去勢手術って?
日本で飼育されている犬の約50%、猫では約80%が去勢・避妊手術を受けているという報告があります。
そもそも、「去勢手術」とはどのような手術で、なぜ多くの犬・猫は去勢手術を受けているのでしょうか?ここでは、去勢手術のメリット・デメリットも含めて詳しく解説していきます。
去勢手術とは、男の子の精巣を摘出する手術です。犬の男の子はおよそ生後7~8ヵ月、猫の男の子はおよそ生後8~12ヵ月で性成熟するため、その前が去勢手術を受ける目安の時期となります。
去勢手術のメリット
犬にとってのメリット:病気の予防につながります!
精巣は性ホルモンを分泌する組織です。去勢をしないと、ホルモンの影響で将来的に様々な病気になってしまうリスクがあります。去勢手術で予防できる病気で当社請求の多いものを表に示します。
第1位 | 前立腺の病気 |
第2位 | 肛門周りの病気 |
第3位 | 精巣の病気 |
前立腺の病気
- 前立腺肥大
犬で最も多い前立腺疾患で、9歳までに未去勢犬の95%に見られる病気です。血尿や尿路感染症が見られることがあります。
- 前立腺炎
尿道からの細菌感染が主な原因で、前立腺肥大に伴って発症することが多い病気です。中高齢の未去勢犬がなりやすい病気で、血尿や細菌尿が見られます。
肛門周りの病気
- 会陰ヘルニア
お尻周りの筋肉が脆弱になり、筋肉の隙間から直腸・膀胱等の臓器や脂肪が外側に出てしまう病気です。根本的な原因は不明ですが、性ホルモンの関与や前立腺疾患、慢性便秘等が原因と考えられています。5歳以上の未去勢犬に多い病気で、排便困難や便秘等が見られます。
- 肛門周囲腺腫
肛門周囲にある分泌腺(肛門周囲腺)の腫瘍です。肛門周囲や尻尾の付け根に認められ、痒みを感じて腫瘍を舐めることで潰瘍化して、感染を起こすことがあります。高齢の未去勢犬(8歳以上)がなりやすい病気です。
精巣の病気
- 精巣腫瘍
犬の精巣腫瘍はいくつか種類がありますが、腫瘍の種類によっては左右対称性脱毛や乳房の発達、貧血を起こします。高齢の未去勢犬(10歳以上)に多く見られる病気ですが、陰嚢内にある精巣と比べて、鼠径部(そけいぶ:太ももの付け根)や腹腔内(お腹の中)にある精巣(停留精巣)の方が早く腫瘍化する傾向があります。
去勢手術を受けることで、未去勢犬が発症しやすい沢山の病気を予防することができます。
猫にとってのメリット:問題行動の抑制ができる
猫は犬に比べて病気の予防という観点から去勢手術が推奨されるケースは稀ですが、去勢手術を受けることで、大声で鳴くこと、攻撃行動、スプレー行動を抑制することができます。
また、攻撃行動が減った結果、猫同士の喧嘩による感染症(猫エイズ等)のリスクを減らすことができます。
※上記の抑制効果は個体差があり、去勢手術後でも攻撃行動、スプレー行動が抑制されない子もいます。
その他、女の子への性的興奮やストレスを抑制することができます。
若齢での去勢手術がおススメ
犬は若齢のうちに去勢手術を受けることで、高齢の未去勢の子がなりやすい病気を予防することができます。猫は去勢手術を受けることで攻撃行動やスプレー行動を抑制できます。
高齢になると、持病があって去勢手術を受けることが難しくなる場合があるので、去勢手術は若齢で受けることをお勧めします。
ただし、去勢手術のデメリットとしては、去勢手術に伴う全身麻酔のリスク、去勢手術後の体重管理等が挙げられます。詳しくは、かかりつけの動物病院にご相談ください。
ペット&ファミリー損保所属獣医師