【獣医師監修】ペットの健康診断とは?費用や必要性を解説
2023.04.27 作成

【獣医師監修】ペットの健康診断とは?費用や必要性を解説

獣医師

東 一平

東 一平

「自分の飼っているペットにいつまでも健康で長生きして欲しい」「ペットに病気になって苦しんでほしくない」「今、ペットは健康なんだろうか?」など、飼い主さんなら誰しもが思うことです。物言わぬペットの健康を維持する上で、健康診断は大切です。定期的な健康診断のメリット、検査の内容や費用について、獣医師がお話ししたいと思います。

もくじ

    ペットにも健康診断が必要な理由

    【獣医師監修】ペットの健康診断とは?費用や必要性を解説
    (Andy Gin/shutterstock)

    健康診断は、予防医療のひとつです。予防医療は文字通り、予防、病気にさせないための医療。人と違って自分の体調を言葉にできないペットにとって、健康診断によって早い段階でペットの健康状態を把握することは大切です。

    また病気をすでに抱えている状態でも本能によってそれを隠してしまうのが動物です。元気なように見えて、ある日限界が来て急に元気がなくなってしまうこともあります。

    たとえば心臓病や腎臓病は進行して重症にならないとはっきりとした症状を出してくれません。そういった場合には健康診断などによって早めに発見できることは非常に大事です。

     

    健康診断の受け方、内容 

    健康診断の受け方、内容
    (Tatyana Vyc/shutterstock)

    ペットの健康診断について詳しく解説します。

    ペットが健康診断を受けられる場所

    健康診断は一般的な動物病院で受けることが可能です。病院によっては狂犬病やフィラリア予防の季節に合わせて健康診断を行っていたり、人間ドックのようなセットになっている健康診断を行っている場合もあります。

    健康診断の内容

    健康診断の内容としては、問診から始まり、視診、触診、聴診などによる獣医師の感覚的な検査に加えて一般的には血液検査、レントゲン検査、超音波検査を組み合わせることが多いです。

    いくつかの検査がセットになっている病院もあるかと思いますが、そうでない場合はその子に必要な検査内容をかかりつけの獣医師と相談して選んでいくのがよいでしょう。

    健康診断の場合は病気の診断と違い、ひとつの病気を探す検査ではなく、広く浅く全体を見る検査を行います。

    健康診断を受けるタイミング

    7歳未満など若い頃であれば1年に1回が標準的です。個体差はありますが、7歳以上の高齢域に入ってきたら半年に一度の検査をおすすめします。

    犬や猫にとっての1年は人の4~5年に相当すると考えられているので、それぐらいの間隔が良いと考えられています。

    健康診断は定期的に受けることが大切

    健康診断で最も大切なことは、時間経過における変化を知ることです。たとえば、一度の検査だと、正常値か異常値か、正しい形、大きさか、正しい構造か、などを確認することしかできません。

    しかし、時間を置いてもう一度検査をすると、その子の変化を知ることができます。

    たとえ正常値の範囲内でも「明らかに数値が上昇し続けている」「臓器の大きさが大きくなっている」「構造が変化している」といったことは病気になる兆候であることがあります。

    病気未満である「未病」と呼ぶこともありますが、病気にさせないための健康管理として健康診断が有効です。

    もちろん、異常な状態を一度で発見できて初期の病気を治療できることも、健康診断の大きなメリットになります。

    健康診断にかかる費用

    2021年の日本獣医師学会の調査によると、健康診断(1日ドック)の平均費用は17,922円でした。また、ペットの健康診断を推進する獣医師団体「The HOPE」による2021年の調査では、1万円未満が約7割でした。

    病院や健康診断の内容によっても費用は異なるため、かかりつけの獣医師に確認しましょう。

     

    健康診断を受けるメリット

    健康診断を受けるメリット
    (SeventyFour/shutterstock)
    • 現在のペットの状態把握
    • 問題に対する治療
    • 日常生活での対応の仕方
    • 今後起こりうる症状の説明とそれに対応する方法
    • 日常での健康把握の助けになる行動

    など、健康診断を通じて獣医師が飼い主さんに伝えたいことはたくさんあります。

    人の医療において、予防医療は一般的にコスパが悪いといわれています。ペットの医療でも、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、これらをすべて行えば数万円かかることも珍しくありません。

    「ワンちゃんドッグ」「ネコちゃんドッグ」のようにセットにして少しお得にしてくれている病院もありますが、決して安いものではありません。

    それでも健康診断をおすすめするのは、病気の治療の基本は「早期発見、早期治療」だからです。早く見つけて早く対応していけば、その対応は軽いもので済みます。

    何よりも、愛犬・愛猫が病気で苦しむ時間を短く、軽くすることができるかもしれません。病気の中には、心臓病や腎臓病など病気になってしまうと治すことができない病気が残念ながら存在します。

    そういった病気を発見した場合、発見した状態の心臓や腎臓に頑張ってもらう治療を行っていくしかありません。

    すでに重症化した臓器には、頑張るのにもとても多くの苦労をしてもらわなければいけません。そして、上手くコントロールしても、昔のように元気いっぱいになることは難しいです。

    できる限り早く病気を見つけて対応することで、余力のある状態で治療を開始してできる限りよい状態を維持できれば、動物にとって健康寿命を伸ばすことに繋がります。

    「異常がなかったら無駄じゃないか」と思われるかもしれませんが、「何も異常がない、健康である」と知れることは幸せだと思います。それに、データを集めることでその子一人ひとりに合わせた健康計画を立てることもできるようになっていきます。

    まとめ

    物言わず、不調を隠してしまうペットの健康をいち早く把握することができる健康診断。病気にさせない、また、病気の早期発見早期治療のためにも健康診断は大切です。

    継続して受けることでその子の健康状態の変化がわかり、その子にあったアドバイスを受けることもできます。

    病気になって苦しんでから治療するのではなく、病気になる前から対応する、予防のためにも健康診断をぜひペットに取り入れてあげてください。

    参考:
    日本獣医師学会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査結果(令和3年度)
    The HOPE「ペットの健康管理に関する実態調査結果報告書」健診内容P23、費用P25

    著者・監修者

    東 一平

    獣医師

    東 一平

    プロフィール詳細

    所属 株式会社アイエス 代表取締役
    アイエス動物病院(千葉県市川市) 院長

    日本小動物歯科研究会
    日本獣医皮膚科学会
    比較眼科学会
    日本獣医麻酔外科学会

    略歴 1978年 千葉県に生まれる
    1997年 麻布大学 獣医学部獣医学科入学
    2003年 獣医師国家資格取得
    2003年~2004年 アイエス動物病院に勤務
    2004年~2005年 東京都内の動物病院に勤務
    2005年 千葉県市川市のアイエス動物病院の院長に就任

    資格 獣医師免許

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