目次
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はじめに
1.犬猫の耳の中はどうなっている?犬猫の耳の構造と外耳炎について
2.外耳炎になりやすい季節や品種に要注意!外耳炎の原因について
3.外耳炎を予防・早期発見するために自宅でできること
4.実際に外耳炎になってしまったら…?外耳炎を疑う症状について
5.外耳炎の治療について
最後に
はじめに
あなたは、家のペットの耳を触ったり、覗いてみたりしたことはありますか?
犬猫の耳は、耳毛が沢山生えている、覗いても奥が暗くてよく見えない、そもそも耳を触らせてくれない等の理由で、自宅でお手入れがしにくい部分です。
それにも関わらず、自宅で適切な管理ができないと、外耳炎等の病気を発症してしまったり、その治療が困難になったりする場合があります。
犬猫の耳の病気を予防するための第一歩として、まずは犬猫の耳の構造と、犬猫の耳科疾患として代表的な外耳炎について解説いたします。
1.犬猫の耳の中はどうなっている?犬猫の耳の構造と外耳炎について
犬猫の耳は、以下のような構造になっています。
外耳(赤い部分)
耳介(じかい)、垂直耳道、水平耳道の部分を指します。耳道はL字型で、耳垢が作られる場所です。ここに炎症が起きると外耳炎になります。そして、外耳炎が悪化すると、中耳、内耳まで炎症が起こることがあります。
中耳(黄色い部分)
鼓膜の奥の場所で、耳小骨(じしょうこつ)、鼓室(こしつ)、耳管(じかん)を指し、外耳道から伝わった音を増幅して内耳に伝える役割をしています。鼓膜に穴があいて、その奥に炎症が起きると中耳炎になります。
内耳(青い部分)
中耳のさらに奥で、半規管、蝸牛の部分を指します。内耳は聴覚や回転の認識、平衡感覚の感知する役割をしており、内耳に炎症が起きると内耳炎になります。
中耳や内耳は、脳に近い場所であるため、中耳炎や内耳炎が悪化すると髄膜炎・髄膜脳炎になってしまうことがあります。
犬猫の耳科疾患で多いのは外耳炎であり、当社に保険金請求をいただく病気の中でも、年間の保険金請求数がトップ5に入る病気です。 外耳炎は、外耳道(上記図の耳介・垂直耳道・水平耳道)が何らかの理由で炎症を起こした結果、強い痒みや湿疹、時には痛みが出る病気です。
2.外耳炎になりやすい季節や品種に要注意!外耳炎の原因について
犬猫の外耳炎の原因は、様々なものがあります。
季節
高温多湿な夏は、耳の中が蒸れて外耳炎になりやすいため、特に注意する必要があります。
品種
以下の品種は、その耳の特徴から外耳炎になるリスクが高いため、注意が必要です。
耳の特徴 | 具体的な品種の例 |
耳が垂れている | アメリカコッカースパニエル、ダックスフンド、スコティッシュフォールド |
耳道に沢山毛が生えている | シーズー、トイプードル、ミニチュアシュナウザー |
耳道の通気性が悪い | フレンチブルドッグ、パグ、アメリカンカール |
その他に、柴犬はアレルギー性皮膚炎を発症しやすい犬種であるため、その症状として外耳炎が認められることがあります。
単独で外耳炎を起こすもの
・ミミヒゼンダニの寄生
・基礎疾患(アレルギー性疾患、内分泌疾患等)
・耳道内腫瘍(しゅよう)、耳道内への異物混入
二次的に外耳炎を起こすもの
細菌感染、マラセチア(酵母様真菌)の感染
※柴犬のアレルギー性皮膚炎に関する記事はこちら
【獣医師監修】柴犬はアレルギー性皮膚炎になりやすい!お家でできるケアと予防のポイントとは?
