といった違いに気づけるかです。シニアの兆候が見られたら、過ごしやすい環境を作ってあげましょう。
若い頃と同じようにはいきませんが、適切なケアをしてあげることで、愛犬もご家族も日々を快適に過ごすことができます。
シニア犬と暮らしていく中での注意点をチェックしてみましょう。
若い頃の健康診断は年に一度でもよいですが、シニア期は、少なくとも半年に一回の健康診断をおすすめします。血液検査、レントゲン検査、超音波検査は最低でも受けるようにしましょう。
筋肉が衰えたり反応が鈍くなったりすると、フローリングで滑ったり、段差で足を踏み外したりすることがあります。思わぬ事故につながるケースもあるため、床には滑り止めのマットを敷くほうが無難でしょう。
また、段差には小さな階段やスロープを付けたり、そもそも階段を登らないようにしたりするなど、環境を整えると安心です。
足腰が弱ってきた、散歩を嫌がるようになった、などの理由から散歩をやめてしまう飼い主さんもいらっしゃいます。無理矢理散歩に連れて行くのは良くありませんが全く体を動かさないと筋肉は弱り、ますます老化が進みます。できる範囲で運動をさせましょう。
すぐに疲れるようなら歩行補助具を使用し、こまめな休息を取り入れます。どうしても外に出たがらないようなら家の中で運動させ、よく遊んであげると良いでしょう。
歳をとると食べる量が減ったり、好き嫌いが激しくなったりすることもあります。単なるワガママの場合もありますが、実は病気が隠れていることもあります。
よくある原因は歯周病です。歯や歯肉に痛みが出ると、今まで食べていたドッグフードが食べづらくなることがあります。
別の隠れた病気によって食欲が低下しているケースもあります。体重が徐々に減っている場合は、病気の可能性を考慮し、一度病院でしっかり診てもらいましょう。
高齢になると、小さなイボや脱毛、湿疹(しっしん)、関節や腰などの痛みなど、体に異変が出てくることがあります。しかし、犬は痛いとは言えず、被毛に隠れて異変に気付きにくいです。こまめに全身を「見て」「触って」チェックしてあげましょう。
「見る」ときにはなるべく毛をかき分けながらチェックしてください。「触る」ときには、腰や関節を重点的に触ると良いでしょう。
いくら気をつけていても病気になるときはなります。病気を早期発見できれば治療も楽にはなりますが、それなりに費用はかかります。
せっかく病気を早期発見し、治療手段もあるのに、費用が気になって治療に集中できないということがないよう、元気なうちからペット保険への加入を検討してみてください。
実際に犬を飼われていると実感されると思いますが、犬は病院に行く頻度が意外と多く、保険を使う機会もかなり多いです。
ペット保険に加入していれば、実際に治療に入った時に費用を大幅に軽減することができます。若いうちからペット保険に加入して、老後の備えをしておくこともとても重要です。
シニアになると病気になる可能性は上がり、どんなに気をつけていても防げないこともあります。また、「無理をさせたくない」「なるべくゆっくりさせてあげたい」と思う方も多いでしょう。
しかし、シニアになっても愛犬自身の心は若いまま。いくつになっても、楽しいことが大好きです。
シニアだからと、いろいろなことを制限してしまってはお互いにつらくなってしまいます。体に気を使いながらも、日々の楽しみを損なわないように、出来ることは楽しくやらせてあげられるような環境を作っていってあげましょう。