避妊手術って?
日本で飼育されている犬の約50%、猫の約80%が去勢・避妊手術を受けているという報告があります。
そもそも「避妊手術」とはどのような手術でしょうか。なぜ、多くの犬・猫は避妊手術を受けているのでしょうか?ここでは避妊手術のメリットと注意したいところも含めて詳しく解説していきます。
避妊手術とは、女の子の子宮と卵巣、または卵巣のみを取ってしまい、妊娠できないようにする手術です。犬の女の子はおよそ生後6~10ヵ月、猫の女の子はおよそ生後6~7ヵ月で性成熟するため、その前が避妊手術を受ける目安の時期となります。
避妊手術のメリット
メリット1: 病気の予防につながります!
卵巣は性ホルモンを分泌する組織です。避妊をしないと、ホルモンの影響で将来的に様々な病気になってしまうリスクがあります。
避妊手術で予防できる病気で当社請求の多いものを表に示します。
第1位 | 子宮蓄膿症 |
第2位 | 乳腺腫瘍 |
第3位 | 乳腺炎 |
代表的な病気について挙げます。
- 子宮蓄膿症
子宮の中で細菌が繁殖して膿がたまる病気です。発情後に多く発生します。 食欲不振、嘔吐、多飲などの症状がみられることが多く、重症化すると亡くなってしまう怖い病気です。平均発症年齢は5~10歳です。未避妊の犬の生涯にわたる発生率は60~80%と言われています。 - 乳腺腫瘍
乳腺が腫瘍化してしまう病気で、良性と悪性の腫瘍があります。腫瘍が小さいうちは痛みなどの症状は認められませんが、大きくなって腫瘍が破裂すると、化膿して悪臭を放ち、お家でのケアが大変です。また、肺への転移は呼吸困難を引き起こし、亡くなってしまいます。
【犬の場合】
乳腺腫瘍の約半数が悪性、さらに悪性のうち約半数が転移すると言われています。下のグラフは避妊していない子と比べた時の、避妊手術時期による乳腺腫瘍発生率です。
避妊手術をした子と比べると、避妊していない子の乳腺腫瘍の発生リスクは平均7倍となります。
【猫の場合】
悪性度が高く、80%以上が悪性です。下のグラフは避妊していない子と比べた時の、避妊手術時期による乳腺腫瘍発生率です。
メリット2:発情によるストレスや不必要な交配・妊娠がなくなります!
【犬の場合】
生後6~10ヶ月ほどで初回発情が見られ、その後は年に1~2回発情します。この時、陰部から出血が見られますが、量については個体差があります。発情期にはそわそわしたり、不安になる、食欲がなくなるといった状態になります。偽妊娠が起こり、腹部が膨らんだり母乳が分泌されたりすることもあります。
【猫の場合】
生後6~7ヶ月ほどで初回発情が見られます。春から夏にかけて発情することが多く、発情回数は決まっていません。犬のような出血も見られません。発情期には大きな声で鳴いたり、尿のマーキングやスプレーをしたり、家から脱出しようとしたりします。猫は交尾後に排卵する動物のため、交尾した女の子が妊娠する確率は約90%と言われています。
初回発情前の若齢での避妊手術がおススメ
早期に避妊手術を行うことによって、子宮、卵巣、乳腺の病気の予防につながり、発情によるストレスや不必要な交配・妊娠がなくなります。
高齢になると、持病があって避妊手術を受けることが難しくなる場合があるので、避妊手術は若齢で受けることをお勧めします。
ただし、避妊手術のデメリットとしては、手術に伴う全身麻酔のリスク、術後の体重管理等が挙げられます。詳しくは、かかりつけの動物病院にご相談ください。
ペット&ファミリー損保所属獣医師