※ミミヒゼンダニに関する記事はこちら
3.外耳炎を予防・早期発見するために自宅でできること
耳を触られることに慣れさせましょう
おやつをあげる際や、遊びの一環としてペットを撫でる際に、片耳ずつ優しく触ってみましょう。最初から強く抑えたり、無理矢理触ったりすると、耳を触らせてくれない子になってしまいます。最初は犬猫のペースで少しずつ耳を触られることに慣れさせていくとよいでしょう。
ペットの耳に触れるようになったら、耳の中を観察してみましょう
外耳炎になると、普段外から見える範囲だけでも、耳の様子に変化が見られることがあります。普段の耳の様子を知っておくことは、外耳炎の予防と早期発見につながる第一歩です。
耳の掃除をしてみましょう
犬猫の耳の中が耳垢で汚れている場合には、耳掃除をしてみましょう。耳掃除の際は、犬猫用の耳洗浄液とコットンを用意します。洗浄液でコットンを湿らせて耳介(じかい)の内側と、耳道の入り口を優しく拭いましょう。
上記の方法の他に、犬猫用の耳掃除用シートで拭う方法もあります。耳道の内側は非常にデリケートですので、強い力で擦ると耳道に炎症が起きてしまいます。目安として、以下の写真のように、耳の内側(肉眼で見える範囲)を優しく拭いてあげるとよいでしょう。また、なるべく犬猫に負担がかかならいよう短時間で行うことをお勧めします。
耳道内を傷つけてしまう可能性があるため、綿棒を犬猫の耳に入れることは、お勧めしません。耳の中に耳毛が沢山生えている場合は、トリミングや動物病院にご相談いただき、必要な際はトリマーや獣医師による処置を受けましょう。
4.実際に外耳炎になってしまったら…?外耳炎を疑う症状について
外耳炎を疑う症状として、以下のような症状が認められます。
・行動の変化:耳や頭をふる、耳を掻く、耳を床にこすりつける等
・耳の様子の変化:耳から悪臭がする、耳垢の量が増える、耳垢の色が変わる、ベタベタした耳垢が出る、耳道の色が赤くなる、湿疹が出る等
5.外耳炎の治療について
飼い主さんが外耳炎を疑う症状に気づいて動物病院に連れていった際は、まず院内で耳鏡(じきょう)という検査装置で耳の中を観察します。耳道の色や耳垢の様子を観察して、耳垢の検査をすることもあります。
症状の進行具合 | 治療内容 |
軽度の外耳炎 | 動物病院で耳垢検査と耳道の洗浄を行い、点耳薬や塗り薬の処方をします。 病原体の存在や点耳の可否、基礎疾患の有無等により、内服薬併用を検討します。 |
慢性的な外耳炎 | 上記の治療に加えて、薬剤感受性試験、アレルギー検査、内分泌検査等の外注検査の実施や、耳道内視鏡(ビデオオトスコープ)を使って耳道の様子を観察することを検討します。 |
外耳よりもさらに耳の奥に炎症がおこる | 外耳よりもさらに耳の奥まで炎症が起きて中耳炎・内耳炎になると、頭部のCT検査や、耳道切開手術等、高額な検査・治療が必要となる可能性があります。 |
外耳炎は再発を繰り返したり、慢性化をすると厄介な病気であるため、自宅で耳のケアをできることが理想です。
※ご参考:外耳炎は、初診時の治療開始から完治までの間に、複数回の通院や経過確認が必要な場合があります。
体質や季節の影響も受けやすく、経過が長引いたり繰り返すことで悪化してしまうと、通院のご負担やご家庭でのケアを困難に感じられる場合もあるかもしれません。1回の通院は、病院での治療やご家庭で使用するお薬、ケア用品等を含めて平均1万円ほど※ですが、複数回の通院を繰り返すことで治療費の負担も大きくなります。※当社調べ(2022年4月~2023年3月の保険請求データより算出)
日々のお手入れで外耳炎の予防や早期発見のコツをつかんでおきましょう。
最後に
犬猫の外耳炎は、いくつかの要因が重なって発症する場合があるため、完全に予防することは難しい病気です。しかし、なるべく耳道内を清潔に保つことで、外耳炎の発症や再発のリスクを減らすことができます。
家で耳を触れるようになれば、外耳炎の予防に役立つだけでなく、外耳炎になってしまった場合にも動物病院での処置や自宅での点耳処置が楽になります。
ぜひ、愛犬・愛猫とのスキンシップの一環として、耳を触る練習をしてみてください。
耳の病気が疑われる場合や、自宅でのケアの方法について不安がある場合には、かかりつけの動物病院に相談することをお勧めします。
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ペット&ファミリー損保所属獣医師